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人体模型は青く染まる(2)

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 声を張り上げると、みんな手を止める。ただ、コトミちゃんだけは先生の声が聞こえていないのか、もっくんを見てうっとりとしているので、わたしが「コトちゃん、先生がお話あるって」と声をかける必要があった。
「最近、理科室に変ないたずらが続いているのですが……」
 山口先生の言葉で、みんながすっと息をのんだ。
 何を言われるのか。
 そんな思いがあふれていて、緊張が走る。
「活動時間を短縮するようにと、教頭先生から言われました。六月からは五時半下校にしていましたが、五時下校になります」
 ほっと胸のつかえがとれたかのように、呼吸が楽になった。もしかしたら、この理科倶楽部の活動をやめなさいと言われるのではないかと、最悪なことを考えていたからだ。
「先生。別に、紫水晶は危険なものではないですよね?」
 すっと右手を挙げたヒカルくんが、先生に尋ねた。
「うん。そうなの。危険なものではないのだけれど……。う~ん、あなたたちに言うかどうかなやんでいたけれど、やっぱり、きちんと報告するのも先生の役目よね」
 おそらく先生は、朝のあの件を言いたいのだ。わたしは、ゴクリとのどを鳴らしてしまう。
 その話を聞いたら、他の三人はどのような反応をするのだろう。
「実はね。今日の朝も、理科室にいたずらがしかけられていました」
 ドン、と山口先生は教卓きょうたくの上に両手をついて、身を乗り出してきた。
 一人一人の顔色を確かめるように、わたしたちに視線を向けてくる。
 だがそんなわたしたちの表情を見て安心したのか、先生は言葉を続ける。
「まぁ、今日はね。大したいたずらではなかったんだけど……」
「先生。どのようないたずらでしょうか」
 そう尋ねたのはキイチくんだ。
「あ、うん。そうね……。朝の理科室ね、暗幕が引かれて、イルミネーションのようにLEDが光っていたのよ」
「えぇ。キレイかも……」
 コトミちゃんの言葉に、先生も苦笑くしょうする。
「そうね。ピカピカと光っている様子は幻想げんそう的でしたが……。何もそういうことはね、理科室でやらなくてもいいかなって先生は思うわけです」
 それはわたしも思う。どうせならば、みんなで楽しめるように、例えば校舎の外側をぐるりとかざり付けするとか、そういうふうにしてくれればいいのに。
「昨日の放課後は紫水晶、今日の朝はイルミネーションと、二日続けて理科室はいたずらされてしまいました」
 先生の言葉に、わたしたちはそれぞれうなずいた。
「それで、校長先生、教頭先生と相談して。理科倶楽部の活動時間を短縮することに決めました。だから、今日の活動は五時まで。五時にはみんな理科室から出ていくように。それから、ひとりでは帰らないこと。おうちの人のおむかえか、友達と一緒に帰るかのどちらかです」
 わたしはリュウジくんと一緒に帰っているけれど、コトミちゃんはおうちの人のお迎えだったはず。
「連絡メールで、理科倶楽部の活動時間が変更になったことは、校長先生が伝えてくれるそうです。お迎えが間に合わない場合は、先生と一緒に待つことになります」
 ならば、最初からいつもと同じ活動時間でいいのにとさえ思う。だけど、学校には学校の都合というものがあるのだろう。
過剰かじょう反応してはいけないとは思うんだけど。やっぱり、あなたたちのことが心配なのよ」
 その日から、理科倶楽部の活動は五時までになった。
 だからといって、活動内容に変化はない。ただ、ロボコンを目指しているリュウジくんとヒカルくんは、時間が少しだけ短くなってしまって、大変そうに見えた。

 日本の南側がそろそろ梅雨明けしそうだとニュースで流れ始めても、こちらはまだまだ梅雨の真っ最中。梅雨明けはきっと来月だろう。
 理科倶楽部の活動時間は短縮されたけれど、短い時間でできることを効率的にやる。そんな思いがわたしたちの中にも生まれ始めていた。
 となれば、宿題をさっさと終わらせればいい。宿題をはやく終わらせるためには、授業をきちんと聞いて理解する。
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