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第二章~魔王討伐計画始動~

第51話~御招待~

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目を開けると先に起きて上半身を起こした七海が私の顔を見ていたよ
「おはよう」
”おはよう”
ベッドを出てトイレへ
アレの交換も三回目になると流れ作業だよ

七海とシャワーを浴びテラスで朝の一服をしていると美香がやってきたよ
「おはようございま~す」
「「おはよう」」
美香も紫煙を巡らす
”さて今日は花園大学に十三時だから早稲田駅近くでラーメンでもどうかな”
「ガイアのジャンクフードを堪能だな」
「じゃあ私おススメのお店に行こう!」
そうだった美香は花園大学に附属高校枠推薦で進学したんだったね
本当は私も一緒に・・・封印した記憶を少しだけ思い出しちゃったね

七海にスポーツブラと白Tシャツを用意してもらったよ
ボトムはGパンで白Tシャツの上はダウンジャケットでいいかな
メイクは道着を汚すからスッピンだよ
髪型はポニーテールで邪魔にならないようにね
「わあ彩美ちゃんのポニーって新鮮だよ」
そうだね普段なんか首筋がスースーするからしないもんね

七海は黒でシンプルな膝丈ワンピースをゴムベルトで絞ってるね
コットンの大き目サイズチュニックにワイドパンツでJD感満々の美香だよ
「はい!ねーさん」
と黒のカラコンを美香が七海に渡す
手馴れた手つきでカラコンを七海が着ける
鏡を見て
「う~ん瞳孔の色が目立つがコレが限界か」
「うん色々試したけどコレが一番自然だったよ」
カラコンをした二人は見慣れず不思議な感覚だよ

薄い生地のショートパンツと道着に生理用品を大き目のトートバッグに入れて準備完了
靴はヒール十センチの黒ショーブーを履いたら出発
タクシーで美香お勧めのラーメン屋さんまで
明治通りの西早稲田駅少し先が目的のお店
ポンポコポンとか少し変わった名前の看板が目に入るよ
数人並んでるね
まずは店内で食券を買うんだね
「彩美ちゃんはプチかな」
店内を見渡すとプチを勧められた理由がすぐにわかったよ
ラーメン二杯とプチラーメン一杯に麺増し二枚の食券を買って列に並ぶと店員さんがきたよ
「麺の量と茹で方はどうしますか?」
システムがわからないので美香にお任せの七海と私
「全部麺固でラーメンは九百グラムで」
しばらく待つと三人席に通されたよ
四人じゃないのは導線の関係で椅子が一脚ないんだ

しばらくすると店員さんが来て
「ニンニクいれますか?」
と聞かれるがわからないので美香にお任せ
「プチはヤサイニンニクカラメでラーメンはヤサイマシマシニンニクアブラカラメでお願いします」
完全に呪文だ!七海も私もインスパイアー系は来た事無いので内容がわからないよ

「えっと彩美ちゃんのは茹でたモヤシとキャベツにニンニクと醤油タレをトッピングね」
なるほどそれが呪文の内容なのね
「私とねーさんは野菜が大盛でニンニクに脂身と醤油タレをトッピングだよ」
もはや想像がつきません
すこし待ってると着丼
私のは小ぶりだけどイメージのままインスパイアー系だね
って二人は大盛のラーメンと丼に入りきらない麺が別の丼に入れられて出て来たよ
入りきらない麺は直径三十センチくらいの丼に山盛り
そうか茹で前で九百グラムなのか麺の種類にもよるけど茹で上げは平均1.5倍以上になるので千四百グラム以上だよね
ラーメンはうずたかく野菜が積み上がってるよ
周りの視線が凄い気がします
大男ならでしょうが二人がだもんね

まずは野菜からだね
クタクタに茹でられたモヤシとキャベツが醤油ベースのスープに合うね
次は野菜の下にある脂身多めの分厚いチャーシューだけど柔らかく煮られててジューシーで美味しいよ
さらにチャーシューの下にある麺を啜ると中太麺にスープが絡んでいい感じ
ニンニクのパンチが全体のアクセントになって楽しいよ
もっと脂濃いかと避けていたインスパイアー系だけど予想より脂濃くなかったね
と初のインスパイアー系を楽しんでると周りの視線がなんだか
って二人とも半分以上の麺と野菜が消えてる!!
まだプチの私が半分なのに恐ろしい勢いに周りも気を押されてるんだね

