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カツオフィレの猛威

冥王、神官クラフを追いかけて。

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「くっそぉぉぉっ。なんでこうなったぁ」

 神官クラフと三人は、必死に駆け北門を目指す。

「勇者を生け捕って……あのお方に献上――――人族の勇者召喚を防ぎつつ世界を魔族の物に出来る筈だったのにだ」

 ブツブツと愚痴を呟きながら走る神官クラフは、目の前に見えた北門の衛兵に全力で叫ぶ。

「うっぉおい、開けるんだっ」
「えっ。 あれは、ク、クラフ様っ?」
「ちっ。 聞こえんか……。 おいっ、女魔法使い。 あの門を壊せ」

 神官クラフと共に駆ける女魔法使いは、頷いた後、デカい扉が閉まっている北門に杖の先を向ける。

「なっ、なにっ?」
「ん? あれ、狙ってないかぁっ!!」
「ど、どうなってる? なんで、クラフ様がぁ」

 杖の先が、微かに光ると複数あらわれた光玉が、放たれ空を切って門に当たる。光玉が破裂し火花を散らし爆発が起こると、扉の木片が飛び交い崩れ落ちる。

「初めっから開けとけば良いんだ」
「く、クラフ……さ……ま」

 爆発や衝撃に巻き込まれた兵士達は、傷つき火傷を負ってってもがき苦しんでいる横を神官クラフ達は、爆煙が立ち込める中そのまま突き進み外に出ていく。

「アイツら、あの中行った」
「煙の中か」

 焼け焦げた匂いが立ち込める北門は、先程の女魔法使いの魔法によって出火し、爆煙が空高く登り出す。

「このまま、突き進むぞ」
「ええ、そうね」

 傷を負った兵士を横目に俺とペルセポネは、神官クラフ達が通った門を通り抜ける。
 デカい扉が、パチパチと焼かれながら煙が上がる壁を背に俺は、目の前に見えると思っていた神官クラフ達の姿を見失う。
 何かのパレードかと思うほどの大勢のアンデッドは、俺からは壁のようにしかみえない。

「はぁ、これどうしろっ……と」
「そういうな。 これ――――こいつらを片付けなければペルセポネ、お前の目的は果たせないって事だ」
「そうねぇ。 やっちゃいますか。……でも、臭さすぎるのよ」
「後ろの煙も合わせて刺激臭半端ない」
「でも、あれに比べればまだ耐えれるし、こいつらぶっ壊せば、臭いの原因を絶たせれるし」
「あの女の神の超絶な刺激臭の方が半端ないな」

 鼻をつまみながら俺は、ペルセポネ会話し目の前に迫ってくる挙動があやしい動きをするアンデッドが視界に入る。
 今ままでは何やかんか言ってゾンビやグールなどの人がアンデッドになった奴らだが、目の前にいるのはそれを含めて、犬や牛などの家畜もアンデッドにされていた。

「こいつらをやるぞ」

 俺が掛け声をする前に、既に剣を抜き身構えるペルセポネが、隣で迫ってくるアンデッドを睨む。
 そして、俺もハルバードを手に取るとペルセポネと左右に別れて襲いかかってくるアンデッド共を薙ぎ倒していく。
 この大量のアンデッドを取り掛かったすぐに北門の消火が終わっていて、最初に出てきたのがユカリとリフィーナ達だ。

「私達もやるわ」
「何!! あの数やるの?」
「えっ!? えっ! セレヌのゾンビよりも多すぎじゃぁ」
「むっー。 くさいっ」

 俺とペルセポネは、腕を前にあげ襲ってくるゾンビや突然飛びかかってくるグールの四肢や胴体に頭部を切断破壊させ奴らが、動かなくなるまで斬って斬りまくっている。そして反対側で暴れているペルセポネは、二本の剣で無数の放物線を描き迫るゾンビやグールのあらゆる部位を細く斬りまくっている。

