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公爵令嬢と婚約破棄

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「………じゃあリア、僕は一度客間まで戻るから。リアはちゃんと着替えてからおいで」

ポンポン、と頭を撫でるとアルはそう言った。そうだ、私まだ夜着のままだわ………!?とても殿方の前に出る格好ではない………。思わず顔に熱が持つのがわかった。
淑女としてあるまじき格好だわ………。どうにかして寝起きの悪さを直さなければなりないわね………
そのまま俯いて反省していると不意に頭上から声がかけられた。

「はー…………リア。本当に僕をどうする気?」

見れば片手で目元を抑えているアルがいた。

「どう………って…」

私は私が死ななければそれでいい。私は自分の身が可愛い。しかしそれを口に出すのははばかられて、というよりも死云々の話をアルにはできないので黙っておく。先程のように頬をつままれるのはごめんだわ。

「……リアの寝起きの悪さは婚姻後もっと酷くなるかもね」

「ええ!?」

悪化するとか、そんなのあるのかしら!?
思わず探るようにミーアの顔を見ればミーアは少し顔を赤らめていた。
な、なんで顔を赤らめる必要があるの………?
そんなに私の寝起きの悪さが恥ずかしいのかしら。そいよね……主人の悪癖が露呈したのがミーアは恥ずかしいのだわ。
これはミーアのためにも一刻も早く改善に務めなければならないけれど…………ここ十五年一度も改善する見込みはなかったのだ。
今更ちょっとやそっとじゃ治る気がしない。

「はぁ………………。……耐えきれるかな」

「耐えるって………何を?」

聞くと、アルはじろりと私を見てきた。不満を含んだその視線に思わずびくりとする。そうするとアルはまたしても「あー」と呟きながらおでこを手のひらで抑えはじめる。どうしよう、アルが変だわ。

「アル大丈夫?なんだか変よ? 」

「あと一年もすればこのリアともお別れなのかと思うと、……………いやなんでもない。今はこの純粋なリアを楽しむことにするよ」

あと一年もすればリアとはお別れ…………!?
って今言ったわね!?これはやはり………そういうことなのだと思うわ!私は自分の顔からさーっと血の気が引くのがわかった。
さっきまでは『絶対婚姻する』というようなことを言っていたのに、今ではもう結婚したくないと言っている。これはやはりゲーム補正………ではなくシナリオの強制力というものなのではないかしら………!?
わ、私は絶対絶対断罪されたくありません!修道院も娼館も辺境に飛ばされるのはごめんだわ!!
私は口を震わせながらアルを見つめた。そんな私を見てアルが苦笑する。
な、なにかしらその微笑みは!?もしかして婚約破棄するのかしら!?
果たして円満婚約破棄に至るのでしょうか……!?
私はアルに小さく聞いた。声は震えてしまった。
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