見回すと別丼で麺の人いないもんね
別のテーブルに呪文を聞きに行く店員が
「美香ちゃん今日も凄いね!そちらの方も美香ちゃんレベルなのか驚いた」
常連なんだね美香
私が残ったスープを飲み始める頃には二人は完食
丼にはスープ一滴残ってません
「初めてのインスパイアー系だったが思っていたより脂濃くなく美味しかった」
「でしょ!ここのは脂が適度で食べやすいんだ」
「もう一杯食べたいが時間が無いか残念」
さらっと怖い事を言ってるし
「また来ようね」
私はスープを半分残してごちそうさまです

店を出ると七海がブレスケア数粒と口内消臭スプレーを渡してくれたよ
柔道は密着するからケアしとかないとね
少し明治通りを新宿方向に戻り諏訪通りに入り早稲田駅方向へ
諏訪通りは緩やかな下り坂が続くね
しかし何処に入ってるんだろう二人のお腹は真っ平のままだよ
坂を下りきると左手には「金しか御利益が無いで有名な穴八幡宮」で右手が花園大学のキャンパス
美香にキャンパス内を案内されて柔道場へ

道場の入口で梶原が待っててくれたよ
更衣室に案内されGパンをショートパンツに履き替え道着を着て帯を締める
ネックレスとか指輪を七海に預けて準備完了
道場内に入るといくつかある試合場の一つに梶原が待ってる
七海と美香は試合場から少し離れた邪魔にならない場所に正座で見学

”お願いします”
「よし始めよう」
お互いに距離を詰め襟と袖を取る
出だしで私は足を刈に行くけど読まれていた
片足を上げ始めた踏ん張りが効かない瞬間を狙って強く引き寄せられ背負われ投げられる
しまった久々の乱取りが楽し過ぎて出だしに突っ込み過ぎた
すぐに立ち上がり距離を詰める
距離が詰るとお互いに襟と袖を取る

今度は梶原が足を刈にきたよ
出来るか!?私も刈にきた足を狩り返す
完全に狩り返すことは出来なかったけど梶原のバランスがほんの僅かに一瞬崩れる
今だ!体を反転して梶原を背負い投げる
バーン!
道場内に大きな音が響く

周りで練習しながら私達の乱取りを見ていた部員達が
「梶原が投げられた!?」
動揺が広がる
見ていた部員たちは梶原が手を抜いてなかったことはわかってる
「驚いたあの一瞬を突かれるとは」
”何か前より体が動く”
梶原が近づいて来て周りに聞こえない小声で
「メネシスでどれくらい実戦をしたんだい?」
”数百人は斬ったよ”
「やはり実戦に勝る経験は無いんだな」
”えっ”
「詳しくは後で続けよう!久々に気持ち良く投げられて楽しいよ」

そこからは投げては投げられを繰り返す
周りの部員は練習の手が止まり完全に観戦者になってる
唯一危ないのは寝技
パワーと体重差で抑え込まれると完全に動けない
梶原が耳元で
「一度だけ強化で俺と同じ位の力で寝技に対応してみて」
次に寝技に持ち込まれた時に強化で梶原と同じ力加減にして逃げを試みる
でも力任せでは力は同じでも体重差は埋められないので無理なのもわかってる
技を掛けようと梶原が体の位置を入れ替えに入った瞬間に体を捻る
梶原が体を離して立ち上がる
「よしここからは寝技は無しでいこう」

休みを挟まずに続く一時間の乱取りに見ていた部員達も驚きを隠せない
休息用の長椅子に移動して息を整えてると梶原がキンキンに冷えたペットボトルのスポーツドリンクを渡してくれた
半分くらいを一息に飲んで体温を下げると呼吸も落ち着いたよ
「先ほどの実戦の話だけど」
”うん”
「生死を掛けた戦いではやり直しは効かない」
”そうだね”
「だから本当に一瞬の隙でも見逃さない鍛錬には最高なんだよ命がけだけどね」
”無敵チートでも斬られれば死ぬ可能性はあるから出来るだけ相手の動きを読むことは意識していたよ”
「俺には怖くて真似できない凄いよ」
横で聞いていた七海が
「私と美香も今度稽古付けてもらえないかな」
「よろこんで」

ふと梶原の視線が私の顔へ
「あっ今日はスッピンだったのか」
”道着とか畳を汚しちゃうと”
「スッピンでも驚くくらい可愛いよ」
なんか顔が赤くなる
”ありがとう”

