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1章

新たな住居

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 馬に乗ってスノーリーフを目指した。

 馬のために途中休憩を入れながら、二日目にあっさりと目的地にたどり着く。

 聖光教会の追っ手が来るんじゃないかとか、心配し過ぎだったね。

 相変わらず暗い町の中、私は建物を見上げ、ぽかんと口を開ける。


 なんかでっかくない?


 何でこんなでっかい建物建ってるの?

 さすがに城ほどとは言わないけれど、すっごいお屋敷だよ?
 貴族のお屋敷みたいだよ?

 貴族のお屋敷とか、私は見たことがないけれど、きっとこんな感じなんじゃないかって思うよ?

 こんな建物、最初来た時はなかったよね?


「粗末な場所に主を滞在させるわけにはいかぬからな」


 ってことは作ったの?

 まだ三か月くらいしか経ってないよね、ディノスたちをテイムしてから。

 その時にはこんな建物町中を見ても見つからなかったから、建てたってことだよね?

 三か月で家って経つの?
 家は建っても大○ハウスみたいなのでしょ?

 大○ハウスも凄いんだけどさ。

 何でお屋敷が建っちゃうわけ?

 それも、そん所そこらのお屋敷じゃないよ?

 ヨーロッパとかのスーパーセレブが住んでるようなのだよ?

 スケルトンたちに指導して作らせた?
 あー、そういえば前に、五十体くらい連れてどっか行ったっけ?

 あれ?
 でもあの時は、新しいダンジョンに砦を作るとか言ってなかったっけ?


「もちろんあちらにも主の滞在用の屋敷は作ってある」


 両方なの!?

 三か月でお屋敷建つどころか、二軒も建ってるの!?

 それに、ダンジョンの方にも砦作ってるんだよね?
 どんな風になってるのか、ちょっと怖いんだけど。

 厩舎もあるんだね。
 馬はここに入れておこう。

 また後でね。

 厩舎があるってことは、将来的には馬も飼う予定ってこと?
 じゃあ食べ物の生産量はもうちょっと増やさないとね。

 楽しみだな。
 どんな馬が来るんだろうね。

 それに、周りの建物も綺麗になってない?

 もっとボロボロで、町丸ごと廃墟みたいだったのに、この辺りの区画だけ見ればヨーロッパの町みたいだよ。

 綺麗だし、私にとっては物珍しくて、写真でも撮って回りたい。

 この世界に来てから初めて観光地らしいところに来た気分だね。

 まあ、城も観光地っぽいと言えば観光地っぽいか。

 ずっと住んでたから、お城にいることが特別じゃなくなっちゃってたんだよね。

 うーん、もう戻れないって思うと、なんか寂しいね。


「お屋敷の中、入っても良い?」


 気分を切り替えて、新しいお家を見てみよう。

 クリスにエスコートされてお屋敷に向かう。

 あ、今なんか通り過ぎたよ?
 結界?

 ここにも結界張ってあるんだね。

 城の結界と同じものなら、セキュリティの心配とかなさそうだね。

 扉をくぐると、おっきい大広間が待ち構えていた。

 あ、電気が付いた。
 電気じゃないんだけどね。

 光を放つ魔道具だ。

 これ、近づくと光るようになってるんだよね。
 玄関先のセンサーライトみたいな感じ。

 クリスが魔法の光を消すけど、魔道具の明かりが幻想的で綺麗。

 じっくりお屋敷見学したいところだけど、ちょっと疲れたからさっさと部屋に行って休もう。

 新しいお家って、ワクワクして隅々まで見学したくなるんだけど、旅の後だからね。
 今日はゆっくり休んで、明日見学すればいいや。

 どうせ一日じゃ見学も終わりそうにない広さだしね。


 それにしても、誰もいないね。

 この広い空間に、私とクリスしかいない。

 新しい建物なのに、物悲しい気分になるね。

 建物の維持だけでも、たくさんの人出が必要になりそうなのに。

 お城と同じような感覚で歩いてると、どこにもスケルトンがいないのが寂しくなっちゃうよ。
 骸骨がうろついてないと寂しいって、私も大分異世界に慣れちゃったね。

 私のお部屋、ここ?

 うわぁ、広いね。
 お城の自室と同じくらいじゃない?

 ピアノが置いてないから、お城の部屋よりも広く見える。

 ベッドの質もお城と変わらないね。

 うー、疲れたぁ。
 くたくただぁ。

 ベッドにぼすんと飛び込むと、うつらうつらと眠くなる。


「主よ、携帯食をここに置いておく。我は数日ばかり休養を要するため対応出来ぬが、スケルトンたちが来るまで耐えてもらえるか?」


 そう言いながら、クリスの親指がぽろ、と付け根から外れそうになっていた。

 あー!

 そういえば、クリスって死霊魔法でひっついてるだけなんだったね。

 そんな中二日間も旅して、やっと休める場所に着いたんだもんね。
 あんまりに普通にしてたから忘れてたよ。

 それでも気を抜いたのか、親指がとれそうになっちゃうなんて、もう本当に限界なんだろうね。

 ステータスを見るとMPもほぼなくなってる。
 死霊魔法を維持するのもギリギリってことなんだろう。

 うん、うん、大丈夫。

 私、これでも前世では一人暮らししてたこともあるんだから。

 食べ物は携帯食だけど、数日分はあるみたいだし、一人で大丈夫だからさっさと休んで。

 ごめんね、連れ回しちゃって。
 お屋敷の中を見学しよう、とか思わなくて良かったよ。

 私も寝るから、クリスもゆっくりね。

 そう言ってクリスを部屋から追い出すと、私も布団にもぐる。

 ちょっとだらしないけど、下着で寝ちゃえばいいや。

 お風呂も入ってないし、服も汚れてるからね。

 それにしても、クリスのあんな弱々しい姿を見たのは初めてだよ。
 本当に大丈夫なのか心配になっちゃう。

 もう、聖光教会なんて許さないんだから。

 今は奪われてしまったけれど、いつか絶対、お城だって取り戻してみせるんだから!








ーーーーーーーー

一章完結です。
聖光教会視点の閑話を挟み、二章を書く予定ですが、ストックがなくなってしまったので、いつになるか分かりません。

お待ち頂けると幸いです。

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みんなの感想(5件)

道産子
2024.05.22 道産子

この小説が好きでまた読もうと思ってます。何回もコメントを書いてすみません。m(__)m

解除
道産子
2024.05.22 道産子

この小説が好きでまた読もうと思ってます。何回もコメントを書いてすみません。m(__)m 

解除
道産子
2023.06.12 道産子

1年ぶりにまた読んでみました。いつか続きが読みたいです。m(__)m

解除

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