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ろくじゅーさん
しおりを挟む「………何?」
ぽつりと、まるで少年のようにつぶやく彼。
私は自分の目論見が上手くいったことに内心安堵しながら、水晶を持ち直した。
「良かった………。あっていたみたいね」
「それ、何?」
「これは、ただの水晶。でもね、水晶の効果って分かるかしら?」
「はぁ?そんなもん、ただの水晶玉だろ?術者の魔力を吸い取って魔法を操るーーー………ッ!そうか、それで僕の魔力を吸ったんだな!?」
「ご明察。………その通りよ。あなたーーー使い魔ね?」
使い魔ーーー。
使い魔とは、元は魔女に使える悪魔だったそうだ。
だけど、現在だと少しその意味合いは異なる。幻魔ーーーそれは魔物でも人間でもない、個体に対して使われる言葉。
普通は人間との契約をしているものがほとんどで、そもそも今の時代幻魔自体が減ってきている。主のいない幻魔となれば尚更だ。幻魔は魔物のように強く、そして魔物のように理性を失わない。だからこそ人間と契約を結び、好き勝手しないよう縛っているのだがーーー。
「ずっと不思議に思ってたのよ。あなたは『人』という単語をよく使った。それはあなたが人外でなければおかしな話だわ。それに、その魔力量に魔法技………。とてもじゃないけど、人では扱いきれない代物。だからもしかして、と思ったの」
通常、主のいる使い魔は主から供給を受けて魔力の管理をしている。
だけど主のいない使い魔はその体に魔力を溜め込んでいる………。だからこそ、魔力を糧にする水晶とは相性が悪いというわけ。
主のいない使い魔なんて普通じゃ考えられない。だからこの考えは一度捨てようかと思った。だけど…………
「どうやら大正解だったみたいね」
「っのヤロ………。僕を吸い殺す気か?」
「やだ。そんなことしないわよ。ただ契約してくれればいいの。言ったでしょう、私、自分の身の安全を確保したいだけなの」
言うと、フロックコートの裾はゆらゆら動いていたものの、ぽすりと重力をなくして落ちた。
そして、おもむろにため息を吐く。
「はーぁ………。僕も最悪の性格をしてると思ったけど、お前も大概だな」
「はぁ?」
思わず聞き返すと、フロックコートがおもむろに崩れる。驚いて見ると、その中から小さな少年が現れた。銀色の髪に、銀色のまつ毛。猫のような目をした彼は、脱ぎ捨てたフロックコートの上に立って、私を見た。
ほ、本当に少年だったのね………。
「いいよ、契約してあげる。その変わり、僕の面倒はお前が見ろよ」
「面倒って……いいわよ、それくらい。というよりあなた子供だったのね」
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