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聖国と帝国と金色の勇者
冥王、妻からの頼み事は断れん。
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グランウェスのダンジョンに入り先を進むユカリ達。俺とペルセポネも付き添いで共に進む。
炭鉱的なイメージかと思っていたが、しっかりとレンガのような石で、壁や床に天井と舗装されていた。更に灯りが必要が無いほど明るい。
ペルセポネは、グランウェスのダンジョンで灯り代わりに聖剣クラウ・ソラスを使おうとしていたらしく、中に入りその環境に拗ねていた。
――――拗ねた顔も可愛いペルセポネ。
そんな今現在十階層を進んでいる。
ダンジョンに入る前、冒険者ギルドにてダンジョンへ入る為の手続きをしていた事を思い出す。
グランウェスの冒険者ギルドにて、ユカリとフェルトが申請をカウンターでしていると、歯が数本抜けたまるで猿のような顔をした冒険者の男が、横から口を挟む。
「姉ちゃんたち、まさかダンジョンにはいるのか?ピクニックじゃねぇんだよぉっ」
「では、受付ました。 では幾つか依頼があります」
歯が抜けた猿のような男の声を無視しながら受付の女性は、淡々と話を進める。
だが、猿のような男は、それすら気にせずユカリ達に突っかかってくる。
「依頼ならよぉ。 俺の依頼も受けてくれよっ。 そうだなぁそんなに冒険したいんなら俺と一夜冒険しようぜぇっ。 お前のダンジョンを俺が攻略してやるぜぇぇ」
こめかみが痙攣しているフェルトとリフィーナ。受付の人も慣れているのか何も無かったかのように話を進めている。
「おい、聞いているのか女が遊ぶとこ……ろぉっじゃねえ」
「オザールっ。 貴方ランクは?」
「おお、やっと聞いてくれたか。 俺オザールはランクDだ」
「今、私が話しているのはランクBの冒険者よっ」
「えっ?」
「ランクB、Bよっ」
「まままままじかっ!?」
オザールと名乗っていた猿のような男が、腰を抜かし尻もちを着く。
「それに、こちらの三人。 パーティー青銀の戦乙女の方。 わかる?」
「ひいぃぃッ」
足をばたつかせこの場から去ろうとする猿のような男は、受付の人が目ヂカラ強く男を睨む。
「女性がくると直ぐに、卑猥な事しか言えない貴方は、去った去ったぁっ!!」
逃げるように消える猿のような男。
そして、ダンジョンに入る申請をする俺とペルセポネ。壁に貼ってあった依頼書をペルセポネは、ユカリ達が受けていたカウンターに出すとその依頼を見て何度も瞬きする受付の人。
「こちらに手を……」
緑色の石に手を乗せるペルセポネのカウンターに近づく、猿のような顔をした男。
「その依頼マジで受けるお嬢さん」
「ええ、受けるわ。 こんな面白い依頼受けなきゃ」
「オザール……」
「まぁ、そんな大物狙うよりも、貴女の目の前にいるこのオザールの下の大物を咥えた方が、あなたもこの俺も喜びますよ」
猿のような男を汚物として見ている受付の人が、怒りを込めて猿のような男に怒鳴る。
「オザールっ!! 毎回毎回、あなたランクはDでしょっ」
「そうさ。 つい先月、誰にも手が届かないランクDになったのは、この俺さ」
「貴方が話している人。 この依頼、ダンジョン三十階層のボス、ベヒーモス討伐。 受領したわ」
「へっ?」
キョトンとする猿のような男に、受付の人は更に言葉を被せる。
「つまり、ランクAの依頼を受けれたって事」
「ん?」
「はぁ、オザール。 貴方が目の前にしているのはランクAの冒険者」
「えっえぇえ? ランクAの冒険者?」
「そうよ。 この世界に三人しかいないランクAの冒険者。 その内女性が一人という事は」
腰を抜かし尻餅をつく猿のような男の顔は青ざめて、額から大量の汗が湧いている。
「まさか……」
「冒険者剥奪されたくなかったら今すぐ、その行為辞めて、とっととこの場から離れ冒険者として仕事してこい」
「は、はいぃぃぃっ!!」
直ぐに立ち上がり姿勢よく駆け足で外に出ていく猿のような男。
更に受付の人の大声で、ペルセポネのランクが知れ渡り、周辺にいた冒険者達がどよめいている。
「すみません。 ですがあの男」
「男って?」
「えっ?」
「あぁ、さっきから独り言話していた猿のような男の事? あんな小物、視界に入らないのよ」
「気を悪くされず、そう言って貰えて嬉しいです。 ランクAの方にウチの冒険者の品格が悪いと思われなくて」
笑顔でカウンターを立ち去るペルセポネに続いて俺もダンジョンに入る申請を済ませ、その足でダンジョンに入っていった。
で、今現在ユカリ達が攻めてくる魔物を倒し更に下の階を目指している。
「ベヒーモスって三十階層にいるって事?」
「このダンジョンの最高記録が三十二階層と言ってましたわ」
「その記録を打ち出したのが昔の勇者パーティーって」
「む、私達も勇者パーティー。 記録更新目指す」
張り切るユカリ達、それを眺めながら後ろからついて行く俺とペルセポネ。
「入る時に冒険者ギルドの人達が教えてくれたわ」
「フェルト何を聞いたん?」
「キンジョウ達の勇者パーティーの事」
「昨夜から入っていると言ってたわ」
「それじゃぁ、私たちの前にいる訳ぇっ!!」
驚くりフィーナに、ユカリが何故か肩をすくめている。
「でも、下に降りる階段は幾つもあるって言うし、沢山の冒険者もいるからそんなに鉢合わせする事は無いと思いますわ」
フェルトの言葉に胸を撫で下ろすユカリ。
――――フェルトは気付いているのだろう。勇者キンジョウに対してユカリが怯えている事を。生前の事を思い出し脳裏に焼き付いているのだろう。
「とにかく、先を急ぎましょう。 私達もベヒーモス討伐に参戦出来るほどの力をつけますわ」
ユカリ達は、迫り来る魔物と戦い徐々に力を付けて行く。
十二階層にて広めの場所にたどり着くと、そこには二組の冒険者パーティーが休憩をとっている。リフィーナとフェルトが、この場所に入るや直ぐに荷物を降ろす。
「ここで今日は、休みますわ」
「そうね。 歩きすぎて足がパンパン」
「むー」
納得するミミンだが、ユカリはまだ先を進みたいと目配りをするがフェルトがそれを拒否。
「ダメですわ。 休むのも大事です、疲労で力が出せませんわ」
更にリフィーナやミミンからも説得され、ユカリは腰を下ろすとペルセポネが、俺の肩を叩き笑顔でお願いをしてくる。
――――断れん。
男一人ということで俺が、見張り役となってしまった。
仕方がない事だが、リフィーナの言う事だとここは魔物が出ない安全地帯らしく、それゆえ人が多く集まる。中には悪さをする者もいる為、必ず見張り役を付けるのが一般的だと。
静まり返るこの部屋で、別のパーティーの焚き火の音が響く。
休みを終え俺達は更に下に進む。
十二階層の同じところで休んだパーティーの姿は見かけくなっていった。
そして、ユカリ達はあまたの魔物を倒し、更に下に進み十五階層に到着し、今は大きな扉の前にいる。
「この扉……」
「ええ、この扉の向こうに強敵、次の階層を守る敵がいる」
「ボスと言われる魔物?」
「さぁ、気を引き締めて行くよっ」
その大きな扉を押しながら開けるリフィーナとフェルト。軋む音が盛大に響くと中から光が漏れだしてくる。
その中を歩く俺達は、光が静まると円形の部屋に壁には灯りが幾つもある。
向かう先に同じような大きな扉があり、その前に魔物が数体踊るように飛び跳ねている。
「あれはっ!!」
「ちっ、すばしこいヤツら」
目を青く光らせ鑑識眼を使うユカリは、そのまま武器を構えると、リフィーナやフェルトにミミンはお互いに目で合図し構えていく。
「ブラウンエテコウモンキーよっ。 それにあの真ん中いるの、ブルーエテコウモンキー」
――――エテ公?見た目からして背丈は俺たちと大差ないが、モンキーと付いているからして猿の魔物だが、名前がそれか、それでいいのか?
