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1章

お勉強

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 お勉強の時間。

 すごく小難しくて、割とチンプンカンプンな魔法の理論をクリスから学んで来たわけだけれど、ともかく言えることは一つ。

 魔力を出さなければ魔法は使えないってことだ。

 クリスに魔法を教わるようになってから、ずっと魔力を出す練習をして来たが、最近になったやっとそれっぽいことが出来るようになった。

 まだ途切れ途切れで、全力で出しても閉め忘れた水道のように、ぽつ、ぽつとしか出てくれないのだけれど、それでも出るようにはなった。

 一か月も掛けてやっとこれだ。
 魔法ってのは本当に難しい。

 まあ、気長にやっていくしかないだろう。

 無双出来ないからって放り出すには、魔法は夢があり過ぎる。

 たまに魔法チートの方が良かったかなぁ、って思ったりもするけれど、今の生活が出来ているのもテイムのおかげだ。

 この生活を気に入っているので、テイムで良かったと思う。

 もしも手に入れていたのが魔法チートだったら、最初に襲って来たスケルトンをぶっ倒して、町に行って普通に無双してたのかもしれない。

 それも楽しそうだけど、今よりも生活水準が高いとは思えないので、やっぱ私はこっちを選んだだろう。

 無双よりも生活水準。
 なんか凄い俗物だな、私。
 人間なんてそんなもんか。

 魔法チートのない私は、この世界の人々同様、一から魔法を学んでいるわけだが、この一か月毎日毎日、少しずつ努力して来て、やっと魔法書が光った。

 魔法書というのは、書いてある文字に魔力を当てると光るのだ。

 光るのは魔力で、魔法書に書かれた文字の形のまま浮かせて、解放すると魔法が発動する。

 魔法を使う時の補助媒体なんだそうだ。
 クリスは魔法書を使わない。

 そんなものを使わなくても、魔法を一瞬で構築出来るからだ。

 魔法書を持っているのは魔法を使い始めたばかりのひよっこか、知らない魔法を覚える時くらいの物で、熟達した魔法使いは魔法書を持ったまま戦闘するようなことはないんだって。

 代わりに杖を持っているが、あれは魔法の威力を増幅するためのものらしい。

 普通の魔法使いは威力を増幅すると共に、魔力を制御しやすくなる杖を使うらしいが、クリスの持っている杖は威力増幅しか機能が付いていないそうだ。

 その分、増幅度合いが倍近くあるらしい。

 威力が増幅した魔力は操りづらいのだけれど、それを二つ重ねた魔力をなんなく操ってみせるクリスは、きっとリッチという種族に相応しいだけ魔法の能力が高いのだろう。

 まあ、クリスと比較するのは無駄だ。
 足し算を覚えたばかりの子供と、アインシュタインを比較するくらい無駄だ。

 なので私は、魔法書に書いてある文字が薄らと光っただけでも感動している。


《【魔力操作】を覚えたよ!》

 少年のような声が聞こえた。

 LVが上がった時に聞こえる声と同じだったので、ステータスを確認する。

 スキルの欄に、【魔力操作LV1】が増えていた。

 やった!

 この世界に来てから初めてのスキル獲得だ。
 やっぱ簡単には手に入らないね。

「魔力操作を覚えたよ!」

 私はLVアップの時に聞こえる声――LVアップ君と名付けよう――と同じセリフで申告する。

「ほう……」と言ってクリスは頷いた。

 ねえ、これってどうなの?
 早いの?
 私、魔法の才能ある?

「う、うむ…………」

 あー、その反応でなんか分かったよ。

 まあ、いいんだよ別に。
 クリスみたいになろうとしてるわけじゃないし。

 ただ魔法が使ってみたいだけだから。

 別に魔法で最強になろうとは思ってない。
 護身術ぐらいになれば良いかなぁ、とは思うけど、それだってついでだからね。

 私が楽しければそれでいい。

 プロを目指してスポーツをする人と、楽しむためにスポーツをする人は別なのだ。

 それに、私もクリスと同じで時間に制限がないらしいから、少しずつ続けていれば、その内ある程度は使えるようになるだろうしね。

 とりあえず目標は、三階層でレイスを倒せるようになることだ。

 レイスは魔法さえ当てれば簡単に倒せるので、断末魔の精神攻撃さえ無視出来れば、倒しやすい相手なのだ。


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