道場にいる皆さんにお礼をいい着替えて帰るよ
部長からはいつでも練習に来ていいよと声を掛けてもらえたよ
道場の建物を出ると
「彩美なんか顔が赤いぞ」
”わかってて突っ込まないでよ”

キャンバスを出たらタクシーでマンションまで
部屋に戻ると私はシャワーだよ
一時間連続の乱取りで道着は搾れるくらい汗を吸ってる状態だったからシャワーが気持ちいい
鏡で顔をみると梶原の「スッピンでも驚くくらい可愛いよ」が蘇ってくる
七海とそっくりな顔だから可愛いのは間違いないのだろうけど面と向かって言われると照れちゃうよ
男の時は自分がイケメンとか思ったことなかったけど美香からは女子の中では話題になってたけど美香と付き合ってると思って誰もアプローチしなかったとか
美香の魅力に挑戦出来る自信のある子はなかなか居ないよね

シャワーを終え髪を乾かし下着姿でリビングへ
美香が私の姿を見て
「本当に心も女になったね」
”えっ”
「前だったら私の前でも恥ずかしいってあまり下着姿とか見せなかったよね」
”あっ”
「女同士って感覚になったからでわかるかな」
”うん”
「少し寂しいけど永遠の刻を女として生きて行くならね」

美香は出勤準備で自分の部屋に一度帰ったよ
そろそろ出勤準備なので久々にドレスを着るよ
ドレスは七海と相談して色違いで両肩オフショルで胸元が大きく開いたタイトのロングドレス
スカート部分のサイドスリットが股下ギリギリまで入ってるけどタイトなので太腿までしか見えないよ
色は当然だけど七海が白で私が黒
メイクをして髪を七海にセットしてもらうと十七時だよ
美香とは後で合流する約束をしてるので鹿野ちゃんの店でUVシールネールだよ
メネシスでネイルは不要だから数日持てばいいからね

ネイルを済ましたらタクシーで気分上々へ
店に入ると先に来てた美香がテーブル席でレモンサワーを飲んで待ってたよ
おっ薄い金色サテン時で肘丈の袖がレースな胸元の開いたタイトミニスカート丈なセクシードレスだね
三十分位しかないからゆっくりは楽しめないね
七海と美香は親子丼とチキンサンド
私は焼きおにぎりセット
あとレバーとハツモトに銀杏を頼んでレモンサワーのスッパ濃いめで乾杯
串物をアテに少し落ち着いたらチキンサンドが出て来たね
デカい!知っていても毎回デカい!そして挟まってる胸肉唐揚げの厚さといったらをあっという間に食べちゃう二人
七海に一口もらったよ胸肉はジューシーだし食パンは炭火で香ばしくてバターとマヨがいい感じだね

親子丼と焼きおにぎりもきたよ
焼きおにぎりも美味しいけど〆に最高な鶏スープの秘訣を聞いたら鶏ガラを煮出したあとに入れる大量の鶏ガラスープの素って聞いて名店の味の秘密で目から鱗もあったね
食べ終わると十八時二十分よい時間だね
気分上々を出てお店へ

扉を開け七海が
「おはよう!」
と声を掛けると静香が七海に飛びついて来たよ
「おかえりなさいママ」
七海が静香の頭を撫でながら
「マキから聞いてるよ本当に頑張ってくれてありがとう」
「本当に遣り甲斐あって楽しい時間をありがとうございます!」
静香って本当に真面目で変な物にも染まらない強い心のある凄い人だよ

バックルームにコートと鞄を仕舞うと朝礼が始まるよ
「今日から七海大ママと彩美がイブまで入る事前告知で反響も大きいから皆も気を引き締めて」
マキが定型文章で皆んなを煽る
「今日は七海ママと彩美ちゃんが楽しく過ごせる一日にね」
静香は本当に可愛いよ
「大ママよろしくです」
マキが七海に振る
「本当にマキと静香を支えてくれてる皆んなに感謝だ!今宵も御客様の明日の活力になる一助として!」
「「はい」」
なんて言うか凄いよね一体感が
「開店」
マキが朝礼を締めると入口の扉が開く

七海も私も指名は多いけど今日はサラリーマンとか普通の人が多いよ
復帰初日でドタバタになるだろうと徳さんとかの超常連は少し落ち着く明日以降だね
移動中にすれ違った静香が
「月曜の今日でコレだとイブが怖いです流石の御二人です」
とか褒めてくれたよ
「彩美ちゃん八番テーブルお願いします」
閉店まで残り一時間位の十二時を過ぎた頃にコールがあったので八番に移動すると

