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さんじゅーはち
しおりを挟む「シャフィナ、あなたにお願いがあるの」
「………」
「城下町にいるメゾネリアまで私を連れて行って」
言うと、シャフィナがぱっと弾かれたように顔を上げた。それはそうだろう。メゾネリアといえば暗殺者の住処として有名だ。かく言う私も一度目の人生ではお世話になった組織だった。だけどここで気をつけなければならないのは、メゾネリアというのは使いようによっては依頼主を殺すということ。
メゾネリアは強力な暗殺者の集団ーーー、というより暗殺者の集まり?集団崩れのようなものだ。好き勝手してるものが勝手に集まる、非合法に依頼を受け、非合法にターゲットを始末する。そのやり口は実に鮮やかで、証拠は残さない。
だけどその強力な力を持っている彼らは簡単に依頼主を裏切る。よりよい条件を提示する方に転びやすいということでも有名だ。
最も、一度目の人生で私はメゾネリアを使ってシアを始末しようと試みたことがあった。だけど結果は惨敗。私の汚いやり口が信条に合わないとソレは言い、危うく私を殺しかけた。だけど命までとらなかったのはおそらく私が王太子の婚約者だからだろう。さすがに国を相手にするつもりはなかったということだ。
貴族の娘である程度の教養があればメゾネリアのことはみな知っている。だけど手は出さない。命が惜しいから。見事に諸刃の剣である。
「……シャフィナ。私をそこまで護衛して欲しいの」
シャフィナは国内屈指の剣士使いだ。簡単には負けやしないし、シャフィナの右に出るものはなかなかにいないだろう。
その強さを利用し、一度目の人生ではひどいことをしてしまった。私は未だにそれに罪悪感を覚えている。二度目の人生でも、今回の人生でも彼に関わらなかった理由がそれだ。
だけど今回ばかりはそうも言っていられない。現状私の手駒で動かせるのは彼しかいない。腕がきくといえばラーセルもだが、あれは王太子の付き人。信頼はしきれない。
私がそう頼み込むと、シャフィナは私の目をじっと見てきた。まるで水晶のようにチカチカとその瞳が煌めいている。彼の目はいつだってすんでいて綺麗だ。
言葉を話さないぶん、彼は目で語る。
ややあってから、シャフィナはこくりと深く頷いた。是の合図だ。
「……ありがとう!」
私はシャフィナにお礼を言ってから、少し考えて口を開く。
「……早ければ早い方がいいの。アメリアを呼んで、殿下には城下町の薬屋に用事があると伝えましょう。シャフィナを連れていくから護衛は不要とのことも。………ああ、いきなりあなたを連れ歩くなんて不審に思われるわね………アメリアも連れていきましょうか」
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