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第一章~冒険者への旅立ち~

第40話~指名依頼~

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お願いしたワインも届いたので時計と一緒にテラスのテーブルに準備だよ
七海がグラスにワインを注いで渡してくれる
椅子を月に向けて並べて七海と並んで座る
軽くグラスを傾けて乾杯だよ
一口飲んで時計を見ると十一時四十分少し前
もうすぐだね
七海が私側にある手を伸ばし私の手を握る
柔らかくて温かくて気持ちいいよ

言葉は要らない今は握った手から伝わる七海の感覚だけで
一息にグラスを飲み干し刻が来る心構えをする
七海がワインを注いでくれる
時計の時間が十一時五十分を少し超えたね
さあそろそろネックレスのアクアマリンに魔力を込める
七海と私の首元が徐々に蒼く光り出し闇を照らす

”美香!”
「本当に彩美ちゃんの声が聞こえる!」
「最初は驚くよね」
「ねーさんの声もきこえるよ!」
”時間が少ないのでまずは必用連絡事項ね!”
少し予定を変えて二十日に帰るけどイブまでは出勤とクリスマスにメネシスにを伝えたよ
「そうだね!一周年をマキと企画しとくよ~」
「そこまでは・・・」
「駄目だよ!お店を代表する二人の記念日なんだから!」
”お店も楽しみだけど美香に逢えるのが本当に楽しみだよ”
「うん!私も!」

「でぇそっちはどうなの?」
ギルド登録から白金級とかジルの話をしたよ
「なんか計画も順調だし楽しそうだね!」
”美香が一緒なら・・・もっと・・・”
「永遠の刻なんだし瞬きみたいな三年半でしょ!少しだけ待ってね」
”うん”
そうなんだよね一日一日を目一杯で生きてるけど・・・この刻に終わり無いんだよね・・・私は・・・いつまで頑張ればいいのかな・・・
「いま彩美ちゃんが考えてること分かるよ」
”えっ!?”
「ねーさんも私も一緒にいる!一人で頑張らなくていいんだよ!」
「刻の始まりは一人だったけど一人の刻は終わり新たな扉が開き私も美香も一緒になったんだから」

”まったく・・・ねぇ・・・”
涙が止まらないよ・・・・なんで二人は私に・・・私は二人に何が返せる・・・
「彩美・・・貴方は・・・」
力強く抱きしめられ七海の胸に私の顔が押し付けられる
「貴方は主人公なの私と美香を異世界に呼び出した」
「苦しい事は三人で分ければ三分の一で楽しい事は三人で楽しめば三倍だしね」
まったく本当に幸せだよ私

横目で時計を確認すると十二時五分だね後一~二分だけだよ
「二十日は何時位に戻って来る予定かな?」
”十時位を考えてるよ”
「オッケー!」
そろそろ会話にノイズが混じり始めたね
”逢える日を楽しみにしてるよ”
「うん」
「私も楽しみだよ」
「ねーさん換気と掃除はちゃんとしてるから安心してね」
三人大爆笑してると念通が届かなくなる

七海の胸からゆっくり顔を離しグラスのワインを一息で飲み干す
七海が無言でワインを注いで私を引き寄せ抱きしめる
今宵はこのまま七海の胸に抱かれて七色に光る巨大な満月を眺めワインを供に深けて行ったよ

うーん
この顔に感じる感触は七海の胸だね
昨晩はワインで心地よく酔いが回り抱き締めてくれる七海の温もりが心地よくってテラスの椅子で寝落ちしちゃったから七海がベッドに運んでくれたんだね「おはよう」
”おはよう”
あっ服も寝着に着替えてる
”ありがとう”
これだけで七海はわかってくれる
「さあ風呂入って朝御飯だね」
スルスルと服と下着を脱ぎ一糸纏わない七海
私も脱ぎ終わるとクローゼットからタオルを準備した七海と風呂場へ
テラスに出ると朝日に輝く七海の肌が眩しいよ
何回何十回何百回見ても飽きる事が本当にないね

髪と体を洗い湯舟へ
時間的にでナタリーが気を利かせて米酒を持って来てくれたよ
「お上がりになる頃に朝食を御準備しますね」
”うん!ありがとう”
七海がグラスに酒を注いで渡してくれたよ
軽くグラスを傾けて乾杯をして一杯目は一息に飲む
七海がグラスを受け取りテーブルに置くと唇を重ねてくる
唇を割って七海が入ってくる
もう私の体はこの後の起きる事を受け入れる準備で考えるより先に七海を抱きしめる
来たよ脳が白く弾け快感が体を駆け巡り七海を抱きしめる腕に力が入る
あっ薄くなっていく意識と脱力する体