――――細かくないがアンデッド共が、再び戻らなければそれで良い……。 早くあの女魔法使いを捕まえたいのが見えるな。

 ユカリ達も少なからずアンデッドを確実に倒している。

――――急に襲いかかってくるグールにさえ気を付けていればゾンビは、ただ迫ってくるだけで単純な行動しかしないからな。

 アンデッドに応戦しているユカリ達を後に俺とペルセポネは、地面に転がるアンデッド達の肉片を残しクラフ達の後を追って行く。

 クラフと三人の姿が見えてくると彼らは、誰かと話し合っているようでこちらには全く気付いていないし、あと残り数体のアンデッド――――ゾンビをユカリ達が対処し俺とペルセポネは、ただ彼らの話を目の前にて聞いていた。

「クラフよ。 隷従の首輪……本当なのか?」
「あぁ、そうなんだ。 奴らに――――聖女に見破られた。 だからあんな一端の冒険者に壊されたんだ」
「聖女……。 やはり奴らは侮れんな」
「そうだ。 あの方に聖女の力で勇者生け捕りできなかった事報告しなくては」
「クラフよ、それで良いな」
「あぁ、そうだなカツオフィレ王……」

 クラフと面と向かって話していたのは、王様が座る様な椅子に腰掛け、重装備にマントを付けた整った髭面の強面中年男性は、クラフの言葉をそのまま受け止めている。すると、そのカツオフィレ王と名乗る強面中年男性は、この場が静かになっているの事に気づき始めアンデッドの状況を眺め出す。

「……クラフ。 こいつらは?」
「ん? ……あっ! オマエらはっ」

 カツオフィレ王の指さす方へ振り向くクラフとその三人は、目を丸くし焦りの顔が浮き彫りとなるが、三人はすぐに武器を構えカツオフィレ王とクリフを護る陣形をしだす。

「やっと気付いた」
「いつ、こちらを振り向くか待ち遠しかったけどな。 向かれたら向かれたらで……面倒だな」

 一息つくペルセポネと少し頭を搔く俺は、更にため息を吐き呆然とクラフ達を眺めている。

「コイツらだ。 特にあの女が隷従の首輪をっ」
「聖女が、見抜きお前の魔力を解き……あの女が壊したと言うことか」
「そ、そうだ」
「なら、捨て置くことは出来んな。 我が主――――魔王ノライフ様に楯突く者がいるのだからな」

 腰を上げ、顎を少し上向きにし、見下す目付きで俺とペルセポネを睨むカツオフィレ王の言葉から魔王の存在を知る。

――――魔王、ノライフ……。

「お前ら、やってしまえ。 この場で殺しノライフ様の手を煩わせるなよ」
「そうだ。 お前らやるんだ」
「クラフ……。 お前もだ」
「えっ? あぁ……あ――――そうだな」

 戦斧を向けて構えるゴリマッチョ男戦士が先頭にカツオフィレ王の脇を左右に分かれて赤毛の女戦士に女魔法使いが、それぞれ武器を構えている。
 あまり、頭を垂れてフラフラ歩くクラフは、カツオフィレ王の前に、そしてゴリマッチョ男戦士の後ろに立つと、手を上げた後俺とペルセポネを睨んで声を上げ振り下ろす。

「奴らをっコロセっ」

 戦斧を振り上げるゴリマッチョ男戦士とロングソードを構える赤毛の女戦士は、ゆっくりと歩み寄り間合いを詰める。
 すると、女魔法使いから放たれる黄色い光玉五つが、俺とペルセポネに降り落ちる。

「ほら、魔法使った!!」
「ってぇ。 そんな事言っている状況じゃないだろ」
「あんなの、斬り壊せば」

 ペルセポネは、少し膝を曲げ二本の剣を構えだす。俺もハルバードの柄を強く握り同じく構える。
 ペルセポネの右手持つ白い剣が、迫る光玉一つを裂くと続いて左手に持つ黒い剣がもう一つを叩き斬ると俺は、目を疑い驚き一瞬止まる。

「きゃっぁ」

 ペルセポネの小さな驚きの悲鳴と共に斬った光玉が、炸裂し大きな爆発と合わせ爆風が、立ち込め俺とペルセポネは、煙と爆発に巻き込まれてしまった。
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