〈完結〉魔女のなりそこない。

ごろごろみかん。

文字の大きさ
上 下
19 / 117
一章

昼も夜もそんなに変わらない ※R18

しおりを挟む

今、私の目はぐるぐると混乱に渦巻いていることだろう。何をすればいいのか、どうすればロディアス陛下を止められるのか。
そもそもこれは一体、なぜこうなってしまったのか。もう何もかもが分からない。
私が捌かれる魚のごとくベッドの上で硬直していると、あっさりと丈の長いネグリジェがまくりあげられた。
それにようやくハッと我に返る。

「陛……!」

「ロディアス、と。下僕を敬称で呼ばれるなど、あってはならないことですよ」

「ま、ちょっ……あ、あの!」

「何でしょう?なにか、お気に召さないことが?」

胸の上までたくしあげられて、膨らみがあらわになる。
彼は先程弄んだ秘所に手を伸ばし、下着の上から指先でそこをなぞった。

「ひゃぅっ……」

「濡れていらっしゃる。期待されていますか?私の手に?それとも、口でのご奉仕をご希望ですか?お望みを仰ってください」

「──っ」

なんだか、とんでもない辱めを受けている気がする。
ついに私は、やるせなさのあまり口元に手を押し当てて、嗚咽を零してしまった。
もう、何が何だか分からない。羞恥でいっぱいで、混乱して、頭が追いつかない。
涙ぐむ私を見て、ロディアス陛下が『あ』という顔をした。
虚をつかれたような、間抜けな顔だ。
でも、そんな表情に、私は彼の素顔を見た気がした。

ぽろぽろと零れる涙を見て、困ったように彼が微笑んだ。

「もう、何がそんなに嫌?いつもとしてることは変わらないでしょ」

「い、いや、です……。わ、私はいつもの……ロディアス陛下……」

「あ、陛下って呼んだね。行為中は肩書きでは呼ばないって言わなかった?ペナルティだよ。全く」

「うぅ……」

昼間のロディアス陛下も辛辣で、容赦がないが今の陛下も同じくらい意地悪だ。
でも、それにときめきを覚えてしまっている私は、本当に本当に馬鹿だと思う。愚かすぎて、そんな自分に涙が出てくる。
私がなかなか泣き止まないからか、ロディアス陛下がため息をついた。
行為中に泣き出すなんて、彼の不興を買って当然だ。慌てて、泣き止まなければと目元を強引に拭うと、彼にとめられた。

「ああほら、擦らないの」

「わ、わたし……」

「じゃあエレメンデールはどういうのがいいの?奉仕されるのが嫌なら、メイドになってみる?」

「ど、どうしてそうなるんですか……。そういうのじゃなくて、いつもみたいなのがいいです」

おずおずと答えると、ロディアス陛下はぱちぱちと瞬いて、それからにっこりと笑った。
いつもの彼らしい、柔らかくて優しい微笑みなのに、どこか含みがあるように感じて、少し怖い。

「それはだめ。僕がやりたいから」

「っ……」

「じゃあ、やっぱりさっきのでいこう。王女殿下?あまり泣かれては、明日に響きますよ」

「ろ、ロディアス陛下は意地悪、んぅっ!」

抗議しようと口を開いたが、それは彼のくちびるに塞がれてしまった。喋りかけていた途中だったので、薄く開いていたくちびるから、彼の舌が入り込んでくる。

「んんぅ……っ、ん、んんん!」

激しい口付けだった。
何度も角度を変えて、吐息すら奪ってしまうかのような。舌を絡めて、吸われて、甘噛みされる。
ようやく口付けが解かれた時には、私はもう息も絶え絶えだった。
銀の糸が互いを結び、ぷつりと消える。
彼は、今の深い口付けで濡れたくちびるをぺろりと舐め取ると、私の下肢に手を伸ばした。
下着の中に、指先が入り込んでくる。
布越しではない如実な感触に、ぴくりと体が揺れた。
激しい口付けで、また視界が潤んでいる。
滲む視界の中で、ロディアス陛下と視線が交わった。

「王女殿下は、私のような人間をも敬ってくださる。ですがそれは、行き過ぎた慈愛というものです。私はしがない奴隷。奴隷商人から買われた身です。あなたが謙る必要はありません」

「…………」

何を言っても、きっと封じられてしまう。
だから私は、ぐっと彼を睨むだけに留めた。
ロディアス陛下に、この国の王である彼に、跪かれて、奉仕される。
それはあまりにも恐れ多いことで、不敬なのに、なぜ彼はこんなに嬉々としているのだろう。
もう、彼がわからなかった。
押し黙って、ただ身を任せるだけの私を見て、ロディアス陛下が口角を持ち上げた。

「……既に、期待していらっしゃる?」

「──っ……!!」

彼の指先が、秘められた部分に触れた。
おそらく、そこはぬかるんでいるのだろう。
先程、熱を与えられ、甘く極めさせられたのだ。
ぬかるんでいて、当然だった。
それなのに、あえてそれを指摘するような真似をされて、頬から耳まで熱を持つ。
かっと羞恥に身を焦がされて、なにか言おうと口を開くが、その前に彼の指先がその部分に沈んだ。

「ひ、ァっ……!」

「熱いですね、姫君?もう、限界なのではないですか?ほら、もどかしく思っていらっしゃる。腰が揺れていますよ?」

ロディアス陛下は私を抱き寄せるようにして、ベッドに横になりながら、その手を動かした。
彼の胸に頬を押し付けながら、私は短い喘ぎ声を零す。
彼の言うとおり、じれったい快楽にもう追い詰められていた。

「ぃ、やっ……」

「では、ご命令ください。イかせろ、と」

「い、いか……?」

いかせろ、とはどういう意味なのか。
どこかにいくのか。
それとも、それもまた別の暗喩なのだろうか。
それを口にしたら、何が起きるのだろう?
混乱して顔を上げると、彼はとても優しい顔をしていた。その優しい微笑みに、胸が痛くなる。
まるで愛されているように感じたから。
咄嗟に俯くと、彼がぬるぬると私のそこに指を抜き差ししながら、また囁いた。

掠れた、女の欲を駆り立てるような、艶のある声だった。

「ほら、言って?」
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...