口の中に広がる冷たい感触と唇に触れる柔らかい感覚
ゆっくり目を開けると七海の吸い込まれそうな瞳が目前に
私の目が開くとゆっくり七海が離れる
七海がグラスを手渡してくれる
まだ少し頭の芯に残る微睡を一息に飲み干し追い出す
七海が私の瞳を覗き込む
「戻ったね何回見ても見飽きない吸い込まれそうな瞳だよ」
覗き込む七海の瞳が金色になってる
”力が完全に開放されたね”
「えっ?」

私の瞳に写る金色の瞳を見付け慌てて風呂場の姿見で瞳の色を確認する七海
「これは店に出る時はカラコンが必要になってしまったな」
おーい!そこかい!
”魔力が完全に馴染んで光属性として完全になった証だよ”
「物語には書かれていない部分なのかな」
”属性で髪と瞳の色は決まってるから例外なくね”

風呂を上がり普段着に着替え終わるとナタリーが朝御飯を持って来てくれたよ
「今日はナ国からカボチャが届きましたのでパンプキンスープです」
「ナ国産とは楽しみだね」
朝食を食べていると
「お食事中に失礼します」
狭霧がやって来たよ
「ギルドから託鳥が来ております」
”申し訳ないけど翻訳してくれるかな”
「はい」
託鳥が話始めるけど何を言ってるかさっぱりわからないね
「ミナイさんから指名の緊急依頼が入ったので冒険者ギルドまで来て欲しいとの内容です」
「ありがとう」
”準備出来たらすぐに行くって返信をお願い”

少し手早く残りの朝食を終え冒険者用の服に着替える
全て理解してる七海と私は無言で準備を済ます
出発前に一服する位の余裕はあるので紫煙を巡らす
「はじまるね」
”うん”
口付けを交わして出発だよ

ギルドに到着するとミナイの居るカウンターに行く
「お待ちしていました」
”指名依頼がはいったのね”
「はい」
依頼はリガヅイ卿という王都近くに領地を持つ貴族
リガヅイ家はルシファーの母方血筋で王家からの信頼も厚く王家へ完全な忠義を持って尽くしている

闇の国の貴族でも全家が王都に完全忠誠を誓っている訳ではない
ルシファーが余に永い刻に渡り王宮へ君臨するのを良しとしない貴族達もいる
他国への侵略を絶対にしない事を宣言しているルシファーの元で下級貴族に出世のチャンスは無いに等しい
戦時でもない限り手柄を立て領地を増やしてもらう事や序列を上げるチャンスは難しい
闇と光戦争の時に大きな手柄を立て出世や領地増分の恩恵を受けた貴族も多い
今は光の国と和解を通り越し同盟関係で戦乱は望めない
周辺小国では闇の国に対して一国では絶対的な国力不足で戦乱を持ちかける事も望めない

そしてついに外患誘致罪を考える貴族が現れた
その筋書きはかなり周到に計画をされていて回避の方法を間違えるとルシファーの失脚か失脚を防げたとしても王宮への大きな人心離れは防げず混乱を起こし不満を抱える下級貴族達の大量反逆は防げないだろう
不満を持つ反抗貴族達は長き時をかけ連絡を隠密にとり計画を練った
まず反抗貴族達は成功時に協力国周辺の領地提供を餌として近隣数国の小国を誑し込んだ
誑し込むのに十分な計画を持ち込んで

まずリガヅイ家に対して謀反の動きをありと下級貴族達が連合して反逆貴族軍を組みリガヅイ家領地に対して不意打ちで戦端を開く
反撃するリガヅイ家に呼応するように周辺の小国が数国で連合し隣国軍を組みリガヅイ家の支援に参戦する
これでリガヅイ家の離反は状況証拠で否定できなくなる
母方の生家が反逆者となったとすればルシファーの立場は危うくなる
ここから本当に考えた奴らは性格が悪くて虫唾が走るレベルで悪頭が働く

ルシファーが国王軍をリガヅイ家に送り込む事にした場合
リガヅイ家は王国で最有力な貴族だけあり国王軍主力を持って対応をしなければ長期にわたる戦争に繋がるなる場合がある
王都近距離で起きてる戦争へ不安になった人々が王宮から人心離れをする可能性があるので短期決戦が必要となる
国王軍主力が遠征に出て手薄になった所を隣国軍本隊と反抗貴族軍本隊で一斉に王都へ向かい隙を突き王都を制圧する
リガヅイ家を抑え込み王都に国王軍が戻って来た時に王都は敵軍に制圧されおり強制的にルシファーは退位となり傀儡の国王が据えられる