「マジっ!? ブルーもいるのか」
「む!ブラウンも素早いのに。 ブルーまでいるの」
「ここはやるしかない」
フェルトの指示が飛ぶ。
ウホウホ、ウホウホと不敵な笑みで迫ってくる猿の魔物。その魔物は猿らしいが、どう見てもゴリラのように大きく胸板が厚く腕や脚が太い。
それが十五匹ほどで、その内三匹が青い毛を持つ。
「なんか見ているとイラついてくる」
「むー。 ミミンも」
「あの、不快な顔どこかで見ましたわ」
「んー、あっ、ギルドで話してきたあの……」
目を見開くユカリの発言にリフィーナ達も思い出して大きく首を縦に振る。
――――ギルド……。あのカウンターにいた猿のような男か。
俺はユカリの言葉で思い出す。
ペルセポネが鞘から剣を抜き取り、目の前で飛び跳ねる猿の魔物を睨みつける。
「小物だけどその動き不快すぎる。 見ているだけで不愉快」
「そうですわね。 あの男の気持ち悪さを表現しているわ」
飛び跳ねていたブラウンエテコウモンキーが、俺達を標的にしたのか身をかがめて睨んでくる。
フェルトは、大盾を構えスキルを発動。
「アトラクト!!」
ブラウンエテコウモンキーの視線が全てフェルトの大盾に向くと、ゆっくりと腕や肩を回して近づいてくる。
ブラウンエテコウモンキーの攻撃がフェルトの大盾一点に集中。
腰を低くし身構えるフェルト。
その間に素早く剣を入れるリフィーナ。
ブラウンエテコウモンキーから血飛沫が舞うと、更にユカリの剣が血飛沫の量を増やす。
四、五体崩れ落ちるブラウンエテコウモンキー。
だが、まだフェルトの大盾スキルが発動中。
その大盾に群がろうとする残りのブラウンエテコウモンキーに、ミミンの炎の槍クリムゾンスピアが狙いを定め放たれる。
命中し燃え上がるブラウンエテコウモンキー。
そのブラウンエテコウモンキーに切り付けるユカリとリフィーナは剣で、ブラウンエテコウモンキーに何度も斬撃を浴びせ地面に倒れていく。
だが、数体避けられブラウンエテコウモンキーは、血なまこになり俺たちを睨みつけてくる。
「そろそろスキル、切れるわ」
「フェルト耐えて」
フェルトの左右に武器を構えるユカリとリフィーナだが、仲間を殺られた事で顔を赤く鼻をヒクヒクと動かすブラウンエテコウモンキーは、目を充血させ睨みながら身をかがめている。
「フェルトのスキルが、切れるのを待っているのかも」
「目が、私と大盾に動いている」
「ストーンバレットォォッ!!」
ミミンは杖を高らかに掲げて数多の握り拳大の石が、横殴りの雨のようにブラウンエテコウモンキーを目掛け放たれる。
腕でその石を振り払おうとするブラウンエテコウモンキーだが、多すぎる石に肉を抉られ血を噴き出して倒れていく。
「後はブルー……」
「倒す必要は無さそう」
剣に着いた血を振り払い鞘に収めるペルセポネの足元には、三匹のブルーエテコウモンキーが、大量の血を流し地に伏していた。
炭鉱的なイメージかと思っていたが、しっかりとレンガのような石で、壁や床に天井と舗装されていた。更に灯りが必要が無いほど明るい。
ペルセポネは、グランウェスのダンジョンで灯り代わりに聖剣クラウ・ソラスを使おうとしていたらしく、中に入りその環境に拗ねていた。
――――拗ねた顔も可愛いペルセポネ。
そんな今現在十階層を進んでいる。
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「では、受付ました。 では幾つか依頼があります」
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「依頼ならよぉ。 俺の依頼も受けてくれよっ。 そうだなぁそんなに冒険したいんなら俺と一夜冒険しようぜぇっ。 お前のダンジョンを俺が攻略してやるぜぇぇ」
こめかみが痙攣しているフェルトとリフィーナ。受付の人も慣れているのか何も無かったかのように話を進めている。
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「オザールっ。 貴方ランクは?」
「おお、やっと聞いてくれたか。 俺オザールはランクDだ」
「今、私が話しているのはランクBの冒険者よっ」
「えっ?」
「ランクB、Bよっ」
「まままままじかっ!?」
オザールと名乗っていた猿のような男が、腰を抜かし尻もちを着く。
