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第二章
食べ物と同列に扱うな
しおりを挟む「ホシュア様は………馬車にいたのですね」
意外だ。彼のことだからウキウキと街中に繰り出していただろうと思った。そして、だからこそ彼が何かしらのトラブルに巻き込まれる、もしくは自分からトラブルを生成していくのではないかとも考えていた。問いかけると、アホシュアはつまらなそうに窓の外を見ながら答えた。
「レストのやつが、死にたくないなら馬車を降りるなと。なんなんだアイツは!少し………からって」
「え?」
「うるさい!そんなことより、ケイトはどこいった!?あれは僕が好きなんだ。僕が追いかけてこないかとずっと待ってるんじゃないのか!?」
「…………」
アホシュアの盲信ぶりは凄まじい。何がどうして、ここまで自分を過信できるのから。盲信、盲目ぶりコンテストなんてものがあったらきっとトップに輝けるレベルだわ。
そんなことを考えながら、私はふと思い出した。そう言えば、レスト様は一度馬車に戻っていた。その時にアホシュアに馬車を出ないよう言ったのだろう。それを素直に聞くと思えないアホシュアが、大人しく馬車にいたことは驚きだけれど。
私は窓の外を見た。地面をぽつぽつと少しづつ濡らしていく雨は、なかなか止みそうにない。
(ケイト様とレスト様が戻るまで、アホシュアとふたりきり………)
早く戻ってきてくれないかしら。
アホシュアの怒涛のように流れてくるとんちんかんな話を耳にしながらそう思った。
***
「それでだなぁ、ケイトが………」
「…………」
「はは、だんまりして妬いてるのか?お前みたいな鉄仮面女は少しはケイトを見習った方がいい。あの体つきを見ろよ。お前のストーンとした体型とは訳が違う」
(うーん………殺意)
どう控えめに申し上げてもヒールの先で頭を叩きたい衝動に駆られてしまう。元より、アホシュアの頭がお花畑なのは理解しているけれど、この男にはデリカシーとか、配慮とか、他人を慮るとか、そういった根本的な機能が欠落しているとしか思えない。
ニヤニヤ笑いを湛えながらこちらを見るアアホシュアだが、私が無視をしていると、大仰にため息をついた。そして、意味のわからない持論を唱え始める。
「男は狩人なんだ。ひとりの女に収まるはずがない。いいか?リリア。世間知らずでねんねなお前にも教えてやる。僕は生クリームのたっぷりと乗った甘いパフェが好きだ。その上に粉砂糖と蜂蜜とバニラアイスクリームをうんと乗せたやつがお気に入りだ。お前も知っているよな?」
(知らないわよ………。というか何それ、すごく甘そう)
想像しただけで胃もたれがする。尚も黙り込んでいると、アホシュアは何を勘違いしたのか、前髪をかきあげながらいう。
「でも毎日パフェは食べられないだろう!?やはり飽きてしまう。そうなったら口直しが必要なんだよ。分かるかい?口直しはきみだ、リリア」
アホシュアの満開咲き誇る頭の様子を目前にして、思わず鳥肌が立つ。口直しってなによ。あまりにも失礼すぎるし端的に行って気持ちが悪いわ。私は窓の外から視線を外して、アホシュアを見た。
「僭越ながら、申し上げますわね」
窓の外を見ていた私がようやくアホシュアを見たからか、彼は満足そうな、それでいて偉そうな顔をしていた。私が何を言うつもりか分かっているのかしら。
「ひとをパフェと同義に考えるのはあまりにも失礼ですわ。それに、その発言は実際にパフェと結婚したから仰ったらどう?」
「は………」
「ひとを食べ物と同列に語るなんて、あまりに悪趣味ですわね。私には理解できません」
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