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じゅうろく
しおりを挟む「え、あの、殿下………」
お顔が、熱いようですけれど。
それは言ってもいいのかいけないのか。だけど逡巡した間に気づいたのだろう。殿下がはっと頬を押えた。
「………ごめんね、こんなのオコジョでもわかる事だよね」
はい???
殿下はひとりで呟くと、はぁ、とため息を吐いた。
「僕は人を好きになったことがないんだ」
いやそれよりオコジョについて聞きたいんですけど??何しれっと普通に話してるのかしら。流せないんですけれど、私。普通に気になるんですけれど。
だけど殿下はそのまま話していく。というより人を好きになったことがないって、あの。普通婚約者の前で言います~~~~!?
「………だから、ごめん。その、こういうことに人一倍、うとくて」
「………はぁ」
だから???である。だからなんだよ。
殿下は顔を抑えると、また息を吐いた。そしてちらりと私を見る。うわ、目元まで真っ赤。こんなに赤くて大丈夫………?というより、殿下こんな人だったかしら。1回目も2回目も、殿下のこんな顔見たことがない。え、殿下ってもしかしてそういう………。恋愛初心者だったのかしら。困惑しながら彼を見る。
「……だから、これからは自分なりに距離を詰めていこうと思ったんだけど」
「え、ええ」
「………その、いきなりきみのことをそう呼ぶのは、ダメ、かな」
「……?」
そう、とは………?いけない。文章に内容がなくて理解できない。
私はどう反応すればいいかわからず、曖昧に殿下を見た。
「………シャロ、と呼ぶのは」
「えっ?あ、ああ………はい、いえ、どうぞ」
今更!?言った後に聞くのかよ。いやいやいや。殿下、あの。えっと………これは。もしかして………
ただの不器用?いや、なれてなさすぎなだけ?あの殿下が?いつも余裕の笑みを浮かべていそうな、あの王太子殿下が。こんなに赤面症で異性とのスキンシップに耐性がないなど、誰が考えただろうか。いや、私騙されてるんじゃないかしら………?
「………その、今まですまなかった。きみとのことは、どうにかしなければならないとは思っていたんだ」
「え、あ、ああ」
もうそれしか言えない。いや、意外すぎて。殿下の顔は未だに真っ赤だ。まるで酔ってるかのよう。いや、お酒でだって殿下はこんなに赤くならない。真っ白のミルク色の肌が淡く色づいていて、なんとも色っぽい。
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