虫唾が走るレベルなのはリガヅイ家の制圧をした国王軍の反撃開始が早く王都制圧が失敗に終わりそうなれば反逆軍は王都で虐殺と略奪の限りを行い撤収をする
闇と光の戦争でも被害がなかった王都を守れなかったとしてルシファーから王都の人心は離れ退位に追い込まれる
どちらのパターンでも反逆貴族達は有力なリガヅイ家を排して傀儡の王室を建て闇の国を自分たちの思うが儘にする

そして仮にルシファーがリガヅイ家を見捨て王都の守りに専念した場合は作戦自体は失敗だが反逆貴族達からすれば王室の有力な後ろ盾であるリガヅイ家を排除出来たことで次の計画につながる
「他国への侵略を絶対にしない」と明言していたルシファーだが事態がここまでいけばリガヅイ家に協力した隣国へ反撃をしなければ王都の人心は保てないそして戦乱は出世を望む下級貴族の思う刻になる

ここまで詰みゲーをよく考えたものだ
そして計画を事前に全て察知し調べ上げるルシファーの情報網も凄すぎる
過去に同じような計画をした輩もいるが全て種の段階でルシファーの長い腕が潰して来た
今回に関しては切り札・・・そうジョーカーな私達二人の為にあえて潰さずに成熟させた反逆計画

それら全てを承知した上でリガヅイ家から依頼は「反逆の汚名を被せに来る反逆貴族軍と隣国軍を領地到着前に撃退し撤収させる」そして「王都を狙う隣国軍本体と反逆軍本体を国王軍と共に撃退する」だね
これでリガヅイ家の謀反疑惑もなく王都を含め国民には隣国が連合軍を組み反逆貴族と共謀して侵略してきたので反撃して追い返したで片付く
ルシファーのことだから既に反逆貴族達が言い逃れ出来ないレベルで証拠は確保してるだろうし事後は反逆貴族を処分して全て終わりってね

貴族の独自軍隊は領地の大きさによるが通常は二百人程度なので王都侵略隊を組むとなると多くても半数までしかリガヅイ家には向けられない
反逆貴族の六人は特定できているのでリガヅイ家へ向かう反逆連合軍は隣国軍と合わせ予測として五~六百人程度
リガヅイ家は大貴族に分類され独自軍隊は約三百人なので街を守る城壁がない貴族領地であれば戦力比は約二倍で十分に短期間で制圧可能な計算は正しい
依頼には絶対に書かれないが「ルシファーより無敵チートの私達なら余裕で撃退できるから依頼を出せ」があるけど建前としては「三百人の盗賊団を十数分で殲滅した実績」から少人数で隠密に対応出来る冒険者として指名だね
仮に完全撃退を失敗しても反逆貴族軍の大幅な戦力減は見込めるので隣国軍介入前にリガヅイ軍で撃退出来るって依頼書だけを見れば裏に含まれた建前も読み取れるね

「称号級とかで無いと指名されないレベルの依頼ですが御二人であれば余裕ですね」
「まあルシファーが全てお膳立てしてくれた寸劇だけどね」
「その寸劇ってで済ますのが余裕すぎます」
「報酬は二百万Gとリガヅイ家による闇の国での身分保障となっております」
”報酬の金額は気にしないけどが身分保障は色々便利だからいいね”
依頼書に受託のサインをしたよ
「依頼受託の託鳥を飛ばしましたので間もなくリガヅイ卿からの早馬車が到着しますのが準備は大丈夫ですか?」
「前回依頼行くのに買った酒のストックは残ってる彩美」
”大丈夫だよ”
「あの・・・やっぱし・・・ピクニック感覚ですかあ」

早馬車の到着までギルド酒場でビールを飲んで待ってようね
ゆっくり昼飲みを楽しんでいると二時間を過ぎた頃に冒険者ギルドの前にリガヅイ家の紋章が左右ドアに入った六頭立ての駅馬車が到着したよ
このタイプなら整備された街道であれば歩く速度の倍以上は余裕で出るよ
「おいリガヅイ家の馬車だぞ」
「リガヅイ家からの依頼なんてあったか?」
「何があるんだ?」
私達が馬車に近づくと御者がドアを開けてくれたので乗り込むよ
白金級の私達が関連したとわかり騒めきは一旦納まる
馬車が出発した後は賑やかになる事は間違いないけどね

