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三章:愛されない妃
愛はないけれど
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「それ、は」
「僕は、人間に騙され、エルフに売られた。誰も信用していない。全員、死ねばいいと思っている。……でも、お前のそばはほんの少し……ほんの少しだけ、息がしやすい。それだけだよ」
「っ……」
「だから、お前の提案には乗らない。……色々考えてくれて、ありがとう」
彼は、お礼を言った。
それで、その話はおしまいになった。
──とはいえ、アークがティファーニに残るなら。
彼が、シェリンソンの跡取りである以上、婚約者は必ず必要だ。そこは、避けて通れない。
☆
聖歴1246年12月23日。
リュシアン殿下の即位式が執り行われた。
それと同時に、私──フェリス・シェリンソンとの婚約もまた、発表された。
戴冠式を終えた後、私は彼と約束をしていた。
案内された応接室でぼんやりリュシアン殿下のことを考える。
ミレーゼであった時と、今の私。
何が違うだろう。
何を、変えられただろう。
ソファに座って、物思いにふける。
その時、扉が控えめにノックされた。
入ってきたのは、リュシアン殿下……いや、もう陛下、か。
彼は、既に頭に戴いた王冠を外していた。白いファーのついた緋色のマントを肩にかけた彼は、紛れもなく記憶にある彼の通りだった。
「待たせてしまった?」
「考え事をしていました」
正直に、答えた。
もしまた、リュシアン陛下がほかの女性を娶ったなら。私は、どう動くだろうか。
少し考えて、目を閉じる。
きっと、ティファーニから逃れるだろう。
もうあの騒ぎに巻き込まれるのはさんざんだ。
あるいは、リュシアン陛下に渡された短剣で彼を刺し殺すかもしれない。
どちらにせよ、もう受け身で、流されるままではいない。いられない、と思った。
ふたたび目を開けたと同時、重心が隣にぶれる。彼が、横に座ったようだった。距離が近い。
「……何ですか?」
「何を考えているの?」
彼は、以前からは考えられないほどよく話すようになった。素直、というのだろうか。
少なくとも、言葉遊びのようなセリフを口にすることはなくなった。
もっとも、そんな上辺だけの言葉を口にするようものなら、胸元を揺さぶっていい加減にしろと言うつもりだが。
「アークのことを」
「またあの男か……」
リュシアン陛下がうんざりしたような、疲労したような息を吐いた。私はそれを無視して、彼に尋ねる。
「彼の、婚約者について」
「決まったの?」
「まだ。探している最中です」
エルフを心底嫌うアークが、エルフを愛することは出来るのだろうか。
ふと、彼がそっと手を伸ばした。その手が私の頬に触れそうになって、咄嗟にその手を弾き落とした。
「……何です?」
「髪が、解れてる」
私に乱暴に手を叩き落とされたにも関わらず、彼は抗議することはなかった。
私は、頬に触れて、乱れた髪を耳にかける。
「私、あなたのことをあまり信じていません」
「……うん」
「だから、あなたに渡された短剣を未だに手放せない」
私が顔を上げると、彼は妙に落ち着いた、穏やかな瞳で私を見ていた。
その様子に、また胸がムカムカする。
ここ最近、ずっとこうだ。居心地が悪い、というか。私ひとりがひたすらじたばたしているような、空回りしているような、そんな気分になる。
リュシアン陛下は、「じゃあ」と口にした。
くるりと彼の指が宙になかを描く。
瞬間、ふわりと何か──魔法陣のようなものが浮かび上がった。
リュシアン陛下があまりにも乱用するので、すっかり見慣れてしまった。エルフの祝福。
「なにか契約で縛ろうか。ミレ……フェリスは知ってる?血の盟約」
「……デスピアの家と結んでいるという?」
「そう。あれとは、主は僕、従はあいつ、という関係を結んでいる。これは、重複して結ぶことは出来ない」
血の盟約、名は知っていたが実際に存在するものとは思わなかった。
つくづく、思う。
ティファーニは、エルフの王が全て。
常識など存在しない。もっと言うなら、エルフの王こそが、常識でルールなのだ。
「だから僕は、もうひとつ主従の盟約を結べる」
「……は?」
「フェリスが、僕の主になり、僕はきみに従う。これは、決して覆すことのできない、絶対的な力を持つ盟約だ。例えエルフの王であっても、変えることはできない」
彼は、手のひらサイズの小さなナイフを取り出した。例に漏れなく、それも豪奢な飾りが付いている。
彼は、自身の手首を軽く切った。赤い血がゆっくりと流れ、垂れてゆく。
「フェリスも手を出して」
「……私と、主従の盟約を?」
