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公爵令嬢の失態

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ピーピチピチピチ………

とはいえ、そんな簡単に性癖を昇華出来るはずもなく。わたくしはあれからなんだか妙に恋愛っぽい空気を撒き散らすようになったアルに戸惑いを覚えつつも、新境地に立っていた。

「なるほど。つまりフランベル様は日々殿下を視姦するようになってしまったと」

「あけすけに言うと……まあそうね」

「認めた……」

さくさくとマカロンを片手に言うのは聖女──パフェだ。本来は羽という文字と笛という文字を組み合わせたものが本名だと言うが、パフェはこの名前が嫌いらしい。
パフェに名前を告げるとそれはそれは辛酸を舐めた顔で怒涛のように話し続けた。
『もっと平凡でよかったのに!!太郎とか花子とか小太郎とか一太郎とか二太郎とか!私が就活でどれだけ苦労したか分かってるの!?って感じ!さっさと子作りして離婚してしまいには蒸発して!私がどれだけ苦労したか………!異世界に来るならもっと早くに来たかった!』

とアルコールも摂取してないのにおいおいと泣き始めた時にはさすがに焦った。黒髪を背に流したままの聖女パフェは素朴な顔をしているが、ころころ変わる表情は愛着を抱かせる。裏表のない素直で正直なところは話していて疲れないし、楽しい。パフェとの会話は楽しいのよね。気負わず話せるって素敵だわ。
パフェはマカロンを全て口に入れると、ン~~~!と目を細めた。彼女の持っていたマカロンは黄色の、レモンの果汁が練り込まれていた。甘酸っぱいのかしら。そう思っていると、パフェは紅茶をぐっと飲んで言った。

「ああ、美味しい。毎日金欠でトイレットペーパーの芯って食べられるのかなとか考えた生活から思えば考えられない贅沢さだわ……」

「といれっとぺーぱー?」

「ああ。この国では違うんだっけ。魔法って便利だよねぇ……」

パフェは聞きなれない言葉を口にしたがそれより、と話を戻した。パフェが母国でかなり苦労したのは彼女の言葉の端々から感じ取れた。その手先は刺繍を嗜むわたくしと同じか、それ以上だ。なぜそんなに器用なのかと聞けば、上手くなければ生きていけなかったのだという。パフェの生まれ故郷はかなり厳しい環境だったのだろう。

「フラン様と殿下が……って全然いいことじゃないですか!」

「そうかしら……。でもわたくし、貴方とのBL同盟を破ってしまったのよ?」

BLに女は要らないんです、と言っていたパフェを思い出して言えば彼女は手を振って答える。

「あれは二次元の話であってリアルでそんな……というか、現実でそんなことになったら国政とかに影響出るんじゃないですかね!さすがに私だってそれくらいの分別はつきます!フラン様と殿下がらぶらぶハッピーで私も喜ばしい限りですよ」

「本当に?」

「ええ!むしろ擬似百合ご馳走様って感じです!」

「ギジユリ……?」
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