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第一章~冒険者への旅立ち~
第43話~謁見~
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まだ体の芯に残る微睡を感じながら目を覚まさなきゃとの思いと微睡をもう少し味わいたい気持ちの葛藤
やさしく頭が撫でられる
柔らかくて温かい手の感覚が意識を現実に呼び戻してくれる
薄く目を開けると先に起きてベッドサイドに座って頭を優しく撫でてくれてる七海が見える
「おはよう」
”うん・・・おはよう”
上半身を起こそうとするけど微睡が残った体では上手く力が入らないよ
背中を七海が支えてくれて起き上がると水差しからコップに水を注いで渡してくれた
一気に飲むと胃に染み渡る感覚と同時に微睡が薄れて行く
サイドテーブルの時計を見ると十一時だね
ゆっくり寝たので昨晩の余韻も抜けてて普通に立ち上がれたよ
七海とテラスへ行き寝起きの紫煙を巡らす
「久々に彩美が酔ってるのをみたよ」
”自分で思っていたより体は疲れていたのかな”
「反逆貴族との戦闘では私の倍は動いていたからね」
”えっ”
「無意識だったのかな脇が甘い私をずーっとフォローしてくれてたしね」
”そうだったんだ戦闘中は体が勝手に動いてる感じなんで気が付かなったよ”
「剣儀はルシファーに習ったの?」
”本当は正式な型をルシファーに習いたいと思ってたけど時間が無くて今の剣技は我流なの物語を書くのにリアリティー出したくて中学の頃にヨツベで色々な動画を見て練習していたの”
「独学であそこまでか唯前の敵を斬るだけなら付け焼刃でも出来るけど返す刃の先とかが反射的に決められなくて隙が出来るんだよ」
”本当は物語だけでなく苛めてた奴に逆襲したくて見た目でなく実践でと思って乱取り出来る剣術道場の体験とかも何回か行ったんだ”
「でも使わなかった」
”もしかしたら既に世界の力が働いていたのか体験のはずが道場破りみたいになって力の加減も出来なくて危険過ぎるとガイアでは封印していたよ”
「そこで俺ツエー!で行くんでなく相手の身を考えちゃうところが彩美らしいね」
”実践重視の道場だと防具付けても木刀のクリティカルもらうと色々で痛み慣れしてると思ってたけど悲鳴上げてのたうち回ったしね”
「道場には通わなかったの?」
”体験に行ったいくつかの道場からは熱烈なオファーあったけど両親がよい顔しなかったから諦めたよ”
湯舟に浸かると酒が欲しくなるけど今日は王宮に行くので我慢だね
「剣儀だけど教えてくれないかな」
”うん我流だけど”
「彩美と同じ剣技使いになれるなら最高だよ」
ゆっくり浸かりたいけど準備もあるので軽く温まった程度で我慢だね
風呂をあがるとナタリーがブランチを届けてくれた
今日はBLTサンドな感じのバケットサンドイッチとコーンポタージュだね
端ないけど髪が乾くのを待つのもあって下着姿で朝御飯だよ
レタスではなく違う葉物だったけどオーロラソースでサンドイッチは美味しかったね
コーンスープを飲んでコーヒーで少し休んでると髪も乾いたので準備開始
冒険者服を着てメイクだね
メイクはコスメショップでの再現だね
ヘアオイルも買ったので軽く塗って梳かしてアホ毛とかを綺麗にして完成
時計を見ると十三時半なのでコーヒーを飲みながらテラスで一服だよ
”さてルシファーがお膳立てをしてくれているから失敗はないけどココを乗り切れば安心して年末はガイアに戻れるね”
「次の計画は?」
”しばらくは流れに任せてだけど遠くない日にダブネスが干渉してくる”
「してくるでなくって干渉するように仕向けるんでしょ」
”バレバレだねガイアに戻った時に死鬼を狩ってダブネスが私達の存在に気が付くように仕向ける”
「ガイアでダブネスの手足として動く魔術で鬼化された人だね」
死鬼はダブネスの秘術と魔力により変質された人で不老になり常人を遥かに超えた身体能力を手に入れ初歩の魔法なら使える個体も存在する
人を超えた存在となった代償は肉体の死とダブネスへ永遠の忠誠
脈打たない仮初の命を繋ぐためにの定期的な吸血行為で無関係な人の命を奪う忌むべき存在
魂は死した肉体に宿っているので意思はあるがダブネスの命令は絶対に拒めない傀儡
争い事を起こす為に全世界で数千人が潜みダブネスの手足とし悪戯を働いてる
死鬼達の見たもの聞いたものは全てダブネスに繋がっており得た情報でダブネスは次の悪戯を考え死鬼を使い実行する
「歌舞伎町ほどの街なら何人かの死鬼が潜んでるは間違いないけど」
