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1章

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 馬で走ること数時間、日が少しずつ落ち始めてきた。

 この世界に来てから、神様が頑丈に創ってくれた身体のおかげか、LVが上がってステータスが上がってるからか、疲れることも少ないし、運動神経も良くなった。

 けれどずっと馬に乗っていたので、さすがに少し疲れて来た。

 乗っている私でさえそうなのだから、走っている馬はもっと疲れているだろう。

 大丈夫?

 返事はない。
 ただの馬のようだ。


「今何時?」

「午後の三時を過ぎたところだな」


 クリスに確認する。

 私も時計は持っているのだけれど、基本的には使わない。

 部屋にある壁掛け時計でちょくちょく時間を確認するだけだ。

 懐中時計も腕時計もあるのだが、懐中時計は出すのが面倒だし、腕時計は手首が圧迫されるのが嫌いで、前世から使わない。

 前世だとスマホで確認していたのだけれど、この世界にはそんなものはない。

 午後三時か。
 アフタヌーンティーの時間だね。

 そろそろ休憩する?
 今日はもう野営で良いんじゃない?


「ふむ、もう少し耐えてもらえぬか?」

「別にいいけど……」


 どうして?

 あと一時間くらいなら体力は持ちそうだけど、馬の方がヤバいんじゃない?

 朝からずっと駆け通しだ。

 お昼に休憩は取ったけれど、ゲームと違って小休憩を取ったからって全回復はしないよね?

 疲労してもHPは減らないみたいだし、疲労はステータスじゃ確認出来ないのだ。


「見えてきたぞ?」


 見える?
 なにが?

 私には見えないよ。
 クリスって視力良いよね。
 眼球ないのに。

 城から冒険者たちを観察する時も、私は双眼鏡借りてたけど、クリスは裸眼? で普通に見えてたし。

 視力もステータスには載ってないから、LVが上がれば見えるようになるってもんじゃないでしょ?

 え? 上がるの?

 LV上がると動体視力を中心に視力も上がるんだ?

 まあ、冒険者たちの戦いを思い出すと、あんな化け物みたいな戦い方してて、動体視力が低いわけないもんね。

 動きとか滅茶苦茶速かったし。

 骨の巨人のあり得ない速度の剣とか、結構避けれてたしね。

 遠視力は上がりづらい?
 けど上がるんだね。

 まあ、クリスの視力が良いのは、LVやステータスのせいだけじゃないんだろうけどね。

 アンデッドは暗闇だって見えるわけだし、そもそもが人間よりも高性能な目を持っているのだろう。

 眼球ないけど。

 で、何が見えたの?
 あ、私にも見えた。
 あれは……村だ!

 ぽつぽつと、民家らしきものが見えてきた。

 家はまばらに建っていて、その周囲を獣避けの柵みたいなので囲んである。

 それほど大きな村ではなさそうだけど、百人や二百人は普通に住んでそう。

 あそこに行くの?

 異世界に来て三か月、ついに私は人里に入るの?

 そう思わせといて、実はアンデッドの巣窟だった、なんてことはない?

 一夜の宿?
 目的地じゃないんだね。
 中継地点ってことか。

 けど、こっちに来てから人間との交流とか、初めてだよ?

 そう言うとなんか、私がコミュ障みたいだけどさ。

 私、日本じゃ結構コミュ力高い方だったからね?

 友達多かったし。

 休日は家で過ごしたいタイプだったけどね。
 インドアなのとコミュ障なのはノットイコールなのだ。

 一夜の宿とはいえ、人と交流が持てるっていうのはなんか嬉しいよね。

 城にいてもクリス以外喋らないし。

 最近麻痺して来たけど、骸骨って怖いし。

 でも、クリスは入って平気なの?
 幻影魔法使ってるとはいえ、アンデッドだってばれたりしない?

 都市部以外にはモンスター避けの結界はない?

 え? 都市部には結界があるの?

 まあ、城には間逆の結界が張ってあるんだから、人間もモンスター避けくらいは出来るのか。

 それって、クリスも入れないの?

 クリスなら入れるの?
 なんかザルな警備だね。

 ただ、門から入ると魔物鑑定用の魔道具とかがあるからバレるんだ?
 高位の魔法使いだと、幻影魔法も見破られる?

 ふーん……。

 あの村にたまたま高位の魔法使いがいたりしないよね?

 見破れるのは、王族に仕える魔法使いや、高位の冒険者とか、神官ぐらい?

 そういう人は、こんな辺鄙なところにある田舎の村には来ない?

 うーん、まあ、そっか。

 けどお城にいたクリスも大概だよね?

 あんな場所に高位の魔法使いがいるなんて予想もつかないでしょ?

 クリスはモンスターだから例外なのかもしんないけど、どんなイレギュラーがあるか気を引き締めておかないと、変なフラグが立っちゃうから気をつけようね。


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