「そう。そしたら、きみは多少は僕のことを信用出来る?」
血の盟約で縛る関係。
縛られるのは、私か、彼か。
どちらか分からなかったけど、私は口端を持ち上げた。決して愉快な気持ちではないのに、笑ってしまう。
「そう……。エルフの王が、従う血の盟約……」
いくらでも悪用できる代物だ。
エルフの祝福さえあれば、世界すら手に入れることが出来るのだから。
それをあっさり差し出した彼は、確かに国をも差し出して私を傍に置いておきたいのだろう。
彼が、私に固執するのは私だけが彼にとって【人形】ではないから。
私だけが、彼にとって未知なのだろう。
唯唯諾諾と従う人間ではない。ただ、それだけ。
私は、リュシアン陛下からナイフを受け取った。
彼がじっと私を見つめる。
契約が結ばれれば、きっともう逃れることは出来ない。
リュシアン陛下から、ティファーニから。
私は今一度、落ち着いて自身の感情を探った。
もう嫌だ、と思った。他人に振り回されるだけの人生は。
愛されない妃でいるのも、お飾りの妃だと揶揄されるのも、いい加減うんざりだった。
愛はとうに尽きて、残ったのは怒りだった。
愛の残滓はとっくに灰塵となっていて、手繰り寄せてもそれがふたたび熱を持つことは無い。
以前のような感情は、どうあっても芽生えることはないだろう。
それでいいだろうか。
それでも、私はリュシアン陛下といたいのだろうか。いれるのだろうか。
目を、開ける。
どうしたことだろう。
隣に座る彼の瞳が、不安か、恐れか。
風が吹いた湖面のごとく、揺れている。
馬鹿みたいだ。私も、彼も。
愛なんて、曖昧で形のないものに振り回されたから、私は疲弊した。
「……ミレーゼ」
「あなたは、私をフェリスにしたかったのではないの」
「……そうだね」
彼は、少し考えて頷いた。
まつ毛を伏せて、落ち込んだように瞳を揺らす彼は、まるでエルフには見えない。
純人間とエルフ、何が違うというのだろう。
私は、ナイフを持つ彼の手首を掴んでソファの座面に押し付けた。驚いたようにまつ毛をはね上げた彼の瞳が、よく見える。
私は、がり、と自身のくちびるを噛みきった。
血の味がする。
そのまま、彼の手首を押し付ける手とは反対の手で、私は彼の胸ぐらを引き寄せた。
いささか乱暴な仕草ではあったが、彼は逆らわずに私にされるがままだった。
そのまま、強引にくちびるを触れさせた。
二度目の人生のファーストキスは、甘さの欠けらも無い。苦い鉄の味がした。
「僕は、人間に騙され、エルフに売られた。誰も信用していない。全員、死ねばいいと思っている。……でも、お前のそばはほんの少し……ほんの少しだけ、息がしやすい。それだけだよ」
「っ……」
「だから、お前の提案には乗らない。……色々考えてくれて、ありがとう」
彼は、お礼を言った。
それで、その話はおしまいになった。
──とはいえ、アークがティファーニに残るなら。
彼が、シェリンソンの跡取りである以上、婚約者は必ず必要だ。そこは、避けて通れない。
☆
聖歴1246年12月23日。
リュシアン殿下の即位式が執り行われた。
それと同時に、私──フェリス・シェリンソンとの婚約もまた、発表された。
戴冠式を終えた後、私は彼と約束をしていた。
案内された応接室でぼんやりリュシアン殿下のことを考える。
ミレーゼであった時と、今の私。
何が違うだろう。
何を、変えられただろう。
ソファに座って、物思いにふける。
その時、扉が控えめにノックされた。
入ってきたのは、リュシアン殿下……いや、もう陛下、か。
彼は、既に頭に戴いた王冠を外していた。白いファーのついた緋色のマントを肩にかけた彼は、紛れもなく記憶にある彼の通りだった。
「待たせてしまった?」
「考え事をしていました」
正直に、答えた。
もしまた、リュシアン陛下がほかの女性を娶ったなら。私は、どう動くだろうか。
少し考えて、目を閉じる。
きっと、ティファーニから逃れるだろう。
もうあの騒ぎに巻き込まれるのはさんざんだ。
あるいは、リュシアン陛下に渡された短剣で彼を刺し殺すかもしれない。
どちらにせよ、もう受け身で、流されるままではいない。いられない、と思った。
ふたたび目を開けたと同時、重心が隣にぶれる。彼が、横に座ったようだった。距離が近い。
「……何ですか?」
「何を考えているの?」
彼は、以前からは考えられないほどよく話すようになった。素直、というのだろうか。
少なくとも、言葉遊びのようなセリフを口にすることはなくなった。
もっとも、そんな上辺だけの言葉を口にするようものなら、胸元を揺さぶっていい加減にしろと言うつもりだが。
「アークのことを」
「またあの男か……」
リュシアン陛下がうんざりしたような、疲労したような息を吐いた。私はそれを無視して、彼に尋ねる。
