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二章

悪い子 ※R18

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彼の手が私のそこに触れた。恥ずかしくて恥ずかしくて死んでしまいそうなのに、ふわりとミュチュスカの香りがして泣きたくなった。彼に触れられている。それは嬉しくてたまらないのに、どうしてこんなに苦しいのだろうか。は、は、と犬のように呼吸を繰り返した。
ミュチュスカは事務的な手つきで確かめた。その部分を上下に擦られて、熱い息がこぼれた。

「下着は濡れてないみたいだけど」

「あっ、あっ……やッ!?」

下着の隙間から、彼の指先が入り込んでくる。彼の指を如実に感じて、今度こそ私は後ずさりしそうになった。しかし、後ろは窓。逃げようにも逃げられない状態だ。
逃れようとしたのが分かったのだろう。ミュチュスカは私の腰をきつく引き寄せた。その距離の近さにまためまいがする。
いい香りだ。ミュチュスカの匂いだ。
シトラスにまじる、甘い、スパイシーな香り。彼の香水の名称は『聖夜の森林』であり、ジンジャーとスパイスが効いている官能的な香りなのだと調合師が話していたのを思い出す。私は彼の香りが大好きだ。この香りを嗅ぐと、ミュチュスカに包まれているような気になるから。
調合師を呼びつけて同じ香水を作らせ、邸宅の自室にも保管している。寝る時に枕に香りをつけると、とてもいい夢が見れそうだから。

でも、知らなかった。
私が知っていたのは香水の香りだけで、ミュチュスカ本人の香りが混ざるとこんなに男性的な、色っぽい匂いになるのか。
私だけが、知っている。
今は私だけが。
聖女はまだ、知らないはず。
そう思うと優越感が刺激された。
以前のように薬なんて飲んでいないはずなのにもう、私の体は出来上がっていた。ミュチュスカの指が少し触れただけで、甘い快楽が走る。

「ひぁっ……」

声を抑えることが出来ない私に、ミュチュスカがため息をついた。

「きみは堪え性がないね。こんなやらしい体でどうするの?俺以外の男に触れられてもこんなに反応するわけ?ほら、分かる?この音」

ねちゃ、という粘ついた音がする。
彼の指はまだ浅い所を触れているだけなのに、もうこんなに体は火照ってしまっている。きっと私の体は、ミュチュスカに無理にねじ込まれても快楽を得てしまうだろう。そのように出来ているのだから。私はミュチュスカの胸に頭を押し付けた。

「あなただって、知ってるくせに。ミュチュスカは意地悪だわ。私のこと嫌いなくせに……愛してなんていないくせに……」

最後は聖女のものになるくせに。
どうしてこんなふうに触れるのだろうか。
それなのに、そんな些細な触れ合いを嬉しいと感じてしまう私は、愚かだ。拒絶出来ればよかった。聖女のものになるミュチュスカを裏切り者と罵り、性欲を発散するだけの都合のいい女になりさがるつもりはないと平手打ちできるだけの強さがあればよかった。
でも、私にはできない。できるのは、ただミュチュスカにすがりついて零れそうなこの想いを口には出さないようにつとめるだけ。
なんて愚かなのだろう。
悲劇のヒロインぶっている自分に反吐が出る。でも、もしかしたら私は自分に酔っているのかもしれなかった。だって、こんなにも気持ちがいい。

「そんなに愛が大事?メリューエルの言う愛ってなに?示して見せてよ、俺に」

ぐ、と中に指をつきこまれた。
悲鳴のような嬌声が零れる。

「ぁっ、や、ァア!」

前回の夜で、彼はすっかり私の体を知ったようだった。慣れた仕草でなかを好き勝手に暴き、いとも簡単に私に声をあげさせた。
ぴんと足先に力が入った。

「ん、んン──ッ……!」

「あーあ、こんなに垂らして。下着ダメにする気?悪い子だね、メリューエル」

「ぁっ、ひゃ、ァ、ご、ごめんなさ、ごめんなさいっ、ミュチュスカ」

快楽に浮かされたままわけも分からずミュチュスカに謝った。頭にあるのはただひとつ。彼に嫌われたくない、という今更な感情。
そんな私をミュチュスカは冷たく見下ろした。そんな視線にすらぞくぞくと肌が痺れた。ああ、どうしようもない。

心はとっくにミュチュスカに囚われている。
そして今、身体をもまた、彼に縛られてしまった。
もう、逃げられない。
不意に、彼が指を抜き取った。

「……?」

窓に背を預けて顔をミュチュスカの胸に埋めていた私は、彼が急に離れたことに困惑した。見ると、ミュチュスカは濡れた指先を舌で舐めとっていた。あまりにも卑猥な光景に悲鳴が出そうになった。ひぅ、と言葉にならない妙な声を飲み込んだ私にミュチュスカが言った。

「ドレスの裾を持って。まくりあげて。出来るよね、メリューエル」

その瞳はいつものように冷たいのに──なぜか、逸らすことが出来ない。射抜くような力強い瞳だと思った。
私は濡れた瞳のまま、彼の言うことに従った。さっきよりも大胆にドレスをまくる。
そうするとミュチュスカは何も言わずにその場に膝をつく。

「やっ……!?」

「動かないで。暴れたら酷くする」

「な、なに……や、やだ。いや、ミュチュスカ……」

泣き声のような声が出た。
今にも泣きそうな顔の私をミュチュスカはちらりと見ると、視線を戻した。やめる気はないようだった。

「きみがここまで濡らさなかったら俺もこうはしなかった。きみの責任だよ?ほら、しゃんと立って」

「な、なに──ひぁっ!?あ、や、ぁ、あァ!」

彼の顔が下肢に埋まった。
まさか、と思ったらぺろりとその部分を舐められた。女の秘めた部分を。不浄の場所であるそこを、ミュチュスカが舐めている。あの、ミュチュスカが。
決してミュチュスカはこんな汚らわしいことをしないだろうと思っていた私にとってそれは、あまりにも衝撃だった。甲高い声が上がり、咄嗟に彼の肩に掴まった。ミュチュスカの熱い息が秘部にかかる。
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