10 / 12
公爵令嬢と婚約破棄
しおりを挟む「………じゃあリア、僕は一度客間まで戻るから。リアはちゃんと着替えてからおいで」
ポンポン、と頭を撫でるとアルはそう言った。そうだ、私まだ夜着のままだわ………!?とても殿方の前に出る格好ではない………。思わず顔に熱が持つのがわかった。
淑女としてあるまじき格好だわ………。どうにかして寝起きの悪さを直さなければなりないわね………
そのまま俯いて反省していると不意に頭上から声がかけられた。
「はー…………リア。本当に僕をどうする気?」
見れば片手で目元を抑えているアルがいた。
「どう………って…」
私は私が死ななければそれでいい。私は自分の身が可愛い。しかしそれを口に出すのははばかられて、というよりも死云々の話をアルにはできないので黙っておく。先程のように頬をつままれるのはごめんだわ。
「……リアの寝起きの悪さは婚姻後もっと酷くなるかもね」
「ええ!?」
悪化するとか、そんなのあるのかしら!?
思わず探るようにミーアの顔を見ればミーアは少し顔を赤らめていた。
な、なんで顔を赤らめる必要があるの………?
そんなに私の寝起きの悪さが恥ずかしいのかしら。そいよね……主人の悪癖が露呈したのがミーアは恥ずかしいのだわ。
これはミーアのためにも一刻も早く改善に務めなければならないけれど…………ここ十五年一度も改善する見込みはなかったのだ。
今更ちょっとやそっとじゃ治る気がしない。
「はぁ………………。……耐えきれるかな」
「耐えるって………何を?」
聞くと、アルはじろりと私を見てきた。不満を含んだその視線に思わずびくりとする。そうするとアルはまたしても「あー」と呟きながらおでこを手のひらで抑えはじめる。どうしよう、アルが変だわ。
「アル大丈夫?なんだか変よ? 」
「あと一年もすればこのリアともお別れなのかと思うと、……………いやなんでもない。今はこの純粋なリアを楽しむことにするよ」
あと一年もすればリアとはお別れ…………!?
って今言ったわね!?これはやはり………そういうことなのだと思うわ!私は自分の顔からさーっと血の気が引くのがわかった。
さっきまでは『絶対婚姻する』というようなことを言っていたのに、今ではもう結婚したくないと言っている。これはやはりゲーム補正………ではなくシナリオの強制力というものなのではないかしら………!?
わ、私は絶対絶対断罪されたくありません!修道院も娼館も辺境に飛ばされるのはごめんだわ!!
私は口を震わせながらアルを見つめた。そんな私を見てアルが苦笑する。
な、なにかしらその微笑みは!?もしかして婚約破棄するのかしら!?
果たして円満婚約破棄に至るのでしょうか……!?
私はアルに小さく聞いた。声は震えてしまった。
21
お気に入りに追加
1,942
あなたにおすすめの小説
くだらない毎日に終止符を
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢フランチェスカ・ヴィヴィアナは既に何回目かの婚約破棄騒動に挑んでいた。この流れは既に知っているものである。なぜなら、フランチェスカは何度も婚約破棄を繰り返しているからである。フランチェスカから婚約破棄しても、王太子であるユーリスから婚約破棄をされてもこのループは止まらない。
そんな中、フランチェスカが選んだのは『婚約を継続する』というものであった。
ループから抜け出したフランチェスは代わり映えのない婚姻生活を送る。そんな中、ある日フランチェスカは拾い物をする。それは、路地裏で倒れていた金髪の少年でーーー
死にたくないので真っ当な人間になります
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢セシリアは《王妃の条件》を何一つ守らなかった。
16のある日、セシリアは婚約者のレイアルドに「醜悪だ」と言われる。そしてレイアルドはセシリアとの婚約を無に帰し、子爵令嬢のエミリアと婚約を結び直すと告げた。
「龍神の贄としてセシリア。きみが選ばれた」
レイアルドは人柱にセシリアが選ばれたと言う。しかしそれはただ単純に、セシリアを厄介払いする為であった。龍神の贄の儀式のため、セシリアは真冬の冷たい湖の中にひとり飛び込み、凄まじい痛みと凍えを知る。
痛みの中、セシリアが思うのは今までの後悔と、酷い悔しさだった。
(やり直せるものならば、やり直したいーーー)
そう願ったセシリアは、痛みのあまり意識を失ってしまう。そして、目を覚ますとそこは自室でーーー。
これは屑で惰性な人生を歩んでいたセシリアが、何の因果か10歳に戻り、死なないために真っ当な人間になろうとするお話です。
愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?
