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リリネリア・ブライシフィック

音が戻ってきたよ

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「その前にあんた死んじゃうかもしれないけど、いいの?」

「……………………ベルノルゲンは作れません。そんなものを作るために、私は薬師になったわけではないので」

「あーあー。まぁたそんな高尚なこと言っちゃってぇ。どーせあれだろ。人のためにーとか、そーんな大層な理由掲げちゃってるんだろ。笑っちまうわ」

私が薬師になったのはそんな綺麗な理由からじゃないんだけど………。そう思いながら、私はそっと窓の外に目を向けた。今日は朝から寒く、つい先程今年の初雪が降り出していた。この寒い外に早くこいつらを追いやりたい。そして二度とかかわり合いにもなりたくなかった。

「あの。営業妨害なのでもう出ていってくれませんか?迷惑です」

「ああ?お嬢ちゃん、自分の立場わかってない?」

「そのお綺麗な顔ぐちゃぐちゃにしちゃってもいいんだぜ?」

「ああ、そりゃいいや!そのすまし顔を崩すのも楽しそうだ!」

男たちが好き勝手にわめくのが聞こえて、嫌悪によるため息を禁じえなかった。生理的な嫌悪。心臓が揺さぶられるほどの気持ち悪さ。顔面めがけて吐いたら流石のこいつらも慌てるだろうか。そんなことを考えながらピストルの取ってに触れる。
本当に撃つ気はない。私は犯罪者になる気は無いのだから。だけど、それと同じくらいどうでもいい気もした。どうせ、こいつらに生きてて価値などない。生きてて喜ぶ人はおろか、絶望する人の方が多いんじゃないか?それなら、この殺害は偽善?報復?誰かのため?

そんな詮無いことを考えていると、余計に喚き立てた男が不意に私の方に手を伸ばしてきたのが見えた。

周りがスローモーションに見える。揺れる視界。消えた音。弾む鼓動。

ーーーダメだ、

何が、ダメなのかよく分からないけれど。その手が私の手首を掴もうとするのが見えて、何もかもがよくわからなくなってきた。分かるのは、頭がクラクラするということ。寒い。血の気が引いているから?貧血?
男の日に焼けた手が、野太い指が、節くれだった関節がーーー。あの日と結びつく。

「っ………!」

ひゅっ、と息を飲んだ瞬間。
男が視界から消えた。いや、男が吹き飛ばされた。同時に、世界に音が戻ってきた。

ガタタタタタァンッ!

凄まじい音がして、その男はどうやら店の扉にぶつかったらしかった。見れば、男はその後ろにたっていた男を巻き込むようにして扉の外に打ち付けられている。どうやら勢いがつきすぎて扉がぶち破られたらしい。

ーーーあ、寒そう。

ちらちら降り始めた雪の上に落ちた巨漢が重なり合っているのを見て、私はふとそんなどうでもいいことを思った。
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