”今の私なら簡単に見つけられる”
「なるほどね彩美の存在を知ったダブネスは何らかのアクションを起こすと」
”とういかダブネスはルシファーと同じで私の存在は物語が現実になった時から知ってるのは間違いないけど死鬼程度では私を見付けるのは難しいからね・・・だから此方から見付けて貰いに行くだけだね”
「その後は・・・」
「お話し中失礼いたします王宮より御迎えが到着いたしました」
狭霧が伝えに来たよ
”ありがとう”
「じゃ続きは後でね」
”うん”
黒泉館の入口に行くと王宮の馬車が待っていたよ
タウンコーチタイプの馬車で作りは豪華だけど外装は黒一色で両扉に闇の国の紋章が入ってるだけだね
このタイプの馬車は客室後方外に従者が立ち乗り出来るスペースがあるので御者は御者席のままで従者が扉の横で待ってたよ
馬車に近づくと扉を開けてくれたので客室内へ
扉が閉まり従者が後方のスペースに立つと馬車が動き出す
周りの人々は王宮馬車なので不敬が無いように少し離れ静かに見守っていたけど馬車が去ったら「何で王宮馬車?」とか騒がしくなるんだろうね
馬車は人が歩く速度でメインストリートを西門方向へ行きメインストリート中央あたりで王宮に向かう通りへ左折して入る正面に見える王宮が少しずつ大きくなってきたよ
王宮手前の川に掛かる跳ね橋に馬車が差し掛かると正門が開き招き入れる
闇の国の王宮城は少し変わっていて正門と南門につながる裏門まで一階部分は吹き抜けの通路になってるよ
吹き抜けの両側に幅の広い階段があり登ると吹き抜け上が通路になっていて入口がある
扉前の通路は左右の階段をつなぐ幅の広い通路になっていてる
通路から街の方向をみると正門から城までの間にある中庭が見渡せ式典で中庭に来賓とか街人を招き入れて王族が挨拶をしたりするよ
左側の階段前に馬車が止まると従者が扉を開けてくれたよ
階段前には儀典官のクエが待って居るね
「お待ちしておりました」
クエが先導して階段を上がり既に開いている両開きの大きな扉から王宮内へ
エントランスの広間を抜け奥に抜ける通路へ脇の少し広めな通路に入ると両側に椅子が並ぶ
通常の謁見を待つ者は椅子に座って順番を待つ場所だね
今回は王宮が招いた賓客扱いなので通路横にある扉を抜け個室へ
窓から中庭が見える以外は四人掛けのソファーがローテーブルを挟んで対面で配置されただけの応接室だね
「お時間までしばらくこちらでおまちください」
と礼をしてクエが部屋を出て行く
しばらくすると
「失礼します」
とナタリーがコヒーを持って来てくれたよ
”なんかこうやってナタリーに合うと不思議な気分だよ”
「本当ですね何かありましたら呼鈴で御呼びください」
ナタリーも部屋を出たので七海と迎えが来るまでテラスでの会話を再開
”ダブネスは私を認識すればすぐに創造主とわかるから”
「それなりのアクションがあると」
設定上は無敵ヒロインの「まどか」だけどダブネスからしてみれば完全回復をすれば脅威ではない
私の文才では物語根本の破壊になるので書けなかったがダブネスにしてみれば「目の前を飛び回るハエ」程度の存在な「まどか」に死鬼を使って弄んでる復活したら出来るだけ屈辱的な方法で破滅させるために
まどかは自分だけでダブネスに勝つことが出来ないので仲間を作りると流れに切り替えた辺りから周辺の作り込みを丁寧にせず物語を進めてきた歪みを解決できず私は物語の先を紡げなくなっていた
私を認識したダブネスは私の脅威度を探ろうとするだろう
既に創造主としての力は失われ今紡がれてる世界を自由に変える力が無い事はわかっているだろうけど
私は出会った死鬼を通してダブネスにメネシスと自由に行き来出来ることを隠そうとするがバレる展開を演ずる
回復に必要な憎しみの力を効率よく得られるガイアを私との闘いで壊したくないダブネスはメネシスで手を出してくるだろう
ダブネスの支配欲対象はメネシスであってガイアがどうなろうと気にはしないだろうけど完全回復まではガイアは今のまま存在してもらわないと困るダブネスだからね
物語では曖昧にしか書いてなかったから細かい予想は出来ないけどダブネスには数人の懐刀の臣下がいて伝説の龍との闘いにも一緒にいた
そして瀕死の重傷を負いながらも一緒にガイアに落ちたはず
ダブネスほど強大な力ではないので完全回復してダブネスの完全回復を待ちながら傍らに控えてる可能性は大きい
私の力を探るのに臣下をメネシスに送り込んでくれれば大成功
順次送り込まれる臣下を倒すのにメネシスの人々を鼓舞し導き自分たちの手でも伝説の脅威を排除できる力を手にいれてもらい伝説の龍とか私がいなくても保てる世界にする