「それに、こちらの三人。 パーティー青銀の戦乙女の方。 わかる?」
「ひいぃぃッ」
足をばたつかせこの場から去ろうとする猿のような男は、受付の人が目ヂカラ強く男を睨む。
「女性がくると直ぐに、卑猥な事しか言えない貴方は、去った去ったぁっ!!」
逃げるように消える猿のような男。
そして、ダンジョンに入る申請をする俺とペルセポネ。壁に貼ってあった依頼書をペルセポネは、ユカリ達が受けていたカウンターに出すとその依頼を見て何度も瞬きする受付の人。
「こちらに手を……」
緑色の石に手を乗せるペルセポネのカウンターに近づく、猿のような顔をした男。
「その依頼マジで受けるお嬢さん」
「ええ、受けるわ。 こんな面白い依頼受けなきゃ」
「オザール……」
「まぁ、そんな大物狙うよりも、貴女の目の前にいるこのオザールの下の大物を咥えた方が、あなたもこの俺も喜びますよ」
猿のような男を汚物として見ている受付の人が、怒りを込めて猿のような男に怒鳴る。
「オザールっ!! 毎回毎回、あなたランクはDでしょっ」
「そうさ。 つい先月、誰にも手が届かないランクDになったのは、この俺さ」
「貴方が話している人。 この依頼、ダンジョン三十階層のボス、ベヒーモス討伐。 受領したわ」
「へっ?」
キョトンとする猿のような男に、受付の人は更に言葉を被せる。
「つまり、ランクAの依頼を受けれたって事」
「ん?」
「はぁ、オザール。 貴方が目の前にしているのはランクAの冒険者」
「えっえぇえ? ランクAの冒険者?」
「そうよ。 この世界に三人しかいないランクAの冒険者。 その内女性が一人という事は」
腰を抜かし尻餅をつく猿のような男の顔は青ざめて、額から大量の汗が湧いている。
「まさか……」
「冒険者剥奪されたくなかったら今すぐ、その行為辞めて、とっととこの場から離れ冒険者として仕事してこい」
「は、はいぃぃぃっ!!」
直ぐに立ち上がり姿勢よく駆け足で外に出ていく猿のような男。
更に受付の人の大声で、ペルセポネのランクが知れ渡り、周辺にいた冒険者達がどよめいている。
「すみません。 ですがあの男」
「男って?」
「えっ?」
「あぁ、さっきから独り言話していた猿のような男の事? あんな小物、視界に入らないのよ」
「気を悪くされず、そう言って貰えて嬉しいです。 ランクAの方にウチの冒険者の品格が悪いと思われなくて」
笑顔でカウンターを立ち去るペルセポネに続いて俺もダンジョンに入る申請を済ませ、その足でダンジョンに入っていった。
で、今現在ユカリ達が攻めてくる魔物を倒し更に下の階を目指している。
「ベヒーモスって三十階層にいるって事?」
「このダンジョンの最高記録が三十二階層と言ってましたわ」
「その記録を打ち出したのが昔の勇者パーティーって」
「む、私達も勇者パーティー。 記録更新目指す」
張り切るユカリ達、それを眺めながら後ろからついて行く俺とペルセポネ。
「入る時に冒険者ギルドの人達が教えてくれたわ」
「フェルト何を聞いたん?」
「キンジョウ達の勇者パーティーの事」
「昨夜から入っていると言ってたわ」
「それじゃぁ、私たちの前にいる訳ぇっ!!」
驚くりフィーナに、ユカリが何故か肩をすくめている。
「でも、下に降りる階段は幾つもあるって言うし、沢山の冒険者もいるからそんなに鉢合わせする事は無いと思いますわ」
フェルトの言葉に胸を撫で下ろすユカリ。
――――フェルトは気付いているのだろう。勇者キンジョウに対してユカリが怯えている事を。生前の事を思い出し脳裏に焼き付いているのだろう。
「とにかく、先を急ぎましょう。 私達もベヒーモス討伐に参戦出来るほどの力をつけますわ」
ユカリ達は、迫り来る魔物と戦い徐々に力を付けて行く。
十二階層にて広めの場所にたどり着くと、そこには二組の冒険者パーティーが休憩をとっている。リフィーナとフェルトが、この場所に入るや直ぐに荷物を降ろす。
「ここで今日は、休みますわ」
「そうね。 歩きすぎて足がパンパン」
「むー」
納得するミミンだが、ユカリはまだ先を進みたいと目配りをするがフェルトがそれを拒否。
「ダメですわ。 休むのも大事です、疲労で力が出せませんわ」
更にリフィーナやミミンからも説得され、ユカリは腰を下ろすとペルセポネが、俺の肩を叩き笑顔でお願いをしてくる。
――――断れん。
男一人ということで俺が、見張り役となってしまった。