「彼の、婚約者について」
「決まったの?」
「まだ。探している最中です」
エルフを心底嫌うアークが、エルフを愛することは出来るのだろうか。
ふと、彼がそっと手を伸ばした。その手が私の頬に触れそうになって、咄嗟にその手を弾き落とした。
「……何です?」
「髪が、解れてる」
私に乱暴に手を叩き落とされたにも関わらず、彼は抗議することはなかった。
私は、頬に触れて、乱れた髪を耳にかける。
「私、あなたのことをあまり信じていません」
「……うん」
「だから、あなたに渡された短剣を未だに手放せない」
私が顔を上げると、彼は妙に落ち着いた、穏やかな瞳で私を見ていた。
その様子に、また胸がムカムカする。
ここ最近、ずっとこうだ。居心地が悪い、というか。私ひとりがひたすらじたばたしているような、空回りしているような、そんな気分になる。
リュシアン陛下は、「じゃあ」と口にした。
くるりと彼の指が宙になかを描く。
瞬間、ふわりと何か──魔法陣のようなものが浮かび上がった。
リュシアン陛下があまりにも乱用するので、すっかり見慣れてしまった。エルフの祝福。
「なにか契約で縛ろうか。ミレ……フェリスは知ってる?血の盟約」
「……デスピアの家と結んでいるという?」
「そう。あれとは、主は僕、従はあいつ、という関係を結んでいる。これは、重複して結ぶことは出来ない」
血の盟約、名は知っていたが実際に存在するものとは思わなかった。
つくづく、思う。
ティファーニは、エルフの王が全て。
常識など存在しない。もっと言うなら、エルフの王こそが、常識でルールなのだ。
「だから僕は、もうひとつ主従の盟約を結べる」
「……は?」
「フェリスが、僕の主になり、僕はきみに従う。これは、決して覆すことのできない、絶対的な力を持つ盟約だ。例えエルフの王であっても、変えることはできない」
彼は、手のひらサイズの小さなナイフを取り出した。例に漏れなく、それも豪奢な飾りが付いている。
彼は、自身の手首を軽く切った。赤い血がゆっくりと流れ、垂れてゆく。
「フェリスも手を出して」
「……私と、主従の盟約を?」
「そう。そしたら、きみは多少は僕のことを信用出来る?」
血の盟約で縛る関係。
縛られるのは、私か、彼か。
どちらか分からなかったけど、私は口端を持ち上げた。決して愉快な気持ちではないのに、笑ってしまう。
「そう……。エルフの王が、従う血の盟約……」
いくらでも悪用できる代物だ。
エルフの祝福さえあれば、世界すら手に入れることが出来るのだから。
それをあっさり差し出した彼は、確かに国をも差し出して私を傍に置いておきたいのだろう。
彼が、私に固執するのは私だけが彼にとって【人形】ではないから。
私だけが、彼にとって未知なのだろう。
唯唯諾諾と従う人間ではない。ただ、それだけ。
私は、リュシアン陛下からナイフを受け取った。
彼がじっと私を見つめる。
契約が結ばれれば、きっともう逃れることは出来ない。
リュシアン陛下から、ティファーニから。
私は今一度、落ち着いて自身の感情を探った。
もう嫌だ、と思った。他人に振り回されるだけの人生は。
愛されない妃でいるのも、お飾りの妃だと揶揄されるのも、いい加減うんざりだった。
愛はとうに尽きて、残ったのは怒りだった。
愛の残滓はとっくに灰塵となっていて、手繰り寄せてもそれがふたたび熱を持つことは無い。
以前のような感情は、どうあっても芽生えることはないだろう。
それでいいだろうか。
それでも、私はリュシアン陛下といたいのだろうか。いれるのだろうか。
目を、開ける。
どうしたことだろう。
隣に座る彼の瞳が、不安か、恐れか。
風が吹いた湖面のごとく、揺れている。
馬鹿みたいだ。私も、彼も。
愛なんて、曖昧で形のないものに振り回されたから、私は疲弊した。
「……ミレーゼ」
「あなたは、私をフェリスにしたかったのではないの」
「……そうだね」
彼は、少し考えて頷いた。
まつ毛を伏せて、落ち込んだように瞳を揺らす彼は、まるでエルフには見えない。
純人間とエルフ、何が違うというのだろう。
私は、ナイフを持つ彼の手首を掴んでソファの座面に押し付けた。驚いたようにまつ毛をはね上げた彼の瞳が、よく見える。
私は、がり、と自身のくちびるを噛みきった。
血の味がする。
そのまま、彼の手首を押し付ける手とは反対の手で、私は彼の胸ぐらを引き寄せた。
いささか乱暴な仕草ではあったが、彼は逆らわずに私にされるがままだった。
そのまま、強引にくちびるを触れさせた。
二度目の人生のファーストキスは、甘さの欠けらも無い。苦い鉄の味がした。
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