最終的には対ダブネスは私達が強力な助力をする必要はあるが「あくまで助力で主は私達」とメネシスの人々で倒した歴史が完成すれば引退の刻だね
「かなり強引な部分を感じるけど物語を生み出したで彩美だから組立られる流れだね」
”まあ駄目なら次の手を考えるけど”
「次の手?」
”ダブネスの隠れる場所を見つけて「ほら臣下をメネシスに送り込めや!」ってピンタしに行くよ”
「強制力を発動とかも楽しそうだな」
”世界は無敵チートの御都合主義だけは私に授けてくれた”
「それを何の為と彩美は思うの」
”今はまだ理由はわからない・・・その答えを探すのも無敵チートを与えられた私に課せられた因果の一つなのかも”
扉がノックされる音が室内に響く
扉が開きクエが一礼をし
「謁見室までご案内いたします」
応接室を出て椅子の並ぶ通路突き当りの謁見室と思ったら突き当り横の扉に案内される
部屋は豪華な木製テーブルが部屋の中央にありテーブル奥側にはロココ調の豪華な椅子が二脚で既にサタンとルシファーが並んで座ってるよ
手前側には高級感漂う木製アームチェアが二脚
テーブルの幅は六脚位は椅子が並べられる幅があるね
左右の壁際にはケンとナンシーの他にも貴族服に身を包んだ男が数人立ってるね
部屋の奥は一面が窓になっておりサタンとルシファーに後光が差したみたいになってるよ
この部屋は儀典的な謁見でなく実務を兼ねた謁見時とか親しい仲の相手と形式に拘らないリラックスした謁見をする時に利用されるよ
まあこちらの謁見室になるのは予想してたけど
形式と言え創造主を跪かせる行為にルシファーは耐えられないだろうしね
テーブル前まで来ると
「本日は急な御招待に応じて頂きましてありがとうございます」
なんかルシファーとこういう会話をするのは不思議な気分だね
”お招き頂きありがとうございます”
クエが椅子を引き着席を促す
席に座ると
「まあ今更形式的な会話も落ち着かないのでいつものままで話そう」
”そうだね”
「書記官は適当に体裁を整えた謁見録に仕上げてくれ」
壁際に立つ一人が
「承りました」
「ここに居る者は今後に必要であると考え彩美と七海の状況は伝えてあるので細かい事は気にしないでよいぞ」
壁際の男達が一人ずつ自己紹介をしてくれる
元は黒髪であったであろう肩までの灰色の髪を後頭部で纏めた小柄で皺くちゃな高齢の男
「書記官を務めておりますウエスティンでございます」
書記官の隣には短髪の黒髪で背が高くかなり恰幅のより男
「国軍幕僚代表官のサーベでございます」
その隣にはリガヅイ卿でさらに隣にケンとナンシー
私達の後方扉横には儀典官のクエ
「今回は正式な記録を残す為に堅苦しい場所になるが気楽にして欲しい」
扉が開き押し車を押したナタリーが部屋に入って来る
テーブルにグラスと赤ワインのボトルを移しグラスにワインを注ぐ
立ち組は押し車より既にワインが注がれたグラスを手に取り元の場所に戻る
「まずは創造主を王宮に無事御迎えで来たことに乾杯」
皆静かにグラスを掲げグラスのワインを飲み干す
しかしサタンは一言も話さない置物になってるね
そこから話された内容は
・反逆貴族達討伐への功績として私達に騎士爵を授与する
これは正式な貴族として国軍幕僚会議等に参加出来る立場を用意してくれたね
・冒険者ギルドの決めた範囲で国軍は私達へ優先的に協力をする同盟関係を締結
冒険者ギルドの依頼だけでなくダブネスや配下が手を出して来た時に国軍を指揮する大儀名分が出来たね
これだけでも現時点での目標に十分だったけど
・巡回使として他国に行った時の身分保障
これは確かに助かるよ闇の国の巡回使となれば訪れた国で必要に応じて王に謁見とか申し込めるしね
金のコインが二枚づつ私と七海に手渡される
「騎士爵と巡回使の証だ」
そして一枚の紙にサタンがサインをし渡される
「これを冒険者ギルドに提出すれば国軍とギルドの協力関係が締結される契約書だ」
謁見の内容は全て終えた
そして私は今後の計画を伝えた
ルシファーと私達以外は顔面蒼白になったよ
「既にガイアではダブネスの手下が出現してるとは」
サーベが唸り声のように呟く
”厄災を招き込む状態になり申し訳ないがダブネスの送り込む配下を闇の国の力で倒すことで人々は恐怖の呪縛から解放され人々が協力すれば倒せる相手になる”
「遥か昔に刻まれた忌まわしき記憶の払拭が全ての始まりになると」
流石だよ書記官だけあってウエスティンの纏めは
”そうだ!反逆貴族とか強力した隣国はどうなったの?”
