婚約破棄までの大切なプロセス

ごろごろみかん。

文字の大きさ
上 下
19 / 66

じゅーはち

しおりを挟む

「ですが、お断りします」

キッパリと告げる。
三度目の人生。もう死ぬのはごめんだ。
二度あることは三度ある、という。そして、三度目の正直、という言葉がある。私は今度こそ。今回の人生こそ、自分の好きに生きてみせると決めた。この婚約だけは絶対に破棄させてみせる。
好きという気持ちがわからない?
私のことを家族だと思っている?
ふふ、遅いのよ。全て、遅い。それをせめて一回目の時に言ってくれたのなら。教えてくれたのなら。まだ納得出来た。だけど今更言われても、ねぇ?
今の殿下に非がないのはわかっている。でももうやってられないのよ。毎回毎回殺される人生っていうのは。あなたに分かる?殺される度に絶望が襲って、屈辱にまみれて、悲しさに溢れて。全身を刺すような痛みに襲われたことが、あなたにはある?

「わたくしは、殿下との婚姻の無効化を望みます」

「………シャーロット」

「殿下も、わたくしではなく他に目を向けてみてはいかがでしょう?殿下が好きにならないのはわたくしだからかもしれません。案外、視点を変えたらあっさり恋に落ちるかもしれませんわよ」

恋に落ちる、なんてチープな言葉を乗せながら私は笑った。とりすましたような笑みを浮かべて私は笑う。もう悲観的な演技をする気はなくなった。殿下は私を見て、手を組み替えた。

「……そうだね。そうかもしれない」

否定しないのかよ。
そう思ったが、殿下はどこか真剣な目をしていた。

「だけど、シャロ。きみに恋をするかもしれない」

「………」

言ってて恥ずかしくなるなら、言わなきゃいいのに。そう思いながら殿下を見る。彼は、続けて言葉にした。

「と、にかく。ンンッ」

よっぽど恥ずかしかったらしい。彼は咳払いをしながら立ち上がった。私は彼をみあげる。殿下は未だに赤い顔で、こう続けた。

「この婚約は、1ヶ月は保留に付される。………僕は、その間にきみを好きになるし、きみも僕をすっ………好きにさせる」

「………随分なご自信ですのね」

だから、いって恥ずかしくなるなら、言わなければいいのに………。
殿下はよっぽど恥ずかしいのか、首元までうっすらと赤くなっていた。そんなにはずかしいのかしら…。恥ずかしいんでしょうね。過去の2回の人生を合わせても、殿下はそういったことは口にしなかったし。
だけどこの絵面はーーーなんというか、年齢制限がかかりそうな程だった。白皙の頬は上気して赤くなっている。白金のまつ毛は僅かに濡れているし、目元も赤い。何より、その水晶のような瞳には涙の膜がうすらと張っていた。全体的に体温が上がっているのか、彼の吐息も熱い。
一言で言って、とてもエロティックだ。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。 卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。 それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか? 陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...