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夢と野望の街アテルレナスへ

冥王、魔王と呼ばれてしまう妻のおこない

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 スキンヘッド男を筆頭に9名のパーティーは、ほくそ笑みながら歩き武装集団に手こずるユカリ達に迫る。
 ミミンの魔法によって高台から放たれてくる矢が少なくなり、そして再び火の矢の魔法で放たれてくる矢が無くなる。

「弓の部隊、居なくなったんじゃない」

 ユカリの言葉にキレを見出すリフィーナは、素早い動きで、鈍足だった武装集団を掻き乱し、鎧のつなぎ目に剣先を入れる。
 武装集団は、次々に鎧の隙間から血を噴き出す。そしてユカリに武器を振るう武装集団も地面を赤くし倒れていた。
 武装集団が、数える程になった頃地鳴りと共に禿げ面男がいる方面から砂煙が舞い、スキンヘッド男が笑い声を上げながら駆けてくる。

「ワッハッハー」

 スキンヘッド男の頭上から振り下ろされる大剣が、地面を抉り、土片が弾け飛ぶ。だが抉られた地面の寸前まで移動し大盾を構えその土片を防ぐフェルト。
 その時武装集団に当たり倒れて動かなくなっていた。

「フェルト。 助かったよ」
「なんて、馬鹿力!!」
「よく、防いだな」
「そんな、ヤワな仕事はしないわ」

 ニヤリと口角を上げるスキンヘッド男の後ろには、8名の男。すうっと手を軽く上げ後ろに合図し、重装備をし大盾を持って三名、前に現れる。
その三名は大盾を構え防御陣形を、取り出した。

「俺ら【スキントウー】に叶うかなぁ」
「はぁ? スキントウー?」
「スキル……トウ?」
「聞いた事あるわ。 ランクB目前のって」
「まぁ、お前らも冒険者よりも採取する側になった方が楽しいぞ」
「何が楽しいかっ!! 犯罪者がっ」

 スキンヘッド男のニヤケ顔に、嫌悪感が顔に現れるリフィーナとフェルト。

「犯罪者となった人族。 神エウラロノース様は大変ご立腹なのよ。 この勇者である私が成敗するわ」
「きさま……勇者!?」

 パーティー【スキントウー】は、勇者という言葉に笑いが上がると、スキンヘッド男の声が大きく響く。

「おーおっ! 勇者様かぁっ。 てめぇが魔族現れたのにこの国に来なかったからなぁ。 魔族に襲われた村。そこにいた住人死んだんだっ。 勇者ぁ、おめぇこそ人族を守れなかった犯罪者だっ!!」

 スキンヘッド男の言葉に煽る周りのスキントウーのメンバー達は、馬事雑言をあげている。

「……」
「そんなの言いがかりだわ」
「ユカリは、ランドベルクに現れた魔王を倒したのよ」

 リフィーナ達の言葉には耳を傾けないスキンヘッド男は、顎を引き上目遣いでユカリを睨んでいる。

「犯罪者同士。 毎日昼夜、四六時中、乱れながら快楽に溺れようやぁ」
「あんな黒髪の女。 かわい子ちゃんじゃん、しかも勇者だしよぉ。それが抱けるなんて」
「やっべぇ。 興奮してきた」

 スキンヘッド男のニヤついた顔でユカリに訴え掛けていると、スキンヘッド男の周りの剣や斧を構えた男達が、ソワソワしだした。
 リフィーナは、俯いているユカリを見て励まそうと手を差し伸べる。

「快楽……」
「ユカリ?」
「犯罪者では無い。 私は勇者!! 間違った事してないから」

 真剣な眼差しをし心の奥底から思いの丈を叫ぶユカリの圧に、スキンヘッド男達は目を丸くすると、直ぐに口を大きく開けて笑い出す。

「アッハハハハッ!! 敗れて、悔いて、俺たちに股を広げさせてやらぁ」

 武器を構えるユカリとリフィーナだが、笑い声の間スキントウーの大盾持ち三人が「ランパート」を発動させるとその中の一人が「プロヴォウグ」と大声。

「こいつっっ!!」

 リフィーナの重心を抜く速さの動きでスキンヘッド男に向けて細身の剣を突き刺さそうするが、大盾三人のスキルによってか咄嗟に動きが変わる。

「このぉっ!! なんでくっそぉっ」

 大盾三人の持つ盾が、大きく揺れ一人だけバランスを崩す。そこにユカリの上から大振りな剣筋。
 大盾二人がフォローに入るが、ランパートの城壁すら意味もせずスキルが崩れ、ユカリの振り下ろされる剣が地面を破裂させる。

「おいっ!! 回復っ!!」
「了解!!」
「やはり、勇者かっ!! レベル差か?」

 スキンヘッド男は腕を前に降り出し、四名の剣や斧を持った戦士風の男が、ユカリ達のに迫る。そして奥にいる法衣を着た男の手から光が灯る。

「大盾!! 回復したら……。 おーいっ回復っ!! なんでしねぇー!!っうん?」
「……」
「……」
「ウグッググッ」
「こいつ魔石持ち……」

 俺以外、その場にいるもの全員一瞬の事で分からなかったが、回復魔法を使おうとした男は、襟首を掴みあげられもがき苦しんでいる。
 掴んでいるのはペルセポネ。
 当人は、魔法の発動の時、誰にも悟れれないほど刹那の中、発動し終える前に既に男の襟首を掴むあげていた。

「おいおい、あの女いつの間に……」
「おい、お前!! あいつを」

 剣を持つ戦士風の山賊二人が、ペルセポネに斬り掛かるが、その一歩踏みこむ。

 バンッ!!