「反逆貴族達は取り決めに従い爵位と領地を剥奪し一族処刑」
この設定は私が決めた事だから惨いとか絶対に言えない
「隣国に関してはどの国も一部貴族暴走とか軍部暴走と王室の関与を否定して多額の慰謝料を支払う事で手打ちを申し出ている」
”まあ絶対に王室が関与しなければあの人数は動かせないけど”
「わかっておるが関与した国に報復戦をしても得る物は少なく無駄な戦力消費になるので今回は手打ちを受けるが派兵した兵が一兵も戻らない状況に次は無いことを反逆に協力した国々も理解しただろうしな」
最後にケンから第一師団の訓練所とかの施設に自由に出入りする許可をもらったよ
謁見が終わり帰りの馬車は遠慮させてもらい冒険者ギルドまで散歩気分で歩くよ
”かなり楽な形式だったけど王宮ってだけで疲れたよ”
「なんていうか独特の空気感だったよね」
なんて雑談をしながら歩いて冒険者ギルドに到着だよ
冒険者ギルドに入るとミナイにギルマスと会いたいと伝える
すぐに二階のギルマス部屋に呼ばれたよ
挨拶をし応接ソファーに促されて座る
サタンの署名が入った契約書をリナに渡す
「なんか展開が早すぎてですが闇の国国軍と協力関係締結とか御二人が来るまでは想像も出来ないことでした」
”これでまだ形だけだけど準備だけは出来たよ”
リナにも今後の計画を伝えたよ
流石だよ計画を聞いても顔色一つ変えないリナの胆力
「ギルドはどのような位置で関わる計画ですか」
”事が起きたらギルド依頼として共闘する冒険者を全国から集めてもらいたい”
金級以上になれば王都常駐国軍の一騎当千兵と同等か以上の戦闘力となる
ダブネスの手下と言えども雑兵では無駄死にしか待ってない
主戦力は王都常駐国軍と金級以上の冒険者で手下に挑む
貴族の保有する軍と銀級以下は手下がメネシスに戻ってくれば必ず集めるであろうモンスター達と対峙して主戦力が戦いに集中できるようにする
「メネシスに存在する異形のモンスターはダブネスが産み出した伝説は本当だったのですか」
”ダブネスがガイアに落ちたので今は各々の欲求に従い生きてるがダブネスの力がメネシスに戻れば魔王群として秩序を取り戻し従うことになるよ”
「かなりの犠牲は覚悟ですか」
”人々が協力すれば魔王群でも将来現れるかもしれない強力な人類の敵でも倒せると成らなければいつの日かメネシスは滅びる”
「御二人がいれば・・・」
「永遠の命を得たと言え無限の刻を守護神として生きるのは心が耐えれない」
”そして私達が守護神となってしまえば事実上は世界の支配者で疲れ果てた時に心が壊れ世界を破滅に導き心中する可能性すらある”
「だからダブネスを人々が自力で倒す事で人々が目覚めたら私達は未開拓の辺境に移り住み流れる刻を見守るだけの存在になりたい」
「わかりました力を手に入れる為に犠牲は必用とのことですね」
”本当は誰も犠牲にならないのが最高だけど今の私に考えられる範囲では無理でね”
「ただここまで話が大きくなると総本部ギルドマスターにも話をしないと」
”年明けの光の国への新年挨拶団に同行して光の国へ行く予定なので細かいスケジュールが決まったらアポをお願いできるかな”
「はい御準備させて頂きます」
リナとの会話を終え受付フロアーに行くとミナイとジルが待ってたよ
「ミナイも今日は早上がりなんで四人で少し早いディナーにいかないか」
”いいねえ!”
「何か食べたい物あるかい?」
”何かある七海?”
