婚約破棄までの大切なプロセス

ごろごろみかん。

文字の大きさ
上 下
11 / 66

じゅう

しおりを挟む
玉座の間はしん、と静まり返る。なぜか衛兵たちも困惑気味だ。突然の乱入者は玉座の間を見渡すと、私に視線を合わせた。

「あなたが今回の婚約破棄申請者で間違いありませんね?」

「え?え、ええ………」

申請者て。そんな簡単に申し込みできるように言わないで欲しい。私も困惑気味に返すと、彼女はスタスタと歩いて私の前にやってきた。陛下には見向きもしない。一体これはどういうことなの………。

「申し遅れました。私は婚約危機管理委員会 調査員のリーリア・カミラと申します。そして後からもう一人調査員がやってきますが、そちらについての紹介はまた後ほど」

「…???」

全く意味がわからなかった。
思わず固まる私に、王太子が苦々しげに告げる。

「婚約危機管理委員会………」

だから何それ??
そんな委員があるとか知らないんですけど、というか突然の乱入になんでみんな何も言わないのよ。
なんて口を挟むべきか迷っていると、玉座からため息が聞こえてきた。陛下からだ。
思わずそちらを見ると、彼は額を手で押さえていた。そしてつぶやく。

「こうなるかなぁ、とは思っていたんだ」

おい陛下。
この状況を予見していたらしい陛下は私にまあ待て、というように手を出した。そして、彼女ーーーリーリアに告げる。

「まさかこんなに離れた地にまでやってくるとはな。リーリア女史。此度のことは我が国内での話だ。そのままお帰り願いたい」

「それは不可能です。ラクリマ国王、この案件は既に我が国内で把握済みのものになりますので、ここにきて我関せずの顔をして帰ることはできません。それはラクリマ王もご存知のはず」

その言葉に陛下はなんだか納得のいかなさそうな顔をしていた。だが、やがてため息混じりに言う。

「そうだな。………しかし、今回は都合がよかったのかもしれん。我が娘同然のシャーロットと王太子の婚約破棄は、できることならば私も反対だ」

なんですと。
いやなんでよ、さっきの流れ忘れたの。完全に私が可哀想っていう雰囲気だったじゃない。婚約破棄絶対に受領されるはずの流れだったわ。なのにいきなり何この展開。固まる私に、リーリアはこちら向いた。彼女が動く度に髪がふわふわと揺れる。彼女は顔にあっていない大きな丸ぶちのメガネを持ち上げて、私に言う。

「ミス シャーロット。あなたはカエルム公爵の次女であり、ラクリマ国王太子殿下のご婚約者でもある。それは間違いありませんね?」

「え、ええ………」

それよりあなたはなんなのだと聞きたい。名前はもう聞いたから、どうしてこうなってるかの状況説明が欲しい。未だに状況を飲み込めないながらも言葉を返す私に、リーリアはにこりと笑った。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。 卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。 それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか? 陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...