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婚約者は、私ではなくお母様を愛している ⑷
しおりを挟むまるでドーナツの丸い穴のようにして、マエラローニャ、ユーゴ、そしてミリューアを囲むように人々がこちらを見ている。
人々の波からは現れたのはマエラローニャの妹、ナターシャだった。
マエラローニャの妹、ナターシャは、マエラローニャよりもずっとヴィヴィアに似ている。
そう、それは所詮赤の他人であるミリューアよりもずっとーー。
「お久しぶりです、ユーゴ殿下」
ふわりと、ヴィヴィアそっくりの笑みを浮かべたナターシャに、ユーゴは言葉を失ったようだった。
ユーゴとヴィヴィアな初対面ではない。
むしろ、何度か顔を合わせている、そこらの友人よりよっぽど親しい仲と言えるだろう。
マエラローニャはナターシャを気遣うようにして言った。
「ごめんなさいね、突然お呼びたてしてしまって。体調は大丈夫?」
「はい、お姉様」
にこりと笑うナターシャは、感情を失ったかのようなマエラローニャとは正反対だ。
ナターシャは、今、子を身ごもっている。相手はユーゴだ。
「なっ………ななな、なぜナターシャがいるんだ!!彼女は不治の病で病床から出られぬと…………」
「酷い!だからと言って浮気されたんですか?私というものがありながら、庶民の女なんかに!」
騒ぎ立てるナターシャに、ミリューアが困った顔をする。突然のことに頭がついていってないのだろう。マエラローニャはふたりのやり取りを眺めながら小さく嘆息した。
(というか………わたしの、婚約者だったはずなんだけれどね)
"私というものがありながら"も何も、婚約者はマエラローニャであり、その時点でユーゴと関係を持ったナターシャは不貞を犯したことになる。とはいえ、ユーゴはヴィヴィアに見た目がそっくりなナターシャを深く愛していたし、狂愛していたようだから不問とされていたけれど。
だけどナターシャはユーゴの言う通り、不治の病を患っていて本当ならこんなところまでこれる体ではない。そう、本当のところなら。
だけどーー
(どうしてナターシャがここにいるか、ですって?そんなの決まってる)
そんなの、火を見るより明らかだ。
マエラローニャが企てたからに決まっている。
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