「今日は肉祭りがいいなあ」
「じゃあアノ店でいいかな」
ジルを先頭にメインストリートを西門方向に向かい歩くよ
やさしく頭が撫でられる
柔らかくて温かい手の感覚が意識を現実に呼び戻してくれる
薄く目を開けると先に起きてベッドサイドに座って頭を優しく撫でてくれてる七海が見える
「おはよう」
”うん・・・おはよう”
上半身を起こそうとするけど微睡が残った体では上手く力が入らないよ
背中を七海が支えてくれて起き上がると水差しからコップに水を注いで渡してくれた
一気に飲むと胃に染み渡る感覚と同時に微睡が薄れて行く
サイドテーブルの時計を見ると十一時だね
ゆっくり寝たので昨晩の余韻も抜けてて普通に立ち上がれたよ
七海とテラスへ行き寝起きの紫煙を巡らす
「久々に彩美が酔ってるのをみたよ」
”自分で思っていたより体は疲れていたのかな”
「反逆貴族との戦闘では私の倍は動いていたからね」
”えっ”
「無意識だったのかな脇が甘い私をずーっとフォローしてくれてたしね」
”そうだったんだ戦闘中は体が勝手に動いてる感じなんで気が付かなったよ”
「剣儀はルシファーに習ったの?」
”本当は正式な型をルシファーに習いたいと思ってたけど時間が無くて今の剣技は我流なの物語を書くのにリアリティー出したくて中学の頃にヨツベで色々な動画を見て練習していたの”
「独学であそこまでか唯前の敵を斬るだけなら付け焼刃でも出来るけど返す刃の先とかが反射的に決められなくて隙が出来るんだよ」
”本当は物語だけでなく苛めてた奴に逆襲したくて見た目でなく実践でと思って乱取り出来る剣術道場の体験とかも何回か行ったんだ”
「でも使わなかった」
”もしかしたら既に世界の力が働いていたのか体験のはずが道場破りみたいになって力の加減も出来なくて危険過ぎるとガイアでは封印していたよ”
「そこで俺ツエー!で行くんでなく相手の身を考えちゃうところが彩美らしいね」
”実践重視の道場だと防具付けても木刀のクリティカルもらうと色々で痛み慣れしてると思ってたけど悲鳴上げてのたうち回ったしね”
「道場には通わなかったの?」
”体験に行ったいくつかの道場からは熱烈なオファーあったけど両親がよい顔しなかったから諦めたよ”
湯舟に浸かると酒が欲しくなるけど今日は王宮に行くので我慢だね
「剣儀だけど教えてくれないかな」
”うん我流だけど”
「彩美と同じ剣技使いになれるなら最高だよ」
ゆっくり浸かりたいけど準備もあるので軽く温まった程度で我慢だね
風呂をあがるとナタリーがブランチを届けてくれた
今日はBLTサンドな感じのバケットサンドイッチとコーンポタージュだね
端ないけど髪が乾くのを待つのもあって下着姿で朝御飯だよ
レタスではなく違う葉物だったけどオーロラソースでサンドイッチは美味しかったね
コーンスープを飲んでコーヒーで少し休んでると髪も乾いたので準備開始
冒険者服を着てメイクだね
メイクはコスメショップでの再現だね
ヘアオイルも買ったので軽く塗って梳かしてアホ毛とかを綺麗にして完成
時計を見ると十三時半なのでコーヒーを飲みながらテラスで一服だよ
”さてルシファーがお膳立てをしてくれているから失敗はないけどココを乗り切れば安心して年末はガイアに戻れるね”
「次の計画は?」
”しばらくは流れに任せてだけど遠くない日にダブネスが干渉してくる”
「してくるでなくって干渉するように仕向けるんでしょ」
”バレバレだねガイアに戻った時に死鬼を狩ってダブネスが私達の存在に気が付くように仕向ける”
「ガイアでダブネスの手足として動く魔術で鬼化された人だね」
死鬼はダブネスの秘術と魔力により変質された人で不老になり常人を遥かに超えた身体能力を手に入れ初歩の魔法なら使える個体も存在する
人を超えた存在となった代償は肉体の死とダブネスへ永遠の忠誠
脈打たない仮初の命を繋ぐためにの定期的な吸血行為で無関係な人の命を奪う忌むべき存在
魂は死した肉体に宿っているので意思はあるがダブネスの命令は絶対に拒めない傀儡
争い事を起こす為に全世界で数千人が潜みダブネスの手足とし悪戯を働いてる
死鬼達の見たもの聞いたものは全てダブネスに繋がっており得た情報でダブネスは次の悪戯を考え死鬼を使い実行する
「歌舞伎町ほどの街なら何人かの死鬼が潜んでるは間違いないけど」
”今の私なら簡単に見つけられる”
「なるほどね彩美の存在を知ったダブネスは何らかのアクションを起こすと」
