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出られない部屋を作ってしまった公爵令嬢 2

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(顔が美少女すぎるかしら。たまにイラッとするのよね)

まあ、幼馴染なんてこんなものだ。
わたくしは現実に夢を見ることは出来なかった。
この国ロア皇国は100年に1度、異国より聖女を迎える。そして、迎えた聖女は風変わりな娘で、アルを見るとそわそわしだした。
そして、ちらりとアルの隣に控えるヴィアレトーーヴィヴィを見ては頬を染める。これはもしやアルかヴィヴィのどちらに心を奪われたのではないかしら!?わたくしはドキドキした。こんな展開、恋愛小説でしか見なかったからだ。
わたくしにアルへの恋心はない。どちらかと言うと、男のくせにわたくしよりも綺麗な顔立ちをしていることに腹が立つ。度々わたくしに美貌を妬まれたアルも最初こそなんてことなさそうにしていたが徐々にひねくれ、おそらくそれで口が悪くなった。わたくしのせいだと思う。彼の口が悪くなった一因はわたくしにあると思う。

『どうしてアルはそんなに美しい顔をしているの。本当に納得がいかないわ。わたくしの納得がいくように説明してくださる?』

と八つ当たり気味に絡むわたくしにアルはにっこり笑って

『女の妬みは見苦しいぞ。フランも俺くらい美しければよかったな?』

という始末である。腹が立つ…………!!
いっそその頬を引っかいてやりたくなったが、淑女としてそんなことは出来ない。せいぜい夜会のダンスのおりに足を踏むくらいが関の山だ。
そしてある日、ついにわたくしは聖女様に接触を図ることが出来た。聞くと、なんと聖女様はアルやヴィヴィに恋心を持っていたわけではないそうだ。顔を青ざめさせて叫んだ彼女の言葉は

『それは解釈違いです!!』

だった。
なぁに?解釈違いって。
わたくしは興味が湧いて、聖女の話を聞いた。何でも聖女の国では美男が共に話してるとそれを慈しむ文化があるという。
鼻息荒く話す聖女は少し怖かったが、なるほど。聖女は種類は違えど兄と似たようなオタクだった。
わたくしのお兄様は、オタクである。それも、紙面の女性に本気で恋をしているタイプのオタクだ。お兄様は外の顔と家での顔を使い分けている。社交界にひとたび出れば「きゃあ!ベルナン様ぁ!」なんてキャッキャ言われてるくせに、家に帰った瞬間に撫で付けた前髪を下ろし目元が隠れる。そして、読み物だらけの蔵書室に入り浸り、仕事の時間以外は常にそこにいる。
幼い頃、妃教育に縛られたわたくしはよく抜け出しては、お兄様の元に遊びに行ったものだ。
楽しかったわ。だって、お兄様の部屋には珍しい本ばかりあるのだもの。その中には女性同士の恋愛ものもあった。
それの男バージョンだと思えば自然と納得できた。わたくしは割と直ぐに聖女に順応した。
聖女はひととおり語り終えると、「ナマモノで妄想して、しかもそれを婚約者に話すなんて私は何を………リアルで影響及ぼすとか害悪すぎる」と落ち込み始めた。あまりにも深い嘆きだったので、大丈夫。わたくしとアルに恋情はないわ!と慰めた。そして、それからわたくしと聖女の交流はそれまで以上となりーー

気がつけばわたくしはすっかり聖女に染められ、似た思考を持つようになっていた。
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