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ブチギレた王子さまに *
しおりを挟むその時、またヴィヴィが落ち着いた声で話す。
ヴィヴィの声は低く、男らしいけれど落ち着いていて静かだ。彼が声を荒らげたところをわたくしは見たことがない。
「あなたの痴態を見て私がひとり遊びに興じないよう、あえて、あなたに触らせてるんです。………殿下をこうしたのは、あなたですよ。フラン。あなたが、殿下を狂わせている」
「やっ、やだぁっ……ちがっ、わた、わっ………ぁ、あああああっ…………!!」
逃げられない快楽が頭をとかしてバカにしていく。ヴィヴィの声は聞こえるのに、それを理解するだけの余裕が無い。わたくしはまた、何度目かになる極みに達した。
「はっ………は、はぁ………う、ごめん、ごめんなさっ………ごめんなさっ………ひっ……うう、ぅあっ……」
ようやく止まった快楽の嵐に、思わず泣きが入った。苦しくて、でも気持ちよくて、恥ずかしくて、悲しくなった。ただただ責められるのは虚しくて、寂しい。体だけが先に行って、心が置いてかれてしまってるかのよう。
元はと言えばわたくしがやらかしたことなのに、思わず泣いてしまったわたくしに、アルは口元をぐい、と拭った。アルの口元はぬらぬらと濡れていた。それがどうしてか、わたくしはもう知っている。
「ひうっ…………」
「謝って許して貰えると思ってる?………って聞きたいけど、いいよ。フランが自由奔放なのは前からだ。きみはこうと決めたら猪突猛進で、周りを顧みないものね」
「まだ……怒ってる?」
「もちろん。何より、ヴィアレトに触れさせてることが、いちばん頭にくる」
「………」
それは、アルがそう言ったからじゃ、そう思ったが、口にしないが吉。わたくしの物言いたげな顔に気がついたのか、アルは鬱屈とした笑みを浮かべた。
「どうしてヴィアレトに触れるよう言ったのか、気になる?」
アルはズボンのベルトに手をかけると、ゆったりとした動作でそれを抜いた。これからするのだと、見せつけるような手つきだ。思わず先程まで責められていた秘部がじんと熱を持つ。
たった僅かな間にものすごい淫女になったかのように感じて、わたくしはまた涙が込み上げた。
「ヴィアレト。お前、どうせこのまま戻ったら、フランをネタに抜くだろ?」
「…………」
「答えないか。まあ、賢明だな。どう答えても、俺はお前のことを殺しかねない」
不穏すぎる。
わたくしは少しアルの様子がおかしいと感じた。彼との口論はいつものことだが、それにしたって今の彼はどう見ても不穏だ。彼らしくないーー。そこで、わたくしはふと、ヴィヴィの言葉を思い出した。
『言ったでしょう。フラン。殿下を怒らせるとまずいって』
いつ言われたかは定かではないが、このことを言っていたのだろうか。わたくしがアルを見ると、アルは睨みつけるような、燻った怒りを押さえ込んでいるかのような目で私を見た。
そして、わたくしに覆い被さると、胸元にきつく吸いつかれた。赤い華が散る。
「あっ………ひゃッぁ………!!」
「誰にも渡さない………お前がどんな馬鹿な勘違いしてても、お前は俺のものだ。フラン、分かってる?今からお前を俺のもので女にする。肉欲なんて知らないお前の清純な体を荒らすのは俺だ。よく覚えとけ………!」
「きゃぁっ、い、痛!ゃっ………アル!」
首筋を舐め取られたかと思いきや、がり、と歯を立てられた。鋭い痛みに腰が浮あがる。ヴィヴィが頬の輪郭にふれて、そのくすぐったさが痛みを少し押えたが、それにしたって痛くて、怖い。縋るようにアルを見れば、アルはもう一度わたくしを見て言った。
「フラン。お前の男は?」
「………………アル、ヴィス」
「そう。ようやく正解したな。えらいぞ」
ちゅ、と額に口付けが落とされる。
さすがのわたくしもここで阿呆なことは言えない。
アルの思考回路がわからなくて戦々恐々となってる今、怒らせるのはまずい。
わたくしの最終目的はこの部屋からの脱出だ。ここでアルを怒らせるのは得策ではない。下手したら半殺し以上の目にあう。リワープするために。
その時、ちゅ、と下半身の蜜部に熱が触れるのが分かった。腰が引けた。その腰をしっかりとヴィヴィが押える。
「大丈夫ですよ。フラン。殿下は急にねじ込むような鬼畜な真似はしません」
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