上 下
18 / 22

捕まりました * 2

しおりを挟む





あれから数日。
わたくしは、そのあと目が覚めると自室にいた。
どうやら気絶したわたくしを、アルとヴィヴィが部屋に運んでくれたらしい。
目が覚めたわたくしは改めて考えて、とんでもないことをしてしまったと思った。初夜でもないのに行為をしてしまった上に、3Pだわ。あれは。
ヴィヴィは途中からわたくしを宥める係へと変わったけれど、それにしたって3Pには変わりない。乱行だ。わたくしは濃厚な経験をしてしまった、と呆然としていた。

それから、なにかに吹っ切れたかのようにアルは度々わたくしに触れてきた。濃厚なスキンシップは元より、それを示唆するような言葉。
まるでわたくしが好きみたいなーーそんな言葉や、仕草をする。
だけど、彼に抱かれたのはあの日以来、ない。
ただ、アルはわたくしの髪先に口付けたり、抱き寄せたり、頬に口付けを落としたり、そんな仕草を見せるようになった。
その日は夜会の帰りで、わたくしは馬車から降りて公爵家に戻るおり、アルに言った。アルは、わたくしを公爵家まで送ってくれたのだ。

「じゃあ、次は五日後だな。楽しみにしてる」

そう言って、アルはわたくしの髪を耳にかけた。その手つきがあまりにも優しくて、心が妙な跳ね方をした。

「どうしたの、アル。あなたなんだかおかしいわ」

「おかしいって?」

「こんなこと、今までしたり……しなかったじゃない。それに最近のあなたは………まるで………」

わたくしは思わず目を伏せた。
最近のアルは、旗目から見てもわたくしに優しい。今までのように口喧嘩になることも全く無くなった。それが寂しいように感じながらも、わたくしは彼のその優しさに戸惑っていた。

「お前のこと、好きみたい………って?」

「………」

「さぁ。どうだろうな?気になるなら……初夜に、教えてやるよ。嫌ってほどな」

そうやって、素っ気ない声で王子らしかぬ口調で言うくせに、絡められた指先は優しく、きゅ、と指を挟まれた。
そのまま腰を抱き寄せられて、アルは押さえこんだような、そんな声で言う。

「じゃあ……フラン。………ーーまた」

言いたいことを押し殺したような、そんな、物言いたげな声。
その声にどこか体がくすぐられた。わたくしは、アルを見た。変わらずアルは美しい。まつ毛は長いし、肌は白いし、目元に微かにかかる白金の髪はなんとも言えない色っぽさを感じさせる。
それでも、わたくしは前のように軽口を叩くことは出来なくなっていた。
ただ、もの慣れない娘のように、アルの言葉に頷くだけだ。

「ええ。……うん、また」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

騎士団長の幼なじみ

入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。 あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。 ある日、マールに縁談が来て……。 歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

練習なのに、とろけてしまいました

あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。 「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく ※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※

【完結】婚約破棄を待つ頃

白雨 音
恋愛
深窓の令嬢の如く、大切に育てられたシュゼットも、十九歳。 婚約者であるデュトワ伯爵、ガエルに嫁ぐ日を心待ちにしていた。 だが、ある日、兄嫁の弟ラザールから、ガエルの恐ろしい計画を聞かされる。 彼には想い人がいて、シュゼットとの婚約を破棄しようと画策しているというのだ! ラザールの手配で、全てが片付くまで、身を隠す事にしたのだが、 隠れ家でシュゼットを待っていたのは、ラザールではなく、ガエルだった___  異世界恋愛:短編(全6話) ※魔法要素ありません。 ※一部18禁(★印)《完結しました》  お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

処理中です...