ああ刻が来たね
黒髪が背中の半ばまで眉毛くらいまでの前髪に女心でも見惚れるレベルの美人で双子に見える二人
黒のタイトスカートに胸元が少し開いた白シャツでショートジャケットは彼女らの戦闘服
一人は少し不敵な笑みを浮かべルシファーの面影があるね
もう一人は少し視線を逸らし自信なさげな感じ
”御指名ありがとうございます彩美でございます”
二人の向かいに座る
”お飲み物はどうされますか”
笑みを浮かべてた方が聞き覚えのあるクリスタルを溶かしたような声で告げる
「貴方の影響で私達もジャックダニエルが好きなの」
ライターを着け黒服にジャックボトルを伝える
「八番テーブルさんボトル頂きました」
すぐに届いたボトルからロックグラスにストレートを波々で二人の前へ
「遠慮せずに飲んでくれ」
私もキャストグラスに波々のジャックをストレートで
「「乾杯」」
軽く杯をかかげ三人で一息にグラスの酒を飲み干す

空いたグラスに再び酒を注ぎ本題だね
”本日は御指名ありがとうございますですがお初ですよね”
「こんな丁寧な招待状を頂いてな」
昨日の御苑近くで私が落とした名刺がテーブルに置かれる
”気が付いて頂けたとは嬉しいですね”
「化かし合いは無しに話せないのか?」
”ここは浮世ですから御客様が望まぬ限りは”
「ふっ強くなったな」
”貴方に比べればまだまだですよ”
「私に心を重ね物語を紡いでいた時に私は彩美の心を感じていた」
”逆も又正なり”
「壮絶な日常に折れそうな心を私に重ねることで心を保つ日々」
物語は中学時代の壮絶なイジメから現実逃避するのに書き始めたんだよ
”本当に物語の中で私の意思を離れ強く生きてくれる貴方に助けられたよ”
「理由はわからないが物語が現実になることを感じた私は私と一つになることで壮絶な環境から抜け出す導きをしたが」
”私は断った”
「その時はわからなかったが今はわかる自力で抜け出していたのだな」

「失礼します」
七海が来たね
「七海でございます」
挨拶をして私の横に座る
「七海さんにもお酒を」
キャストグラスにジャックを注ぎ七海に渡す
「乾杯」
まどかが静かに言いグラスを軽く掲げる
一息にグラスを飲み干す四人
空いたグラスにジャックを注ぐ

「お会い出来て光栄です七海さん」
「私もですよ」
「貴方が彩美を強くしてくれたんですね」
「彩美は元々強い子ですよ」
「彩美と一つになることで私は完全体に慣れると無理やり物語を書き替えましたが」
”貴方は私 私は貴方 その刻が遠い日であり 実現する日を楽しみに”
「七海さんとの未来を紡ぐために上書きされるほど彩美が強くなるとは」
”貴方は私 私は貴方 過去の私と今の私が一つになる事で 私は永遠に愛する者と刻を過ごす”
「まさか覚醒前の自分を呼び出し自分自身と契約して覚醒後の世界を書き換えるとか想像も出来ない方法で」
”私がメネシスに転移していたのに気が付いていたの”
「それは知らなかったが上書きだけは直感で感じた」
”でも全てを知ってそうなんだけど”
「招待を受けてからメネシスに戻り母から全てを聞いて来た」
”なるほどね”

「彩美ちゃん四番テーブルお願いします」
”後をお願いね七海”
「はい」
四番テーブルは既に美香がいたよ
御客様は月一~二回来てくれる二人組の常連さん
挨拶をし隣が空いてる方の横に座る
「おー彩美ちゃん性転換したと聞いてたけど完全に女性だな」
”ありがとうございます”
「彩美ちゃんも一杯どうぞ」
”ありがとうございます”
ボトルはハウスだったので黒服を呼びビールを頼む
取り留めの無い会話を少ししていると照明が暗くなりクラシックが流れ出す

閉店の片付けも終わり封筒も受け取る
カウンターの七海に手招きされる
「招待状を受け取ったよ」
カウンターの上には一枚のショップカード「CLUB AURORA」
六本木にある会員制の高級クラブ
御客様にアフターで連れて行ってもらった覚えがあるよ
紹介がないと会員になれなくて入会金が百万円で年会費が数十万円とかの世界
”招待に応じて来てくれたからこちらも応じないとね”

店を出て美香も一緒に三人でタクシーに乗り六本木へ

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