仕方がない事だが、リフィーナの言う事だとここは魔物が出ない安全地帯らしく、それゆえ人が多く集まる。中には悪さをする者もいる為、必ず見張り役を付けるのが一般的だと。
静まり返るこの部屋で、別のパーティーの焚き火の音が響く。
休みを終え俺達は更に下に進む。
十二階層の同じところで休んだパーティーの姿は見かけくなっていった。
そして、ユカリ達はあまたの魔物を倒し、更に下に進み十五階層に到着し、今は大きな扉の前にいる。
「この扉……」
「ええ、この扉の向こうに強敵、次の階層を守る敵がいる」
「ボスと言われる魔物?」
「さぁ、気を引き締めて行くよっ」
その大きな扉を押しながら開けるリフィーナとフェルト。軋む音が盛大に響くと中から光が漏れだしてくる。
その中を歩く俺達は、光が静まると円形の部屋に壁には灯りが幾つもある。
向かう先に同じような大きな扉があり、その前に魔物が数体踊るように飛び跳ねている。
「あれはっ!!」
「ちっ、すばしこいヤツら」
目を青く光らせ鑑識眼を使うユカリは、そのまま武器を構えると、リフィーナやフェルトにミミンはお互いに目で合図し構えていく。
「ブラウンエテコウモンキーよっ。 それにあの真ん中いるの、ブルーエテコウモンキー」
――――エテ公?見た目からして背丈は俺たちと大差ないが、モンキーと付いているからして猿の魔物だが、名前がそれか、それでいいのか?
「マジっ!? ブルーもいるのか」
「む!ブラウンも素早いのに。 ブルーまでいるの」
「ここはやるしかない」
フェルトの指示が飛ぶ。
ウホウホ、ウホウホと不敵な笑みで迫ってくる猿の魔物。その魔物は猿らしいが、どう見てもゴリラのように大きく胸板が厚く腕や脚が太い。
それが十五匹ほどで、その内三匹が青い毛を持つ。
「なんか見ているとイラついてくる」
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「あの、不快な顔どこかで見ましたわ」
「んー、あっ、ギルドで話してきたあの……」
目を見開くユカリの発言にリフィーナ達も思い出して大きく首を縦に振る。
――――ギルド……。あのカウンターにいた猿のような男か。
俺はユカリの言葉で思い出す。
ペルセポネが鞘から剣を抜き取り、目の前で飛び跳ねる猿の魔物を睨みつける。
「小物だけどその動き不快すぎる。 見ているだけで不愉快」
「そうですわね。 あの男の気持ち悪さを表現しているわ」
飛び跳ねていたブラウンエテコウモンキーが、俺達を標的にしたのか身をかがめて睨んでくる。
フェルトは、大盾を構えスキルを発動。
「アトラクト!!」
ブラウンエテコウモンキーの視線が全てフェルトの大盾に向くと、ゆっくりと腕や肩を回して近づいてくる。
ブラウンエテコウモンキーの攻撃がフェルトの大盾一点に集中。
腰を低くし身構えるフェルト。
その間に素早く剣を入れるリフィーナ。
ブラウンエテコウモンキーから血飛沫が舞うと、更にユカリの剣が血飛沫の量を増やす。
四、五体崩れ落ちるブラウンエテコウモンキー。
だが、まだフェルトの大盾スキルが発動中。
その大盾に群がろうとする残りのブラウンエテコウモンキーに、ミミンの炎の槍クリムゾンスピアが狙いを定め放たれる。
命中し燃え上がるブラウンエテコウモンキー。
そのブラウンエテコウモンキーに切り付けるユカリとリフィーナは剣で、ブラウンエテコウモンキーに何度も斬撃を浴びせ地面に倒れていく。
だが、数体避けられブラウンエテコウモンキーは、血なまこになり俺たちを睨みつけてくる。
「そろそろスキル、切れるわ」
「フェルト耐えて」
フェルトの左右に武器を構えるユカリとリフィーナだが、仲間を殺られた事で顔を赤く鼻をヒクヒクと動かすブラウンエテコウモンキーは、目を充血させ睨みながら身をかがめている。
「フェルトのスキルが、切れるのを待っているのかも」
「目が、私と大盾に動いている」
「ストーンバレットォォッ!!」
ミミンは杖を高らかに掲げて数多の握り拳大の石が、横殴りの雨のようにブラウンエテコウモンキーを目掛け放たれる。
腕でその石を振り払おうとするブラウンエテコウモンキーだが、多すぎる石に肉を抉られ血を噴き出して倒れていく。
「後はブルー……」
「倒す必要は無さそう」
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