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じゅーはち
しおりを挟む「ですが、お断りします」
キッパリと告げる。
三度目の人生。もう死ぬのはごめんだ。
二度あることは三度ある、という。そして、三度目の正直、という言葉がある。私は今度こそ。今回の人生こそ、自分の好きに生きてみせると決めた。この婚約だけは絶対に破棄させてみせる。
好きという気持ちがわからない?
私のことを家族だと思っている?
ふふ、遅いのよ。全て、遅い。それをせめて一回目の時に言ってくれたのなら。教えてくれたのなら。まだ納得出来た。だけど今更言われても、ねぇ?
今の殿下に非がないのはわかっている。でももうやってられないのよ。毎回毎回殺される人生っていうのは。あなたに分かる?殺される度に絶望が襲って、屈辱にまみれて、悲しさに溢れて。全身を刺すような痛みに襲われたことが、あなたにはある?
「わたくしは、殿下との婚姻の無効化を望みます」
「………シャーロット」
「殿下も、わたくしではなく他に目を向けてみてはいかがでしょう?殿下が好きにならないのはわたくしだからかもしれません。案外、視点を変えたらあっさり恋に落ちるかもしれませんわよ」
恋に落ちる、なんてチープな言葉を乗せながら私は笑った。とりすましたような笑みを浮かべて私は笑う。もう悲観的な演技をする気はなくなった。殿下は私を見て、手を組み替えた。
「……そうだね。そうかもしれない」
否定しないのかよ。
そう思ったが、殿下はどこか真剣な目をしていた。
「だけど、シャロ。きみに恋をするかもしれない」
「………」
言ってて恥ずかしくなるなら、言わなきゃいいのに。そう思いながら殿下を見る。彼は、続けて言葉にした。
「と、にかく。ンンッ」
よっぽど恥ずかしかったらしい。彼は咳払いをしながら立ち上がった。私は彼をみあげる。殿下は未だに赤い顔で、こう続けた。
「この婚約は、1ヶ月は保留に付される。………僕は、その間にきみを好きになるし、きみも僕をすっ………好きにさせる」
「………随分なご自信ですのね」
だから、いって恥ずかしくなるなら、言わなければいいのに………。
殿下はよっぽど恥ずかしいのか、首元までうっすらと赤くなっていた。そんなにはずかしいのかしら…。恥ずかしいんでしょうね。過去の2回の人生を合わせても、殿下はそういったことは口にしなかったし。
だけどこの絵面はーーーなんというか、年齢制限がかかりそうな程だった。白皙の頬は上気して赤くなっている。白金のまつ毛は僅かに濡れているし、目元も赤い。何より、その水晶のような瞳には涙の膜がうすらと張っていた。全体的に体温が上がっているのか、彼の吐息も熱い。
一言で言って、とてもエロティックだ。
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