上 下
1 / 22

出られない部屋を作ってしまった公爵令嬢

しおりを挟む
出来ないからやらないのと、出来るけどやらないのでは、雲泥の差があると思う。

「殿下、動かないでください。何があるか分かりませんので」

冷静な声が聞こえる。
私は呆然としていた。阿呆だ。

「くそ………。反政派の人間の仕業か?喪亡し血は潰えたかと思ったが、まだ生き残りがいたか!」

「まるで寝室のようですね……寝台にチェスト、それ以外には何もありませんが、寝るための部屋のようだ。周りは真っ白な壁、殺風景で………違和感があります」

「油断するな。ヴィアレト。………この部屋、どうあっても俺たちを閉じ込める気のようだぜ。魔力も通じない、物理攻撃も弾く、ここは永遠とわの牢獄だ。逃れることの出来ないこの場に閉じ込められたら、早々に死ぬだろうな。もって三日だ」

「………」

厳しい声と、張り詰める雰囲気。
そんな中で、わたくしは顔を抑えていた。

つい出来心だったの。
そう言えたらどんなにいいか。だけど言えない。いったらわたくしの全てが終わる。だって、どう言えばいいの。

『まあまあ落ち着いてくださいませ。実はこの空間、わたくしが作った異空間なんですのよ~いや~出来心だったの!ごめんなさいね☆』

だなんて言った日には、にっこり笑われて「お前、ふざけるなよ?」と言われるのが目に見えているわ!しかも、この空間、わたくしが付与した魔術がしっかりと生きているのなら間違いなくく………

「……?フラン。お前珍しく大人しいな。いつもならすぐに取り乱して騒ぐくせに。こんな時にそのうるささと能天気さと騒がしい性格はどこいった?」

失礼すぎる。
失礼すぎるこの男は、わたくしの婚約者、アルヴィス・ロア。ロア皇国の第一王子で、かつ王太子である。
そしてわたくしの名前はフランベル・ヨンディスア。ヨンディスア公爵家の長女だ。
わたくしはこの男ーーアルヴィスと婚約している。しかしそれは惚れた腫れたなんて言う熱い関係ではない。アルとは昔なじみであり腐れ縁である。そもそもこの婚約自体、わたくしのお母様と王妃殿下の親交が深かったために結ばれたのだ。婚約が結ばれた時、わたくしは赤子。生まれてまもない赤子の時から共にいるせいか、 アルはわたくしにとって異性と言うより、

(顔が美少女すぎるかしら。たまにイラッとするのよね)

まあ、幼馴染なんてこんなものだ。
わたくしは現実に夢を見ることは出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

騎士団長の幼なじみ

入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。 あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。 ある日、マールに縁談が来て……。 歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】婚約破棄を待つ頃

白雨 音
恋愛
深窓の令嬢の如く、大切に育てられたシュゼットも、十九歳。 婚約者であるデュトワ伯爵、ガエルに嫁ぐ日を心待ちにしていた。 だが、ある日、兄嫁の弟ラザールから、ガエルの恐ろしい計画を聞かされる。 彼には想い人がいて、シュゼットとの婚約を破棄しようと画策しているというのだ! ラザールの手配で、全てが片付くまで、身を隠す事にしたのだが、 隠れ家でシュゼットを待っていたのは、ラザールではなく、ガエルだった___  異世界恋愛:短編(全6話) ※魔法要素ありません。 ※一部18禁(★印)《完結しました》  お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

(R18)灰かぶり姫の公爵夫人の華麗なる変身

青空一夏
恋愛
Hotランキング16位までいった作品です。 レイラは灰色の髪と目の痩せぎすな背ばかり高い少女だった。 13歳になった日に、レイモンド公爵から突然、プロポーズされた。 その理由は奇妙なものだった。 幼い頃に飼っていたシャム猫に似ているから‥‥ レイラは社交界でもばかにされ、不釣り合いだと噂された。 せめて、旦那様に人間としてみてほしい! レイラは隣国にある寄宿舎付きの貴族学校に留学し、洗練された淑女を目指すのだった。 ☆マーク性描写あり、苦手な方はとばしてくださいませ。

【完結】愛する夫の務めとは

Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。 政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。 しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。 その後…… 城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。 ※完結予約済み ※全6話+おまけ2話 ※ご都合主義の創作ファンタジー ※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます ※ヒーローは変態です ※セカンドヒーロー、途中まで空気です

処理中です...