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1章

初めてのLV上げ

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「そう言えば、私ってどれだけ眠ってたの?」

 私は城の外に見える暗闇を見ながらクリスに聞いた。

「およそ七時間だ」とクリスは応える。

「でもまだ暗いよ?」

「この周辺は常闇だ。昼でも太陽は出ぬ。時刻的には主が城を訪れた頃がちょうど昼だろう」

 うへぇ、マジか。
 太陽出ないの?

 ああ、だからクリスは、屋内に畑を作ったのか。
 太陽が出ないんじゃ、外に作っても植物は育たないのだろう。

 転生したばかりの時に、あまりの暗さに昼間に転生させて欲しかったと神様を恨んだが、昼間には転生させてくれていたんだ。
 暗かっただけで。

 常闇の土地とか、気分が塞ぎそうだ。
 まあ、自室とか畑とかに行けば、ライトを昼間に設定出来るから、基本的に自室にいればそれほど憂鬱にはならないだろう。
 外で運動というのが難しいかもしれないけれど。

 なんにせよ時間の感覚は狂いそうだ。
 出来るだけ時間を気にして、夜に寝るようにした方が良いかもしれない。

 時計ってあるの?
 あるんだ。

 私の部屋にも設置してある?
 助かる。

 地下墓地へと足を踏み入れて行く。

 ダンジョンの中には謎の光が、なんてことはないので、クリスが明かりを出してくれている。
 昨日は火の魔法で視界を確保していたが、今日は何故だか光魔法だ。

 なんで?
 ゾンビは光に寄って来るの?
 火は苦手だから避ける?

 昨日はただの移動だったから火でゾンビを避け、今日はLV上げだから光でゾンビをおびき寄せてるのか。

 魔法にも使い方がいろいろあるんだね。
 火よりも光の方が視界は良い。

「ヴぁ、ヴぁおぁあ」

 ゾンビが現れた。
 ゾンビってスケルトンで倒せる?
 大体同じくらいの強さ?
 それなら数で押し切れるか。

「え、っと……やっちゃえ」

 私の指示に従い、五体のスケルトンたちは一体のゾンビに群がる。

 緩慢な動きで、手に持った武器でゾンビを袋叩きにしてメッタメタだ。
 なんか寄ってたかって弱いものいじめをしているみたいで、ちょっとだけ罪悪感だ。

 武器は城の中にたくさんあった。
 戦場跡で回収したものらしい。

 クリスは私と出会う前に、ゾンビやスケルトンを使役していたらしく、武器を持たせて即席の歩兵に仕立てていたのだそうだ。

 何と戦うつもりだったの?
 人間?

 人間はいらねー。
 燃やしてやるー、みたいな?

 違う?
 こちらから攻めるつもりはないけど、向こうから攻めてくることがあるの?

 なんで?
 土地?

 こんな野菜も作れないような土地が欲しいの?
 アンデッドを殲滅して瘴気を払えば使えるようになる?

 人間って欲深いね。

 瘴気を払っても農地にするには何十年も掛かる?
 それでも土地が欲しいの?

 人間って欲深いね。

 そんな土地だからたまにしか攻められないで済んでる?
 良かったね。

 ダンジョンがあるって知られればもっと本気になって攻めてくる?
 ダンジョンって価値があるんだね。

 あれ? 私ここにいたら、人間の敵みたいにならない?
 脱出路があるの?
 いざとなったら逃げられる?
 ならいっか。

「ヴぁ、ヴぁああ」

 ゾンビが出てくる。

 やっておしまい!

 私の指示でスケルトンたちがゾンビ滅多打ち。

 ゾンビ多いね。
 ダンジョンだからモンスターが多い?

 でも私、ダンジョンの外でスケルトンに遭遇しまくったよ?
 ここに来るまで五十匹ぐらい。

 運が悪い?
 え? そうなの? あれ普通じゃないの?

 ダンジョン以外で一日で五十匹ものモンスターに遭遇することはない?

 え? うそ?
 私、運が悪いの?

「ヴぁ、ヴぉああ」

 ゾンビ出てきた。
 やっちゃえやっちゃえ。
 あ、LV上がったよ。


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