 法衣を着た男の頭が後頭部から破裂しペルセポネは、掴んでいた襟首を離し男の体を地面に下ろす。

「なななななっなんなんだぁっ!!」
「おいおいあいつ何かしたか?」
「一瞬だぞ!! 破裂だぞ!!」

 慌てふためくスキントウーと勿論、スキンヘッド男も固まっている。

「こいつ魔石どんなのかなぁー」

 ペルセポネは、その言葉を呟きながら法衣を着た頭のない男の胸元に剣を突き刺し抉る。
 その光景を間近に見る剣や斧を持った戦士風の山賊四人と大盾三人にスキンヘッド男は、口を塞ぎ目をそらす。
 男の法衣は赤く染まり、次第に地面も色を変えていくと、硬いものを見つけたのかペルセポネは拾い上げていた。

「なんなんだよォ!! あいつ」
「あれが、人のやる事かぁ?」
「俺たちだってあんな残虐行為してねぇぞ」

 胴体以外人の形が残った横たわる死体を見て嗚咽するスキントウーのメンバーは、武器を下ろし戦意を喪失していた。

「お前ら、どどどどうしたぁ!!」
「リーダー!! どうしたじゃねぇ。 わかってるだろ?」
「うるせぇ!! もう後戻りできねぇのはわかってるだろ!!」
「あんな遠くから一瞬で現れて!! 何もせずに頭を吹っ飛ばせるヤツだぞ!!」
「リーダー!! 分かってくれぇ。 あんな死に方したくねぇ」
「ありゃ魔王だっ!! 魔王だぞ!!」
「おおおおおめぇらぁっ!! 魔王だろうがなんだろうが、やるしかねぇんだよ。 もう一度武器取れっ」

 怒鳴り散らし武器を落とした者に喝を入れるスキンヘッド男だが、本人も既に体全身震えている。

「いいかお前らっ!!」

 大剣を構えユカリとリフィーナを睨むが、スキンヘッド男の前方と後方に連続で七つの破裂音がする。

「へっ?」

 顔や体にべっとりと血を浴びるスキンヘッド男は、その声を上げ状況を理解できないせいか止まってしまう。目の前にいた大盾三人が、地面に倒れ首から血が噴き出しているのをスキンヘッド男は眺めてた後、ゆっくりと後方に目をやると、剣や斧を持った戦士風の山賊四人も、大盾三人と同様の状態。

 「ユカリ!! そいつは任せたから」
「えっ!? あっ、はっ、はいっ」
「そうそうコベソから。 そいつは殺しても良いけど武器が特徴的だから、殺したら回収してと」
「ペルセポネ!! お前が殺せば!!」
「嫌よアホ……だっけ? エルフ? 私は向こう側に魔法使えるヤツから回収するだけだから。 じゃあ」

 ゆっくりと歩いて禿げ面男達がいる所に向かうペルセポネの姿を見ていたスキンヘッド男が、高く大きく笑い出すと大剣を構える。

「ふん、いなくなったのだ!! これでお前らを血祭りにしてやるっ」

 スキンヘッド男は、大剣をユカリやリフィーナに向け大きく振り回し二人ともそれを避けてはいるが、その大剣の威力は、目で見ても分かるほど先程の力は無くなっていた。

「なんなの?」
「敗れ被れって感じがします」
「う、うるせー。 このランクB寸前の俺の攻撃を喰らえっ」

 スキンヘッド男は、大剣を空高く振り上げて、目をひん剥くほどリフィーナ達を睨みつけ、狙いを定めたのか、風を切る音を立てそのまま振り下ろす。

 ガンッ!!

 大きな音が響くが、スキンヘッド男の大剣の先は地面に当たらず、その間に入ったフェルトの大盾に遮られる。

「「遅い」」

 防がれ跳ね返る大剣とスキンヘッド男の脇が広がると、その瞬間の隙を、ユカリとリフィーナは見逃さず二人の斬撃が交差しスキンヘッド男の脇を斬る。
 ユカリの剣は、そのままスキンヘッド男の右腕にも入り、スキンヘッド男は、持つ事が出来なくなった大剣を地面へ落としていまう。
 ユカリとリフィーナは、持っている武器をスキンヘッド男の顔に突きつけ、両手を上げ引き攣り少しずつ後退するスキンヘッド男。リフィーナとユカリもスキンヘッド男の間合いを保ちながら迫っていく。

「観念なさい!!」
「所詮、寸前男なのよ。 私達は……もうランクBなのよ。 既に!!」
「くっそぉぉぉぉぉっ!!」

 ジリジリと背中を仰け反り、突き刺さられる切っ先に視点を合わせて後退するスキンヘッド男の額から大量の汗が流れて、それが地面に落ちている。
 すると、ユカリとリフィーナの歩みが止まり、スキンヘッド男との間合いに若干の開きが出来るが、後退しているスキンヘッド男の背中に何かがぶつかると、ゆっくり首から上だけ振り返る。

「おお、同士よ。 どうしよぉー」
「おお、どうするか……」

 スキンヘッド男の後ろには、同じような状況の禿げ面男が、迫るペルセポネの突きつけられた剣に視点を合わせ、仰け反りながらスキンヘッド男の方へ少しだけ顔を動かすと。

「同士よ……」
「どうしよー?」

 禿げ面男とスキンヘッド男の顔は、更に青ざめながらお互い相談しあっていた。
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