馬車が動き出すとポーチから赤ワインのボトルを取り出し七海と回し飲みを始める
あっ携帯用のワインボトルはクリップボトルだからコルク抜きと栓抜きは不要だよ
このタイプの馬車の客室は個室になっていて御者に気を使う必要がないのでいいね
「思ったより揺れないね」
”客室内は空間制御で制振されてるね”
「流石貴族の馬車って感じだねえ」
王都内は人の歩く速度に合わせて安全確保だったけど王宮を通過して南門を抜けると最高速でリガヅイ家の領地に向かい出したね
馬車は激しく揺れ景色が流れて行くけど空間制御で客室はほとんど揺れないので快適だね
南門を抜け南街道を少し走ると東街道に入ったね
王都の東側は海が入り込んでるので王都東側に向かうには一度南に迂回が必要なんだよね
設定では三十リーグ(約三十キロ)なので早馬車なら二時間の距離だね

ワインボトルを回し飲みしながら寄り添う七海の温もりを楽しむよ
「いよいよ本格的に始まるね」
”まだ序章だけど物語にない世界が始まるね”
「怖い?」
”七海と一緒なら怖い物なんてないよ”
「私は彩美と一緒でもメネシスの激辛料理だけは怖いよ」
”あは!それは私も一緒だよ”

気が付くと車窓は森から開けた草原になってきたよ
ちらほら畑や数人が暮らす大きさの家が見えるね
左の車窓に海が見えてきたよソロソロ到着だね
土の街道から石畳へ馬車が速度を落としたよ
両側には一階にお店が入った二から三階建ての建物
通りには溢れる程では無いけど人が行き交ってる
ここの通りはリガヅイ卿の領地中心街メインストリートだね
メインストリートの中央辺りで右の通りに曲がると正面に石塀で囲まれた豪邸が見えて来たね
鉄製の門前に到着すると衛兵が門を開ける
そのまま百メーター位真っすぐ芝生の中に敷かれた石畳を進むと正面に噴水が見えて来る
噴水の横を通り抜けると豪邸の正面玄関に到着

御者がドアを開け私達を先導して数段の階段を登り両開きの大きな木製扉の前まで来ると扉が開きメイド服姿の若い女性が待っていた
「御足労ありがとうございます主人が待っておりますので」
と先行して案内してくれる
典型的な中世の豪邸だね
扉を抜けると広いエントランスになっており両脇には階段があり二階は建物を一周するキャットウオークになっているよ
多くの扉が一階にも二階にもあり案内されたのは左側階段奥にある扉
メイドがノックをし扉を開ける
部屋は中央に四人掛けのソファーが向い合せで間にローテーブルだけの応接室だね
すでに扉から正面のソファーには肩までの黒髪を中分にし中世ヨーロッパ風の貴族服を着た二十歳位の男性が待っていたよ
左手首に銀乃剣バングルをしてるということは覚醒してるから見た目と歳は一致しないね

「リガヅイ家当主のアオイ・リガヅイです」
立ち上がり挨拶をされたね
”白金級の彩美です”
「同じく七海です」
促されソファーに座る
すぐに先ほどのメイドがコーヒーを持って来たよ
儀礼的な挨拶を済まし本題へ
「ルシファー様からすでにお話を聞いてると思われますので説明は不要かと思いますが」
”状況の把握は出来ているが一つだけ質問があります”
「何でしょうか?」
”こんな危険な状態をかえりみず今回の件にのってくれた理由を知りたい”
「彩美様がガイアに一時的に戻られてる間にルシファー様からお話がありました」
仕込みがすごいなルシファー
「御二人の実力はルシファー様を遥かに凌駕してるので失敗は絶対にないとの話で私も国の発展でなく己の名誉のみ求める貴族達には辟易しておりましたので協力を受け入れました」

その後は現状の説明を受けたよ
密偵を放ち反逆貴族軍は南に十リーグの街道を少し外れた岩場の中に宿営地を作り続々と兵が集結している事は把握している
リガヅイ家を支援する振りをする隣国混成軍も同じ宿営地で待機しており反逆貴族軍が攻め込んだら背後を突きに来る準備をしている
夕方には反逆貴族軍が揃い日没後にリガヅイ家領地に向かってくると予測される
数は反逆貴族軍が五百名で隣国混成軍は百名程度
まあ隣国混成軍はすぐに反逆貴族軍に押し返された体で反逆貴族と隣国混合の本軍と合流して王都に攻め込む手はずだね