”とういかダブネスはルシファーと同じで私の存在は物語が現実になった時から知ってるのは間違いないけど死鬼程度では私を見付けるのは難しいからね・・・だから此方から見付けて貰いに行くだけだね”
「その後は・・・」
「お話し中失礼いたします王宮より御迎えが到着いたしました」
狭霧が伝えに来たよ
”ありがとう”
「じゃ続きは後でね」
”うん”
黒泉館の入口に行くと王宮の馬車が待っていたよ
タウンコーチタイプの馬車で作りは豪華だけど外装は黒一色で両扉に闇の国の紋章が入ってるだけだね
このタイプの馬車は客室後方外に従者が立ち乗り出来るスペースがあるので御者は御者席のままで従者が扉の横で待ってたよ
馬車に近づくと扉を開けてくれたので客室内へ
扉が閉まり従者が後方のスペースに立つと馬車が動き出す
周りの人々は王宮馬車なので不敬が無いように少し離れ静かに見守っていたけど馬車が去ったら「何で王宮馬車?」とか騒がしくなるんだろうね
馬車は人が歩く速度でメインストリートを西門方向へ行きメインストリート中央あたりで王宮に向かう通りへ左折して入る正面に見える王宮が少しずつ大きくなってきたよ
王宮手前の川に掛かる跳ね橋に馬車が差し掛かると正門が開き招き入れる
闇の国の王宮城は少し変わっていて正門と南門につながる裏門まで一階部分は吹き抜けの通路になってるよ
吹き抜けの両側に幅の広い階段があり登ると吹き抜け上が通路になっていて入口がある
扉前の通路は左右の階段をつなぐ幅の広い通路になっていてる
通路から街の方向をみると正門から城までの間にある中庭が見渡せ式典で中庭に来賓とか街人を招き入れて王族が挨拶をしたりするよ
左側の階段前に馬車が止まると従者が扉を開けてくれたよ
階段前には儀典官のクエが待って居るね
「お待ちしておりました」
クエが先導して階段を上がり既に開いている両開きの大きな扉から王宮内へ
エントランスの広間を抜け奥に抜ける通路へ脇の少し広めな通路に入ると両側に椅子が並ぶ
通常の謁見を待つ者は椅子に座って順番を待つ場所だね
今回は王宮が招いた賓客扱いなので通路横にある扉を抜け個室へ
窓から中庭が見える以外は四人掛けのソファーがローテーブルを挟んで対面で配置されただけの応接室だね
「お時間までしばらくこちらでおまちください」
と礼をしてクエが部屋を出て行く
しばらくすると
「失礼します」
とナタリーがコヒーを持って来てくれたよ
”なんかこうやってナタリーに合うと不思議な気分だよ”
「本当ですね何かありましたら呼鈴で御呼びください」
ナタリーも部屋を出たので七海と迎えが来るまでテラスでの会話を再開
”ダブネスは私を認識すればすぐに創造主とわかるから”
「それなりのアクションがあると」
設定上は無敵ヒロインの「まどか」だけどダブネスからしてみれば完全回復をすれば脅威ではない
私の文才では物語根本の破壊になるので書けなかったがダブネスにしてみれば「目の前を飛び回るハエ」程度の存在な「まどか」に死鬼を使って弄んでる復活したら出来るだけ屈辱的な方法で破滅させるために
まどかは自分だけでダブネスに勝つことが出来ないので仲間を作りると流れに切り替えた辺りから周辺の作り込みを丁寧にせず物語を進めてきた歪みを解決できず私は物語の先を紡げなくなっていた
私を認識したダブネスは私の脅威度を探ろうとするだろう
既に創造主としての力は失われ今紡がれてる世界を自由に変える力が無い事はわかっているだろうけど
私は出会った死鬼を通してダブネスにメネシスと自由に行き来出来ることを隠そうとするがバレる展開を演ずる
回復に必要な憎しみの力を効率よく得られるガイアを私との闘いで壊したくないダブネスはメネシスで手を出してくるだろう
ダブネスの支配欲対象はメネシスであってガイアがどうなろうと気にはしないだろうけど完全回復まではガイアは今のまま存在してもらわないと困るダブネスだからね
物語では曖昧にしか書いてなかったから細かい予想は出来ないけどダブネスには数人の懐刀の臣下がいて伝説の龍との闘いにも一緒にいた
そして瀕死の重傷を負いながらも一緒にガイアに落ちたはず
ダブネスほど強大な力ではないので完全回復してダブネスの完全回復を待ちながら傍らに控えてる可能性は大きい
私の力を探るのに臣下をメネシスに送り込んでくれれば大成功
順次送り込まれる臣下を倒すのにメネシスの人々を鼓舞し導き自分たちの手でも伝説の脅威を排除できる力を手にいれてもらい伝説の龍とか私がいなくても保てる世界にする
