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第一章
提案
しおりを挟むアホシュア様の顔に、先程までのしおらしい様子はない。完全に狼狽えている。そして、うっかり事実だと認めるような発言をしたことで、場はますます凍った。
お母様の目が唸るように低くなる。
「ホシュア、どういうこと?あれだけ女とは関わるなと言ったでしょう!」
「し、仕方ないじゃないですか!あんなに誘われたら………!!」
「なんてこと!汚らわしい!!!!」
どうやら、アホシュア様のお母様好きよりお母様の息子好きの方が凄いらしい。アホシュア様はまるで浮気がバレた亭主のような反応をされている。もしかしてあなたのお母様、お母様ではなく婚約者だったのかしら………。
私はしらーっとした思いでふたりを見ていたが、そのまま口を開いた。ふたりの親子会議は後でまとめてやってほしい。私は早く帰りたいのよ。
こんな、歓迎されてないお茶会なんて二度とゴメンだもの。
「それに、ケイト様との事ですが」
「なっ、なんの事だ!?」
「…………アホ……じゃなかった、ホシュア様。ケイト様は社交がお好きな方ですよ。関係を持った方のお話など、次の日のお昼には話題に上がっていますわ」
要するに、ケイト様はお口が羽よりも軽いのだ。
ケイト様は名をケイト・ブラウニーと言い、【虹】を司る家の人間だ。彼女も五貴族。だけど彼女は貴族というものに縛られるのをとても嫌がっている。
(ケイト様はとても自由奔放……。身持ちが悪いのよね)
関係を持ったことをひとつのステータスと思っているタイプの人間だ。五貴族として何回か話したことがあるけれど、水と油かと言うほど彼女とは合わなかったのを覚えている。
彼女は私と同じく、婚約中の身だ。しかしそれにも関わらず彼女は浮名を流している。もしかしたら五貴族に対する反発もあるのかもしれない。悪手だとは思うけれど。
私はケイト様の虹色の虹彩と、くるくるの栗毛を思い出しながら、ホシュア様を見た。
「ホシュア様。………お母様も。ひとつ、提案があるのです。こちらを呑んでいただければ、我が家に不義理をしたこと。今まで私に暴虐を振舞ったことは王家に告発致しません。……いかがでしょうか?」
「ぼ、暴虐なんて………なんて言い様なの…………!あれはちょっとした子供の悪ふざけで……!!」
「18歳が子供とは面白いですわね。我が国では男性は16歳から成人とみなされますけれど?それに、お母様。子供のしたことだと仰るなら。その責任を取るのが親の役目なのではないですか?」
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