「まあ三十分は必用ないね」
”うん”
「合計六百名を相手に緊張感一つ無いとは本当に無敵チートなんですね」
”今回は死体が残らなくてもいいかな?”
何の話?って顔になるリガヅイ卿だよ
「彩美が魔法を使うと手加減しても強力過ぎて死体も残らず霧散しちゃうんで」
「そういうことですか今回は鷹目の使える密使が後日に反逆貴族達を追い詰める情報を集める為に観察しておりますので問題ないです」
”じゃあ馬を用意してもらっていいかな”
「すでに御準備してあります」

既に日が傾き始めたので馬に乗り反逆貴族軍の野営地近くまで全速で行く
ありがたい直径八百メートルくらに纏まったサイズの野営地だよ
既に反逆貴族軍も隣国混成軍も終結を終え隊列を編成し始めてるね
”行くよ!”
「うん」
物理魔法結界を直径一キロの最大サイズで野営地を覆うように張ったよ
これで兵達は逃げれないし私達の魔法が結界の外に迷惑を掛ける事もないね

二人でおしゃべりをしながら野営地に歩いて行くよ
見張りに見つかった
「何者だ!」
”デートの邪魔しないでよ”
「こんな所でデートなんか信じられるか!!」
問答無用と見張りと付近にいた兵が斬り掛けてきたね
私は金乃剣を抜き袈裟切りにする
不意打ちで全滅させてもよかったけど「死ぬ理由」くらいは伝えてあげないとね
「反逆者には死のみ!」
七海が魔力を込めた声を上げ野営地全体に響かせる

野営地全体が一気に騒がしくなる
「二人で数百人を相手とか気が触れてるのか?」
兵達が一斉に斬り掛けて来る
「魔矢」
腕より太い数十本の漆黒矢を水平方向に拡散させて放つ
「光矢」
七海は普通サイズの光る矢数百本を水平方向に拡散させて放ったよ
敵軍の先頭集団後ろにある岩場に当たるまで矢は敵をなぎ倒して行く
漆黒の矢が直撃した者は霧散し矢が掠った者は半身を吹き飛ばされ崩れ落ちて行く
光る矢は命中した場所に拳大の穴を残し貫通し続けて行く
矢は先頭集団後ろの岩場を吹き飛ばし砕ける
砕けた矢の破片は岩場後ろに居た集団の頭上から降り注ぎ肉体を貫通し地面に当たり霧散する
矢の隙間に上手くいて被弾を逃れた者もいるが初撃で二百人は霧散か穴だらけになったね

正直グロい光景だよ
百人位は霧散したけど残りは穴だらけだったり半身がない死体として地面に転がってるからね
地面をよく見ると拭き出した血と細かい肉片が満遍なく飛び散ってるしね
でも七海も私も何も感じないよ成すべきことの為であれば
残された反逆兵の半数はコチラに向かってくるけど半数は逃げに走ったね
魔矢と光矢で面制圧をしながら撃ち漏らしを剣で斬り反逆兵を追い詰めて行く

結界で外に出れない事を理解した兵は死ぬ気で斬り掛かってくるか少数だが武器を捨て命乞いを始める
反逆者には死のみ!も私が決めた設定だから命乞いは無意味だよ
地面に蹲り手を合わせ助命を求める兵を無言で斬り何の感情もわかない自分が少し怖いとか思ったけど
ジェノサイドが終わり結界を解く
鷹目の気配を探しコチラも鷹目で密偵を確認する
ああ予想通りの二人だね

「おいおい六百人を十分でとか化け物かよ」
「ソイ!ルシファー様が敬う御二人に不敬だぞ」
「すまないラー余に驚き過ぎて聞かなかったことにしてもらえると助かる」
「今回に限り私も口から出そうになったのを飲み込んだから聞かなかったことにしよう」
「ありがたい」
ソイと呼ばれた男は青髪にターバンをして白い肌の三十歳位なナンパ師感が漂う色男
ラーは腰まである黒髪に薄い茶褐色の肌で二十半ば位な触れるだけで切れてしまいそうな鋭い顔をした美人
二人の正体はルシファー直属の密偵だけど普段は巡回使として国内を各々の判断で巡ってるよ必要な時には旅人として国外もね

ポーチからワインボトルを取り出し一息に半分飲むと七海に手渡す
七海も残りを一息に飲み干す
「さっ仕上げに行こう!」
”おー!”
さあ馬を駆りケンとナンシーに合流しに行くよ!
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