最終的には対ダブネスは私達が強力な助力をする必要はあるが「あくまで助力で主は私達」とメネシスの人々で倒した歴史が完成すれば引退の刻だね
「かなり強引な部分を感じるけど物語を生み出したで彩美だから組立られる流れだね」
”まあ駄目なら次の手を考えるけど”
「次の手?」
”ダブネスの隠れる場所を見つけて「ほら臣下をメネシスに送り込めや!」ってピンタしに行くよ”
「強制力を発動とかも楽しそうだな」
”世界は無敵チートの御都合主義だけは私に授けてくれた”
「それを何の為と彩美は思うの」
”今はまだ理由はわからない・・・その答えを探すのも無敵チートを与えられた私に課せられた因果の一つなのかも”
扉がノックされる音が室内に響く
扉が開きクエが一礼をし
「謁見室までご案内いたします」
応接室を出て椅子の並ぶ通路突き当りの謁見室と思ったら突き当り横の扉に案内される
部屋は豪華な木製テーブルが部屋の中央にありテーブル奥側にはロココ調の豪華な椅子が二脚で既にサタンとルシファーが並んで座ってるよ
手前側には高級感漂う木製アームチェアが二脚
テーブルの幅は六脚位は椅子が並べられる幅があるね
左右の壁際にはケンとナンシーの他にも貴族服に身を包んだ男が数人立ってるね
部屋の奥は一面が窓になっておりサタンとルシファーに後光が差したみたいになってるよ
この部屋は儀典的な謁見でなく実務を兼ねた謁見時とか親しい仲の相手と形式に拘らないリラックスした謁見をする時に利用されるよ
まあこちらの謁見室になるのは予想してたけど
形式と言え創造主を跪かせる行為にルシファーは耐えられないだろうしね
テーブル前まで来ると
「本日は急な御招待に応じて頂きましてありがとうございます」
なんかルシファーとこういう会話をするのは不思議な気分だね
”お招き頂きありがとうございます”
クエが椅子を引き着席を促す
席に座ると
「まあ今更形式的な会話も落ち着かないのでいつものままで話そう」
”そうだね”
「書記官は適当に体裁を整えた謁見録に仕上げてくれ」
壁際に立つ一人が
「承りました」
「ここに居る者は今後に必要であると考え彩美と七海の状況は伝えてあるので細かい事は気にしないでよいぞ」
壁際の男達が一人ずつ自己紹介をしてくれる
元は黒髪であったであろう肩までの灰色の髪を後頭部で纏めた小柄で皺くちゃな高齢の男
「書記官を務めておりますウエスティンでございます」
書記官の隣には短髪の黒髪で背が高くかなり恰幅のより男
「国軍幕僚代表官のサーベでございます」
その隣にはリガヅイ卿でさらに隣にケンとナンシー
私達の後方扉横には儀典官のクエ
「今回は正式な記録を残す為に堅苦しい場所になるが気楽にして欲しい」
扉が開き押し車を押したナタリーが部屋に入って来る
テーブルにグラスと赤ワインのボトルを移しグラスにワインを注ぐ
立ち組は押し車より既にワインが注がれたグラスを手に取り元の場所に戻る
「まずは創造主を王宮に無事御迎えで来たことに乾杯」
皆静かにグラスを掲げグラスのワインを飲み干す
しかしサタンは一言も話さない置物になってるね
そこから話された内容は
・反逆貴族達討伐への功績として私達に騎士爵を授与する
これは正式な貴族として国軍幕僚会議等に参加出来る立場を用意してくれたね
・冒険者ギルドの決めた範囲で国軍は私達へ優先的に協力をする同盟関係を締結
冒険者ギルドの依頼だけでなくダブネスや配下が手を出して来た時に国軍を指揮する大儀名分が出来たね
これだけでも現時点での目標に十分だったけど
・巡回使として他国に行った時の身分保障
これは確かに助かるよ闇の国の巡回使となれば訪れた国で必要に応じて王に謁見とか申し込めるしね
金のコインが二枚づつ私と七海に手渡される
「騎士爵と巡回使の証だ」
そして一枚の紙にサタンがサインをし渡される
「これを冒険者ギルドに提出すれば国軍とギルドの協力関係が締結される契約書だ」
謁見の内容は全て終えた
そして私は今後の計画を伝えた
ルシファーと私達以外は顔面蒼白になったよ
「既にガイアではダブネスの手下が出現してるとは」
サーベが唸り声のように呟く
”厄災を招き込む状態になり申し訳ないがダブネスの送り込む配下を闇の国の力で倒すことで人々は恐怖の呪縛から解放され人々が協力すれば倒せる相手になる”
「遥か昔に刻まれた忌まわしき記憶の払拭が全ての始まりになると」
流石だよ書記官だけあってウエスティンの纏めは
”そうだ!反逆貴族とか強力した隣国はどうなったの?”
