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にじゅーご
しおりを挟む「それは……まあ、殿下とお出かけなんていつぶりか分かりませんから」
言ってから、また失言だったなと気づく。これではまるで殿下に当てつけるかのようだ。嫌味か?みたいな発言が飛び出して内心私は後悔した。
「……そうだね。だから、今日は楽しもう?」
接続詞がおかしいしなんでそれでだからに繋がるのかがよくわからない。だけど私は曖昧に微笑んでおいて、そのまま馬車に座った。
対面に殿下が座り、カーテンを軽く引きかける。そこでふと手を止めて、私に聞いてきた。
「このままだと明るいかなと思ったけど………シャルは外見たい?」
「……はい」
私は馬車から見える外の景色が好きだった。そう言うと、殿下はちらりと私を見てからカーテンを括り直す。明るい日差しが馬車内に入ってくる。
ぼうっとなんとなしに外の風景を見ていると、ふとあることに気がついた。
………あら?殿下の首が少し、赤いような………?殿下の肌は雪のように白い。ともすれば私よりも白いのではないかというほど。そんな殿下だが、今はその肌が薄らと赤らんでいるのに気づく。
「………殿下、どこか体調でも、」
そう思って聞くと、殿下がちらりと私を見る。少し動揺しているようだった。よく見てみれば、頬も僅かに赤らんでいるようだ。
「……いや、これは……違う。僕は肌が弱くてね。紫外線を浴びると赤くなってしまうんだ」
え、じゃあカーテンしめたほうがいいのでは………。そう思って私が言おうとしたところ、しかし先に殿下が口を挟む。
「でも、気にしないで。特に問題はないから。条件反射みたいなものだし、体に害はない」
そう言うと、殿下はおもむろに前髪に触れた。さらりとした金糸の間から一瞬額が覗く。だけどその白い額も、やはりいつもより赤らんでるように見えた。
「で、ですが……」
さすがに王太子である彼に迷惑をかけてまで外を見たいとは思わない。思えない。
そう思って身を乗り出すと、殿下が「大丈夫だから」と言葉をこぼす。
馬車はいつの間にか走り始めていて、一度馬車をとめてもらうか迷う。殿下はこう仰っているが何か体調面で問題が起きていたら困る。殿下は紫外線のせいだというが、もしかしたら日射病かもしれないし風邪かもしれない。
この人は王太子だというのに、なんというか自分のことには無頓着なのかなんなのか。
それより、三回の人生通して長い付き合いなのに私は彼のことを何も知らないのだと改めて思い知った。
殿下が、彼が紫外線に弱いだなんて私は知らなかった。
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