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1章

戦力強化

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 戦力を強化しなければならない。


 おそらく数か月もすれば聖光教会の連中が攻めてくるだろう、ってのがクリスの予測だ。

 この前来た連中がただの偵察とも思えないから、あわよくばあの戦力で城を落そうってつもりだったんだろうけども、それが殲滅されたことにより、しっかりと数を揃えた軍隊が来るだろうって予測だ。

 すでに準備が整っているのならば、この前の中途半端な戦力を出すのは無駄だから、おそらくこれから準備を始めることになる。

 そうなると国ってのは動きが遅いもので、たぶん数か月は掛かるだろうって話だ。

 今思うと、あの戦力でこの城を落そうとしてたのって凄いよね。

 だって三十人だよ?
 人間離れした能力は持ってたけども、城だよ?

 三十人で城を落とすとか、戦国時代の逸話でも聞いたことがないよ。

 私が知らないだけかもしれないけど。

 とはいえこっちの戦力はスケルトンが150、レイスが20くらいのもので、あそこまで個の能力が高い相手だと、十分にやられる可能性があったんだけど。

 クリスがいるっていうのがこっちの唯一の強みだ。

 あの連中の能力だと、スケルトン150くらいは余裕で倒せそうだ。

 ってなわけで戦力が全然足りない。
 今の状況だと、実質クリス対聖光教会みたいな図式になってしまう。

 なので戦力を整えようと思うのだけれど、あと数か月でスケルトンがどの程度成長するか……。

 私がこの世界に来てから三か月、最初にテイムしたスケルトンがやっと進化したぐらいだ。

 聖光教会が来るまでもう三か月あるとしたら、今いるスケルトンは全部進化するとして、新しくテイムしたスケルトンを50進化させられるかどうかといったところ。

 総数300、その内進化したスケルトンが200というのが、このまま行った場合の私たちの戦力ということになるだろうか。

 ノーマルスケルトンはいくらでも増やせるけどね。
 テイムすれば良いだけだから。

 ダンジョンでLV上げするのに、多すぎると邪魔だから50体ずつしかテイムしていないだけで、テイムするのは簡単だ。

 けど、数だけ増やしたってスケルトンは弱くて遅い。

 せめて足が早ければもうちょっと使い道もあったんだろうけど、対アンデッドに特化した聖光教会の人たちには、的にしかならないだろう。

 だからといって精鋭を鍛え上げるのに、三か月という期間はあまりにも短い。

 ダンジョンの下層にいるモンスターをテイムしてみたら?
 ってクリスに聞いてみたけど、下層にいるモンスターも大して役には立たないそうだ。

 亡者とかレイスは後でいっぱいテイムする予定ではある。

 とはいえそれが決定打になるとも思えないので、実質詰んでいる。
 城の中で完結させるなら。

 つまり、戦力がないならどっかから引っ張ってくれば良いわけで……。


「準備出来たよ」


 私はリュックを背負って言った。

 この世界に来て初めて、旅をすることになった。

 今までずっと引き籠りだったから、なんかワクワクするね。

 何度かスケルトンをテイムするために城の外に出たけど、スケルトンのいる墓地までだ。

 墓地なんて城の庭みたいなものだから、実質拠点を離れるのは初めて。

 前世の私は旅行が好きではなかったけれど、異世界の景色を見られると思うと、やっぱりワクワクは強い。

 クリスはすでに旅装束に身を包んでいた。
 いつもより短めのローブを着て、ブーツを履いている。

 それ以上に違いを感じるのは、やっぱり顔だろう。
 すでに幻影魔法を使って人間の顔を貼り付けている。

 外で人に遭遇しても良いように、旅の間はずっとこれで行くようだ。

 MPとか大丈夫?


「問題ない」


 この程度の幻影魔法なら、ほとんどMPを使わないらしい。

 まあ、維持するのにある程度集中する必要があるらしいのだけれど、そこはそれ、クリスだからあっさりとやってのけるのだろう。

 さて、それじゃあ、この世界に来て三か月。

 ついに私は旅に出ます。
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