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出られない部屋を作ってしまった公爵令嬢

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出来ないからやらないのと、出来るけどやらないのでは、雲泥の差があると思う。

「殿下、動かないでください。何があるか分かりませんので」

冷静な声が聞こえる。
私は呆然としていた。阿呆だ。

「くそ………。反政派の人間の仕業か?喪亡し血は潰えたかと思ったが、まだ生き残りがいたか!」

「まるで寝室のようですね……寝台にチェスト、それ以外には何もありませんが、寝るための部屋のようだ。周りは真っ白な壁、殺風景で………違和感があります」

「油断するな。ヴィアレト。………この部屋、どうあっても俺たちを閉じ込める気のようだぜ。魔力も通じない、物理攻撃も弾く、ここは永遠とわの牢獄だ。逃れることの出来ないこの場に閉じ込められたら、早々に死ぬだろうな。もって三日だ」

「………」

厳しい声と、張り詰める雰囲気。
そんな中で、わたくしは顔を抑えていた。

つい出来心だったの。
そう言えたらどんなにいいか。だけど言えない。いったらわたくしの全てが終わる。だって、どう言えばいいの。

『まあまあ落ち着いてくださいませ。実はこの空間、わたくしが作った異空間なんですのよ~いや~出来心だったの!ごめんなさいね☆』

だなんて言った日には、にっこり笑われて「お前、ふざけるなよ?」と言われるのが目に見えているわ!しかも、この空間、わたくしが付与した魔術がしっかりと生きているのなら間違いなくく………

「……?フラン。お前珍しく大人しいな。いつもならすぐに取り乱して騒ぐくせに。こんな時にそのうるささと能天気さと騒がしい性格はどこいった?」

失礼すぎる。
失礼すぎるこの男は、わたくしの婚約者、アルヴィス・ロア。ロア皇国の第一王子で、かつ王太子である。
そしてわたくしの名前はフランベル・ヨンディスア。ヨンディスア公爵家の長女だ。
わたくしはこの男ーーアルヴィスと婚約している。しかしそれは惚れた腫れたなんて言う熱い関係ではない。アルとは昔なじみであり腐れ縁である。そもそもこの婚約自体、わたくしのお母様と王妃殿下の親交が深かったために結ばれたのだ。婚約が結ばれた時、わたくしは赤子。生まれてまもない赤子の時から共にいるせいか、 アルはわたくしにとって異性と言うより、

(顔が美少女すぎるかしら。たまにイラッとするのよね)

まあ、幼馴染なんてこんなものだ。
わたくしは現実に夢を見ることは出来なかった。
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