「反逆貴族達は取り決めに従い爵位と領地を剥奪し一族処刑」
この設定は私が決めた事だから惨いとか絶対に言えない
「隣国に関してはどの国も一部貴族暴走とか軍部暴走と王室の関与を否定して多額の慰謝料を支払う事で手打ちを申し出ている」
”まあ絶対に王室が関与しなければあの人数は動かせないけど”
「わかっておるが関与した国に報復戦をしても得る物は少なく無駄な戦力消費になるので今回は手打ちを受けるが派兵した兵が一兵も戻らない状況に次は無いことを反逆に協力した国々も理解しただろうしな」
最後にケンから第一師団の訓練所とかの施設に自由に出入りする許可をもらったよ
謁見が終わり帰りの馬車は遠慮させてもらい冒険者ギルドまで散歩気分で歩くよ
”かなり楽な形式だったけど王宮ってだけで疲れたよ”
「なんていうか独特の空気感だったよね」
なんて雑談をしながら歩いて冒険者ギルドに到着だよ
冒険者ギルドに入るとミナイにギルマスと会いたいと伝える
すぐに二階のギルマス部屋に呼ばれたよ
挨拶をし応接ソファーに促されて座る
サタンの署名が入った契約書をリナに渡す
「なんか展開が早すぎてですが闇の国国軍と協力関係締結とか御二人が来るまでは想像も出来ないことでした」
”これでまだ形だけだけど準備だけは出来たよ”
リナにも今後の計画を伝えたよ
流石だよ計画を聞いても顔色一つ変えないリナの胆力
「ギルドはどのような位置で関わる計画ですか」
”事が起きたらギルド依頼として共闘する冒険者を全国から集めてもらいたい”
金級以上になれば王都常駐国軍の一騎当千兵と同等か以上の戦闘力となる
ダブネスの手下と言えども雑兵では無駄死にしか待ってない
主戦力は王都常駐国軍と金級以上の冒険者で手下に挑む
貴族の保有する軍と銀級以下は手下がメネシスに戻ってくれば必ず集めるであろうモンスター達と対峙して主戦力が戦いに集中できるようにする
「メネシスに存在する異形のモンスターはダブネスが産み出した伝説は本当だったのですか」
”ダブネスがガイアに落ちたので今は各々の欲求に従い生きてるがダブネスの力がメネシスに戻れば魔王群として秩序を取り戻し従うことになるよ”
「かなりの犠牲は覚悟ですか」
”人々が協力すれば魔王群でも将来現れるかもしれない強力な人類の敵でも倒せると成らなければいつの日かメネシスは滅びる”
「御二人がいれば・・・」
「永遠の命を得たと言え無限の刻を守護神として生きるのは心が耐えれない」
”そして私達が守護神となってしまえば事実上は世界の支配者で疲れ果てた時に心が壊れ世界を破滅に導き心中する可能性すらある”
「だからダブネスを人々が自力で倒す事で人々が目覚めたら私達は未開拓の辺境に移り住み流れる刻を見守るだけの存在になりたい」
「わかりました力を手に入れる為に犠牲は必用とのことですね」
”本当は誰も犠牲にならないのが最高だけど今の私に考えられる範囲では無理でね”
「ただここまで話が大きくなると総本部ギルドマスターにも話をしないと」
”年明けの光の国への新年挨拶団に同行して光の国へ行く予定なので細かいスケジュールが決まったらアポをお願いできるかな”
「はい御準備させて頂きます」
リナとの会話を終え受付フロアーに行くとミナイとジルが待ってたよ
「ミナイも今日は早上がりなんで四人で少し早いディナーにいかないか」
”いいねえ!”
「何か食べたい物あるかい?」
”何かある七海?”
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「じゃあアノ店でいいかな」
ジルを先頭にメインストリートを西門方向に向かい歩くよ
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