14 / 25
胡蝶蘭の花束 2
しおりを挟む
ーーーヴィヴィアナ様はあまり、男性陣によく思われていないらしい。
それは以前お兄様がこぼしていたことだった。彼女は自分の意見ははっきりという人だ。
そして、相手がそれに納得するまで根気強くその話を続ける。
それがいいか悪いかは、場と状況によるところだと思う。だけどレイル様は彼女のそんなところに惹かれたのかもしれない。
お兄様の話しを思い出す。
ーーー以前ヴィヴィアナ様は夜会の途中、大臣補佐の方に政務の話を持ち出したらしい。そして、自分の考えを告げられたとのこと。
お兄様曰くその内容は突拍子もないものだったとか。
何でも莫大な資金が必要となるらしく、発想は斬新であるものの前例がなく、それに着手するにはかなりの話し合いが必要だと思われる内容。
すぐには返答のできない内容に大臣補佐が言葉を濁すとヴィヴィアナ様は酷く立腹されたとお兄様は仰っていて、その日の夜会はとても大変だったらしい。
その大変さは推して知るべし。
なぜなら帰宅したお兄様が珍しくやけ酒のような飲み方をしていたのだから。お兄様はあまりお酒が得意ではないのに。
とても個性的な女性だと思う。
彼女は恐らく、今も尚牢の中にいてもきっと諦めていないだろう。その強さが羨ましい。私には無いものだ。
ーーー私が取り成して彼女を牢からだすことも考えた。
だけど私がそれをすればヴィヴィアナ様は酷く怒るだろう。それはそうだ。私だって何のつもりだと思ってしまう。
それに万が一、レイル様とヴィヴィアナ様の噂が本物で、それが理由で私と離縁したなどと周りに知れたら。話はもっと難しくなる。
だから、それも出来ない。
結果残ったのが穏便に離縁することだった。それが一番いいように思えたのだ。
「………あら、リーフェリア妃殿下。王太子殿下からお花が届いておりますわ!」
不意に侍女のフィリアが私にそう言った。
彼女は見事な金髪を緩く編み込んでいる歳若い女性だ。年齢も私とそう変わらない。彼女のその金髪が、酷く私には眩しく見えた。
フィリアの弾んだ声と共に、彼女が手に花束を持って戻ってくる。
その手には白とピンクで彩られたブーケがあった。
「……ありがとう」
私は、フィリアからそれを受け取る。花の甘い芳香がぶわりと広がった。
「白とピンクの胡蝶蘭ですわ。殿下も意外とロマンチストなのですね、胡蝶蘭を贈るだなんて」
「ふふ。……そうね。嬉しいわ」
「妃殿下は王太子様にとても愛されていますわね。花言葉を理解して贈ってくださる男性なんて、滅多におりませんもの!」
胡蝶蘭の花言葉は
ピンクの花が「あなたを愛しています」ーーー。
そして、白の花は「純粋」。
私は、何も言うことが出来なかった。だってこれも、偽りのものなのだから。だから、誤魔化すように笑みを浮かべるしかなかった。
それは以前お兄様がこぼしていたことだった。彼女は自分の意見ははっきりという人だ。
そして、相手がそれに納得するまで根気強くその話を続ける。
それがいいか悪いかは、場と状況によるところだと思う。だけどレイル様は彼女のそんなところに惹かれたのかもしれない。
お兄様の話しを思い出す。
ーーー以前ヴィヴィアナ様は夜会の途中、大臣補佐の方に政務の話を持ち出したらしい。そして、自分の考えを告げられたとのこと。
お兄様曰くその内容は突拍子もないものだったとか。
何でも莫大な資金が必要となるらしく、発想は斬新であるものの前例がなく、それに着手するにはかなりの話し合いが必要だと思われる内容。
すぐには返答のできない内容に大臣補佐が言葉を濁すとヴィヴィアナ様は酷く立腹されたとお兄様は仰っていて、その日の夜会はとても大変だったらしい。
その大変さは推して知るべし。
なぜなら帰宅したお兄様が珍しくやけ酒のような飲み方をしていたのだから。お兄様はあまりお酒が得意ではないのに。
とても個性的な女性だと思う。
彼女は恐らく、今も尚牢の中にいてもきっと諦めていないだろう。その強さが羨ましい。私には無いものだ。
ーーー私が取り成して彼女を牢からだすことも考えた。
だけど私がそれをすればヴィヴィアナ様は酷く怒るだろう。それはそうだ。私だって何のつもりだと思ってしまう。
それに万が一、レイル様とヴィヴィアナ様の噂が本物で、それが理由で私と離縁したなどと周りに知れたら。話はもっと難しくなる。
だから、それも出来ない。
結果残ったのが穏便に離縁することだった。それが一番いいように思えたのだ。
「………あら、リーフェリア妃殿下。王太子殿下からお花が届いておりますわ!」
不意に侍女のフィリアが私にそう言った。
彼女は見事な金髪を緩く編み込んでいる歳若い女性だ。年齢も私とそう変わらない。彼女のその金髪が、酷く私には眩しく見えた。
フィリアの弾んだ声と共に、彼女が手に花束を持って戻ってくる。
その手には白とピンクで彩られたブーケがあった。
「……ありがとう」
私は、フィリアからそれを受け取る。花の甘い芳香がぶわりと広がった。
「白とピンクの胡蝶蘭ですわ。殿下も意外とロマンチストなのですね、胡蝶蘭を贈るだなんて」
「ふふ。……そうね。嬉しいわ」
「妃殿下は王太子様にとても愛されていますわね。花言葉を理解して贈ってくださる男性なんて、滅多におりませんもの!」
胡蝶蘭の花言葉は
ピンクの花が「あなたを愛しています」ーーー。
そして、白の花は「純粋」。
私は、何も言うことが出来なかった。だってこれも、偽りのものなのだから。だから、誤魔化すように笑みを浮かべるしかなかった。
80
お気に入りに追加
2,299
あなたにおすすめの小説
婚約者の心の声が聞こえてくるんですけど!!
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢ミレイユは、婚約者である王太子に聞きただすつもりだった。「最近あなたと仲がよろしいと噂のミシェルとはどんなご関係なの?」と。ミレイユと婚約者ユリウスの仲はとてもいいとは言えない。ここ数年は定例の茶会以外ではまともに話したことすらなかった。ミレイユは悪女顔だった。黒の巻き髪に気の強そうな青い瞳。これは良くない傾向だとミレイユが危惧していた、その時。
不意にとんでもない声が頭の中に流れ込んできたのである!!
*短めです。さくっと終わる
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
あの……殿下。私って、確か女避けのための婚約者でしたよね?
待鳥園子
恋愛
幼馴染みで従兄弟の王太子から、女避けのための婚約者になって欲しいと頼まれていた令嬢。いよいよ自分の婚期を逃してしまうと焦り、そろそろ婚約解消したいと申し込む。
女避け要員だったはずなのにつれない王太子をずっと一途に好きな伯爵令嬢と、色々と我慢しすぎて良くわからなくなっている王太子のもだもだした恋愛事情。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる