婚約破棄までの大切なプロセス

ごろごろみかん。

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さんじゅうに

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「殿下からのご伝言です。リーリアには現状国の事情を隠さなくてもいい、そして1ヶ月の保留についても変更はなしでいい、とのことでした。また、シャルロット様のご希望があればできるだけ沿った内容にもしたいと仰せでした」

「………そう」

「では、客間までご案内いたします」

「………ねえ、」

「はい?」

サラサラとした黒髪をハーフアップにした彼女は先程の青年と兄弟のだろうか。ぱっちりとした目も同じだ。私は侍女を呼び止めると問いかけた。

「他に殿下はなにか仰っていた?」

「いえ、特には」

「そう」

こんなことになったのだから、他にも何かあるかと思ったけど。そうでもなかったらしい。陛下が崩御された。そうなれば、必然的に婚約期間を切り上げる必要性がある。玉座につくものが独身など、本来ありえない。そして、陛下がなくなった以上次の王冠を配すのは第一王子であり王太子の殿下で決まりのはず。
いつまで陛下の崩御を隠すかは分からないが、そんな長くは隠せない。そして、陛下の崩御が公表されれば自ずとして次の国王は殿下となり、戴冠式の日程も決まるだろう。その時、私は王妃となるか、この婚約自体が白紙になるかどちらかの選択肢を迫られるということになる。………ダメだわ、頭が回らない。
つまり、何が言いたいかと言うと1ヶ月など、そんな余裕はないということ。私を妃にするならすぐにでも王妃教育を始めなければならないし、この婚約を破棄するのであれば、次の妃を決めなければならないはず。それは殿下もわかっているはずなのにーーー。
私は侍女に連れられ、客間へと向かった。そこには相変わらずの大きなまるぶちメガネにふわふわした髪を二つ結びにしたリーリアがいた。
ちょこんと椅子に座っていた彼女は私と視線が絡むと、すぐに起立した。
そして、深々とお辞儀する。なんだか少し意外だった。彼女は話が通じな…………少し予想だにしない行動をするものだとばかり思っていたから、きちんとした行動を取れることに感慨深いものを感じた。
侍女が下がり、二人きりになるとリーリアは椅子をすすめていきた。いや、何で自分の部屋のような感覚なのよ。やっぱりリーリアはリーリアだった。

「まず、お悔やみの言葉からお先にお伝えさせていただきます」

「………ええ」

「それで、あなたがたの婚約なのですが状況が状況なのであまり長引かせるべきではないと思うのですがーーー」

「そうね。私もそう思うわ」

「殿下じきじきに1ヶ月の期間で問題ないと仰られましてでしてね」

いや問題しかないでしょう。
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