〈完結〉魔女のなりそこない。

ごろごろみかん。

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一章

昼も夜もそんなに変わらない ※R18

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今、私の目はぐるぐると混乱に渦巻いていることだろう。何をすればいいのか、どうすればロディアス陛下を止められるのか。
そもそもこれは一体、なぜこうなってしまったのか。もう何もかもが分からない。
私が捌かれる魚のごとくベッドの上で硬直していると、あっさりと丈の長いネグリジェがまくりあげられた。
それにようやくハッと我に返る。

「陛……!」

「ロディアス、と。下僕を敬称で呼ばれるなど、あってはならないことですよ」

「ま、ちょっ……あ、あの!」

「何でしょう?なにか、お気に召さないことが?」

胸の上までたくしあげられて、膨らみがあらわになる。
彼は先程弄んだ秘所に手を伸ばし、下着の上から指先でそこをなぞった。

「ひゃぅっ……」

「濡れていらっしゃる。期待されていますか?私の手に?それとも、口でのご奉仕をご希望ですか?お望みを仰ってください」

「──っ」

なんだか、とんでもない辱めを受けている気がする。
ついに私は、やるせなさのあまり口元に手を押し当てて、嗚咽を零してしまった。
もう、何が何だか分からない。羞恥でいっぱいで、混乱して、頭が追いつかない。
涙ぐむ私を見て、ロディアス陛下が『あ』という顔をした。
虚をつかれたような、間抜けな顔だ。
でも、そんな表情に、私は彼の素顔を見た気がした。

ぽろぽろと零れる涙を見て、困ったように彼が微笑んだ。

「もう、何がそんなに嫌?いつもとしてることは変わらないでしょ」

「い、いや、です……。わ、私はいつもの……ロディアス陛下……」

「あ、陛下って呼んだね。行為中は肩書きでは呼ばないって言わなかった?ペナルティだよ。全く」

「うぅ……」

昼間のロディアス陛下も辛辣で、容赦がないが今の陛下も同じくらい意地悪だ。
でも、それにときめきを覚えてしまっている私は、本当に本当に馬鹿だと思う。愚かすぎて、そんな自分に涙が出てくる。
私がなかなか泣き止まないからか、ロディアス陛下がため息をついた。
行為中に泣き出すなんて、彼の不興を買って当然だ。慌てて、泣き止まなければと目元を強引に拭うと、彼にとめられた。

「ああほら、擦らないの」

「わ、わたし……」

「じゃあエレメンデールはどういうのがいいの?奉仕されるのが嫌なら、メイドになってみる?」

「ど、どうしてそうなるんですか……。そういうのじゃなくて、いつもみたいなのがいいです」

おずおずと答えると、ロディアス陛下はぱちぱちと瞬いて、それからにっこりと笑った。
いつもの彼らしい、柔らかくて優しい微笑みなのに、どこか含みがあるように感じて、少し怖い。

「それはだめ。僕がやりたいから」

「っ……」

「じゃあ、やっぱりさっきのでいこう。王女殿下?あまり泣かれては、明日に響きますよ」

「ろ、ロディアス陛下は意地悪、んぅっ!」

抗議しようと口を開いたが、それは彼のくちびるに塞がれてしまった。喋りかけていた途中だったので、薄く開いていたくちびるから、彼の舌が入り込んでくる。

「んんぅ……っ、ん、んんん!」

激しい口付けだった。
何度も角度を変えて、吐息すら奪ってしまうかのような。舌を絡めて、吸われて、甘噛みされる。
ようやく口付けが解かれた時には、私はもう息も絶え絶えだった。
銀の糸が互いを結び、ぷつりと消える。
彼は、今の深い口付けで濡れたくちびるをぺろりと舐め取ると、私の下肢に手を伸ばした。
下着の中に、指先が入り込んでくる。
布越しではない如実な感触に、ぴくりと体が揺れた。
激しい口付けで、また視界が潤んでいる。
滲む視界の中で、ロディアス陛下と視線が交わった。

「王女殿下は、私のような人間をも敬ってくださる。ですがそれは、行き過ぎた慈愛というものです。私はしがない奴隷。奴隷商人から買われた身です。あなたが謙る必要はありません」

「…………」

何を言っても、きっと封じられてしまう。
だから私は、ぐっと彼を睨むだけに留めた。
ロディアス陛下に、この国の王である彼に、跪かれて、奉仕される。
それはあまりにも恐れ多いことで、不敬なのに、なぜ彼はこんなに嬉々としているのだろう。
もう、彼がわからなかった。
押し黙って、ただ身を任せるだけの私を見て、ロディアス陛下が口角を持ち上げた。

「……既に、期待していらっしゃる?」

「──っ……!!」

彼の指先が、秘められた部分に触れた。
おそらく、そこはぬかるんでいるのだろう。
先程、熱を与えられ、甘く極めさせられたのだ。
ぬかるんでいて、当然だった。
それなのに、あえてそれを指摘するような真似をされて、頬から耳まで熱を持つ。
かっと羞恥に身を焦がされて、なにか言おうと口を開くが、その前に彼の指先がその部分に沈んだ。

「ひ、ァっ……!」

「熱いですね、姫君?もう、限界なのではないですか?ほら、もどかしく思っていらっしゃる。腰が揺れていますよ?」

ロディアス陛下は私を抱き寄せるようにして、ベッドに横になりながら、その手を動かした。
彼の胸に頬を押し付けながら、私は短い喘ぎ声を零す。
彼の言うとおり、じれったい快楽にもう追い詰められていた。

「ぃ、やっ……」

「では、ご命令ください。イかせろ、と」

「い、いか……?」

いかせろ、とはどういう意味なのか。
どこかにいくのか。
それとも、それもまた別の暗喩なのだろうか。
それを口にしたら、何が起きるのだろう?
混乱して顔を上げると、彼はとても優しい顔をしていた。その優しい微笑みに、胸が痛くなる。
まるで愛されているように感じたから。
咄嗟に俯くと、彼がぬるぬると私のそこに指を抜き差ししながら、また囁いた。

掠れた、女の欲を駆り立てるような、艶のある声だった。

「ほら、言って?」
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