上 下
7 / 22

性交を成功させないと!

しおりを挟む


アルは笑っていたが、目が笑っていない。それもそうだろう。なぜならこの部屋は"性交をしないと出られない部屋"であり、ヴィヴィが手に取りアルがブチ切れた挙句破り捨てた紙には"性交をしないと出られません"と書いてあったのだから。
性交を成功しないと出られない部屋?ふふっ。そんな言葉で笑ってる場合じゃないわ……本当にそんな場合じゃない………。わたくしは恐ろしいほど優しく笑みを浮かべたアルに名誉挽回のチャンスとばかりに、言った。ついでに空気を変えるために手を打った。ぱんぱん!と乾いた音がする。ヴィヴィは戸惑ってわたくしとアルを見ている。
こうなったら仕方ない。わたくしも女よ。腹を括りましょう。

「落ち着いて。アルヴィス。あなたはこの国の王太子でしょう?」

「だから?」

ひえ……ブチギレてる………。
わたくしは怯んだが、しかしここで口をつぐめば半殺し以上殺戮以下の目にあって強制転移されかねない。わたくしはサムズアップした。

「あなたがわたくしに勃つわけがないわ。だからこうしましょう。あなたとヴィヴィがニャンニャン…………いかがわしいことをする。わたくしは空気と化すわ。わたくしのことは気にしなにょわぁん!!」

びにょーんと頬を思い切り引っ張られた。
痛い。思わず涙目になる。アルは目を細めた。酷薄な笑みを浮かべるその様子は、いつもと全く違う。キレてる。大激怒マジカルサワーである。1000%超えて2000%超えてブチギレてるわ。

「誰が、どこでいつなにを、どうして、何だって?」

5W1H………。
わたくしは目を伏せた。
ひんやりとした空間で、ヴィヴィが躊躇いがちに声をかける。

「まあ……フランも本気ではないでしょうし。混乱してるんじゃないでしょうか」

わたくし割と本気だったわ……。
だけどさすがにこの空間で言うことは出来ない。絶対零度のアルの目が射るようにわたくしを見ている。わたくしは降参を知らせるために両手を上げた。

「ごめんなさい……」

「最初からそういえ」

「でもね、わたくし。それ以外の方法が思いつかないの。だいたいあなたとわたくしは政略……ではないわね。契約………でもない………白い結婚………そう。白い結婚みたいなものでしょう。あなたはわたくしに欲情しないし、わたくしもあなたみたいな美少女に抱かれたら女の矜持が傷つくわ。あなたみたいな美少女に抱かれるなんて、抱かれるなんてわたくしはっ………」

「その口ぬいつけて欲しいのか?」

「閑話休題。つまりね?わたくし、その、あなたとヴィヴィがすればいいと思うのよ」

「勝手に余談にするな。勝手に話を戻すな。そして冗談じゃない。俺は男に興奮しない。お前バカか?」

「馬鹿じゃないわ。見て。真剣よ」

「真剣に馬鹿なのか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

騎士団長の幼なじみ

入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。 あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。 ある日、マールに縁談が来て……。 歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?

蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」 ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。 リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。 「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」 結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。 愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。 これからは自分の幸せのために生きると決意した。 そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。 「迎えに来たよ、リディス」 交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。 裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。 ※完結まで書いた短編集消化のための投稿。 小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

練習なのに、とろけてしまいました

あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。 「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく ※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※

処理中です...