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1章

魔法はだるい

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 魔法とは。


 特定の波形の魔力が、世界の理に干渉して起こす奇跡である。
 波形と一言で言っても音、光、文字などがあり、発動方法は一つではない。

 魔力は誰でも持つものだが、形質が異なっており、特定の波形に対して適格であったり、不適格であったりする。
 その形質によって得意魔法、不得意魔法と呼ばれるものが生まれる。

 一般に適正属性などと呼ばれ、属性検査で得意魔法の種類を分類することが出来る。
 火、水、風、土、光、闇に分けられ、適正属性の魔法が得意魔法になると言われているが、これは事実に反する。

 あくまでもこれは、自分の魔力の形質がどの属性魔法に多く含まれるかを判断するためのものであり、実際には闇属性であるのに、最も得意なのは光属性の魔法、ということも起こり得る。


「……………………」


 クリスが饒舌だ。

 オタクは自分の得意分野については饒舌になるというが、クリスにとってはまさに魔法がそれなのだろう。

 正直舐めていた。
 こんなだるい授業になるとは思わなかった。


 眠い……。


 もっとこう、バーン、ドーンって使えるようになるんじゃないの?

 イメージは力! って感じで。
 芸術は爆発だ! って感じで。

 現代人だから、イメージ力が優れてて、おおっ! すげぇ! ってなる展開じゃないの?

 チートはないにしても。現代人の想像力や発想力が生きてくるんじゃないかとか思ったけども、そんな生易しいものではないらしい。


 眠い……。


 授業なんて受けるのいつぶりだろうか。

 クリスが黒板もどきに書いている文字を書き写していくけれど、正直ほとんど理解出来ていない。

 もっと分かり易くなんないの?
 十分分かり易い?

 んで、どうすればいいの?
 まずは適性検査ってやつをするの?
 しないの?

 適正検査したら、『おお、全属性だ!』ってなるんじゃないの?

 全属性はあり得ないの?
 適正は魔力形質の偏りを調べてるだけ?

 厳密には優れた形質も劣った形質もないの?

 それは平等だね。
 平等じゃないの?

 残酷? 場合によっては使えない魔法があるから?
 よく分からないけど、属性以外の魔法も使えるの?

 理論上は全ての魔法が使える?
 え? おかしくない?
 おかしくないの?

 裏技?
 裏技好きだよ、私。
 上上下下BABってやつでしょ?

 違うの?
 ちゃんと聞け?
 話が逸れてる?
 だって眠いんだもん。

 魔法って難しいね。
 地道に一歩一歩やっていくのが近道?
 教育畑の人が言いそうな言葉だよね。

 やる気がないならやめる?
 やる気はあるけど理解出来ないんだよ。

 魔法書を使った実践?
 何それ、魔法書とかあるの?
 何より実践だよね。

 まず簡単なのでも良いから出来るようにならないと、モチベーションが保てない。

 どうするの?
 魔力を流すの?
 魔力って何?
 身体の中を流れてるの?
 それを本に流せるようにならないと話にならない?

 頑張る。

 ……何にも出ないよ?
 私に魔力ってあるの?
 ステータスを見てみろ?
 …………あるね。
 あるなら出来るの?
 じゃあ頑張る。

 ふん!

 …………何にも出ないよ?
 感覚は自分で掴むもの?
 アドバイスは出来ない?

 ふん!

 踏ん張っても駄目だよ?
 うんちが出ちゃいそうだよ?
 トイレ行け?
 魔法書持って行って良いの?

 分かった頑張る。

 踏ん張る。


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