111 / 117
二章
「あなたが悪いのよ」
しおりを挟む「では次に『魔法師』についてお話いたしますわね」
アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。
「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」
その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。
「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」
例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。
「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
他にも条件がありますわ」
「条件?」
アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。
「まず、『下級魔法師』について。
基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」
「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」
「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
しかし中等魔法からはそうはいきません。
10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」
そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……
「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」
「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」
改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……
「そして『上級魔法師』。
お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」
高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。
「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」
ふむ、そういうものなのか。
「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」
いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
ふわぁー……
話終わったのー?」
「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」
「アリスリーチェ様!
次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
アナタもしかして色々とダメなのでは?」
そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。
「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」
その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。
「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」
例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。
「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
他にも条件がありますわ」
「条件?」
アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。
「まず、『下級魔法師』について。
基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」
「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」
「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
しかし中等魔法からはそうはいきません。
10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」
そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……
「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」
「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」
改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……
「そして『上級魔法師』。
お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」
高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。
「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」
ふむ、そういうものなのか。
「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」
いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
ふわぁー……
話終わったのー?」
「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」
「アリスリーチェ様!
次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
アナタもしかして色々とダメなのでは?」
そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
306
お気に入りに追加
916
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる