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第一朝、違和感
5日目 03
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小鳥遊は、バタンと乱暴にドアを閉め、鍵を掛け、チェーンを締め……下のほうに設置してある三つの鍵を閉めた。
小鳥遊の部屋は、異様な施錠具合だった。
まるで、このときを予期していたかのように。
「……弐番さんに出して貰ったんですの。あんなに仲良くするのを強調するということは、もしかするとこういう事態を遠回しに伝えてくれていたんじゃないか……って」彼女は立ち上がって腕を組んだ。「念の為の対策でしたけど、まさか本当に活用する日が来るとは思いませんでしたわ」
やはり、この女児は初日で察していたのだ。年齢にそぐわない洞察力。
「それで、さっき言いかけたことについてですけど……」姉さんを見て、これはまずいと気づいたようだった。「座りましょうか。一度落ち着いたほうがいいですわね」
「あ、ありが、とう、䴇ちゃん」姉さんは、微かにがちがちと奥歯を鳴らしながら言った。
誘導されるがままに、部屋の真ん中辺りに正座する。少し寄りかかってきた姉さんの背中をさすった。正面に小鳥遊も正座する。
失礼にならないであろう程度に部屋を見渡したところ、ほとんど何もなかった。隅の方に鎮座した勉強机と、布団が畳んで置いてあるだけ。最低限といった感じだ──殺風景とでも言おうか。机の上には難しそうな参考書が並んでいた。
「ところで、役職は何でした?」
一旦話題が逸れてほっとした。姉さんがどうにかなってしまいそうだったからだ。
「僕は村人だった」
「わ、わたしも村人」
「わたくしも村人ですわ」
姉さんや小鳥遊が嘘を吐くとも思えない。ひとまず安心した。ここに敵は居ない。
小鳥遊は足を崩して本題を切り出した。自分がリラックスしてみせることで姉さんの不安感を減らそうという試みだろうが、効果があったかは微妙だった。
「それで、さっき言いかけたことなんですけど。弐番さん達のバックに居る方は、おそらくデスゲームの真似事をしたいのだと思いますわ」
姉さんの震えが増す。一応解っていたことではあるが、こうもはっきりと告げられると、自分の死に様が見えた気がして怖くなってしまう。
しかし、小鳥遊は違った。正答を見つけられたときの輝きを湛えた目が、正面から僕を見据える。それは自信。彼女は何かに確信を持っている。
「ですが、これにはちゃんと簡単な抜け道が用意されてるんですのよ。……言われた通りに皆で仲良くすればいいだけ。だからこれは、ゲームなんですわ」
「で、でも……だ、誰かが……勝ちたがったら? 殺されちゃうかもしれない……」
「陽さんは誰かに恨まれるような言動はしてませんでしたし、大丈夫ですわよ。それに、死人が出ることを想像すれば、誰だって怖気づきますわ」
「そうだと、いいんだけど……」
確かに、下手に死体を出したりしてトラウマを残すよりは、ゲームをやり過ごしつつ脱出口を探したほうがマシに決まっている。それに、もし殺すにしても、好意的な人物を手にかけるのは遠慮したいはずだ。その点で言えば、姉さんや聖澤辺りは安全とも言えた。
どれも、まともな思考回路の持ち主であればの話だけれど。
「…………そういえば、勝者に与えられる物について何か言っていたか?」
「どうしてそこが気になるんですの?」
「……いや……なんでもない。ちょっと引っかかっただけだ」
気持ちの悪い違和感に、手中の紙をくしゃりと握る。何か、大事なものを見落としている。
そんな感覚が、抜けなかった。
小鳥遊の部屋は、異様な施錠具合だった。
まるで、このときを予期していたかのように。
「……弐番さんに出して貰ったんですの。あんなに仲良くするのを強調するということは、もしかするとこういう事態を遠回しに伝えてくれていたんじゃないか……って」彼女は立ち上がって腕を組んだ。「念の為の対策でしたけど、まさか本当に活用する日が来るとは思いませんでしたわ」
やはり、この女児は初日で察していたのだ。年齢にそぐわない洞察力。
「それで、さっき言いかけたことについてですけど……」姉さんを見て、これはまずいと気づいたようだった。「座りましょうか。一度落ち着いたほうがいいですわね」
「あ、ありが、とう、䴇ちゃん」姉さんは、微かにがちがちと奥歯を鳴らしながら言った。
誘導されるがままに、部屋の真ん中辺りに正座する。少し寄りかかってきた姉さんの背中をさすった。正面に小鳥遊も正座する。
失礼にならないであろう程度に部屋を見渡したところ、ほとんど何もなかった。隅の方に鎮座した勉強机と、布団が畳んで置いてあるだけ。最低限といった感じだ──殺風景とでも言おうか。机の上には難しそうな参考書が並んでいた。
「ところで、役職は何でした?」
一旦話題が逸れてほっとした。姉さんがどうにかなってしまいそうだったからだ。
「僕は村人だった」
「わ、わたしも村人」
「わたくしも村人ですわ」
姉さんや小鳥遊が嘘を吐くとも思えない。ひとまず安心した。ここに敵は居ない。
小鳥遊は足を崩して本題を切り出した。自分がリラックスしてみせることで姉さんの不安感を減らそうという試みだろうが、効果があったかは微妙だった。
「それで、さっき言いかけたことなんですけど。弐番さん達のバックに居る方は、おそらくデスゲームの真似事をしたいのだと思いますわ」
姉さんの震えが増す。一応解っていたことではあるが、こうもはっきりと告げられると、自分の死に様が見えた気がして怖くなってしまう。
しかし、小鳥遊は違った。正答を見つけられたときの輝きを湛えた目が、正面から僕を見据える。それは自信。彼女は何かに確信を持っている。
「ですが、これにはちゃんと簡単な抜け道が用意されてるんですのよ。……言われた通りに皆で仲良くすればいいだけ。だからこれは、ゲームなんですわ」
「で、でも……だ、誰かが……勝ちたがったら? 殺されちゃうかもしれない……」
「陽さんは誰かに恨まれるような言動はしてませんでしたし、大丈夫ですわよ。それに、死人が出ることを想像すれば、誰だって怖気づきますわ」
「そうだと、いいんだけど……」
確かに、下手に死体を出したりしてトラウマを残すよりは、ゲームをやり過ごしつつ脱出口を探したほうがマシに決まっている。それに、もし殺すにしても、好意的な人物を手にかけるのは遠慮したいはずだ。その点で言えば、姉さんや聖澤辺りは安全とも言えた。
どれも、まともな思考回路の持ち主であればの話だけれど。
「…………そういえば、勝者に与えられる物について何か言っていたか?」
「どうしてそこが気になるんですの?」
「……いや……なんでもない。ちょっと引っかかっただけだ」
気持ちの悪い違和感に、手中の紙をくしゃりと握る。何か、大事なものを見落としている。
そんな感覚が、抜けなかった。
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