日々埋没。
恋愛
公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。
「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」
しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。
「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」
嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。
※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。
またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。
【完結】婚約破棄された公爵令嬢、やることもないので趣味に没頭した結果
バレシエ
恋愛
サンカレア公爵令嬢オリビア・サンカレアは、恋愛小説が好きなごく普通の公爵令嬢である。
そんな彼女は学院の卒業パーティーを友人のリリアナと楽しんでいた。
そこに遅れて登場したのが彼女の婚約者で、王国の第一王子レオンハルト・フォン・グランベルである。
彼のそばにはあろうことか、婚約者のオリビアを差し置いて、王子とイチャイチャする少女がいるではないか!
「今日こそはガツンといってやりますわ!」と、心強いお供を引き連れ王子を詰めるオリビア。
やりこまれてしまいそうになりながらも、優秀な援護射撃を受け、王子をたしなめることに成功したかと思ったのもつかの間、王子は起死回生の一手を打つ!
「オリビア、お前との婚約は今日限りだ! 今、この時をもって婚約を破棄させてもらう!」
「なぁッ!! なんですってぇー!!!」
あまりの出来事に昏倒するオリビア!
この事件は王国に大きな波紋を起こすことになるが、徐々に日常が回復するにつれて、オリビアは手持ち無沙汰を感じるようになる。
学園も卒業し、王妃教育も無くなってしまって、やることがなくなってしまったのだ。
そこで唯一の趣味である恋愛小説を読んで時間を潰そうとするが、なにか物足りない。
そして、ふと思いついてしまうのである。
「そうだ! わたくしも小説を書いてみようかしら!」
ここに謎の恋愛小説家オリビア~ンが爆誕した。
彼女の作品は王国全土で人気を博し、次第にオリビアを捨てた王子たちを苦しめていくのであった。
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
婚約者と親友が浮気をしているのを知ったので死んで抗議しようと思っていましたが、運命の人と出会えたことで幸せな未来を引き寄せられたようです
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたジャスミン・ベンディングは、世の女性たちが憧れる教会で、もうすぐ結婚式をあげるというのに全く幸せではなかった。
婚約者の子爵令息のアーロ・グレンヴィルと親友で付き添い役を頼んでいた男爵令嬢のミア・バーデットが浮気していることを知って、その結婚式で死んで抗議をして一緒に地獄に堕ちようとしていた。
だが、それを思いとどまらせたのは、ジャスミンの運命の人との出会いによって、未来が大きく変わることになるとは思いもしなかった。
公爵令嬢の立場を捨てたお姫様
羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ
舞踏会
お茶会
正妃になるための勉強
…何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる!
王子なんか知りませんわ!
田舎でのんびり暮らします!
円満婚約破棄をしたらゆるい王妃様生活を送ることになりました
ごろごろみかん。
恋愛
死霊を祓うことのできる霊媒師・ミシェラは皇太子から婚約破棄を告げられた。だけどそれは皇太子の優しさだと知っているミシェラは彼に恩返しの手紙を送る。
そのまま新興国の王妃となったミシェラは夫となった皇帝が優しい人で安心する。しかもゆるい王妃様ライフを送ってもいいと言う。
破格の条件だとにこにこするミシェラはとてつもないポジティブ思考の持ち主だった。
勘違いものです
ゆるゆる更新で気が向いた時に更新します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる