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1章

ディノス

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「これでまた、新たな領地が出来たな」


 くあっかっかっか! と、クリスは笑った。

 どうやらこの町も、私の領地になったらしい。

 別に王様なんてやるつもりなかったのに、なんか領地が増えて行く不思議。

 まあ、もともとこの土地は黒いスケルトンナイトが支配していたわけで、その黒いスケルトンナイトを私がテイムしたわけだから、自然と私の領地に組み込まれたってことで良いのかもしれないけど。

 城と、ダンジョンのある森と、この町。

 三角形で繋ぐと結構な範囲になるんじゃない?

 うん、なんか細長い三角になりそうだけど。

 領地が増えたところで、なんか良いことがあるわけでもないんだけどね。

 町があっても生産量が増えるわけじゃないし。

 ここも城と同じで、不毛の大地だからね。

 私は自分の生活が充足してれば十分だから、城での生活で満足だし。

 特に宝石が欲しいとか、そういう願望もないし。

 だから町なんて本当はいらないんだけど、手に入っちゃったんだからもらっとこう。

 そのうち何かに使うかもしれないし。

 私、貧乏性なのかもしれない。


 んで、これからどうするの?
 スケルトンナイトたち連れて帰る?

 連れてかないの?
 スケルトンナイトたちはここに置いとく?

 ふぅん……。

 それで、聖光教会と戦う時大丈夫なの?
 駆け付けるにしても間に合わなくない?

 連絡用の魔道具がある?
 それでいざという時に救援に来てもらう?

 そっか。

 クリスがそれでいいっていうならそれが正しいんだろうね。

 その、連絡用の魔道具って、電話?
 違うの?

 届けられるのは光だけ?
 モールス信号みたいなものかな?

 ほうほう。

 こっちの石に魔力を込めると、こっちのランプが光るんだ。

 何これ、面白い。

 じゃあ、スケルトンナイトたちとは一端ここでお別れだね。

 あ、そうだ。

 黒いスケルトンナイトって、どのくらい強かったんだろう?

 ステータスは……。



『ディノス・サルーテ
 ブラックスケルトンナイトLV5

 HP:412/412
 MP:80/80

 STR:418
 VIT:179
 MAG:120
 RES:143
 AGI:188
 DEX:158

 スキル
【剣LV53】
【盾LV35】
【再生LV18】
【身体強化LV12】』



 おー、強いな。

 けど、思ったほどではないかも……?

 STR400越えは凄いけど、他のステータスはそこまで高くない。

 他のスケルトンナイトと比べると高いんだけどね。

 動きとか、スケルトンナイトと比べると滅茶苦茶早い気がしたけど、30くらいしか違わないし。

 30って結構おっきいけど、STRの数値と比べるとどうもね。

 クリスのステータスなんてAGI600超えてるし。

 どうしてあんな速かったの?
 身体強化?

 それで大幅に能力が底上げされてたのか。

 近接戦闘のスキルLVも高いしね。

 まあ、この数値を見ると、クリスが実は余裕だったってのが分かるんだけどね。
 たぶん倒すだけなら一瞬だったんじゃないかな?

 私にテイムさせるために時間を掛けて動きを止めたんだね。

 種族はブラックスケルトンナイトか。

 そのまんま、黒いスケルトンナイトだね。

 あと、名前がある。
 ディノス・サルーテっていうんだ。

 クリスみたいに長い名前じゃないから覚えやすいね。

 ディノスって呼べばいっか。

 でも、なんでディノスだけ名前が付いてるんだろう?

 他のスケルトンナイトは名前がないのに。


「アンデッドに名前がある理由は二つある。一つは我のように生前の記憶を残している場合、もう一つは使役者に名前を付けられた場合だ」


 ふぅん。

 ってことは、ディノスには生前の記憶か、使役者がいるってこと?

 でも、今の使役者は私なんだから、生前の記憶が残ってるって方が可能性は高いのかな?

 私以前に、誰かに使役されてたって可能性もあるけどね。

 町の様子からして、ディノスは結構前からここにいたんだろうし。

 以前にディノスを使役して、死んでったテイマー、あるいは死霊術師でもいたのかもしれない。

 百年単位で存在してたって考えれば、使役者も寿命を迎えるだろうし。

 私みたいに不老じゃない限りはね。


 どっち?

 本人に聞いてみる。

 分からないことは本人に聞けばいいのだ。

 スケルトンは喋れないけれど、意識はあるからね。

 生前の記憶?

 どうやら生前の記憶が残ってるらしい。

 喋れないけど筆談くらいなら出来るだろうから、そのうちディノスの昔話でも聞いてみるかな。

 少しは、退屈しのぎにもなると思うんだよね。
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