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第一章~冒険者への旅立ち~

第38話~復讐の意味は~

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額に感じる柔らかい感触
顔に感じる温かく柔らかい感触
このまま永遠に溺れていたいよ
わかっている今私は七海に抱きしめられ胸に顔を埋め額に口付けをされている
この時間に溺れたい
でも片時以上の刻は全てを終えるまで許されない望み今の私には

私が起きたのを感じ額から離れる唇の感覚
もう少し・・・
「おはよう」
”うん”
闇に落ちる前に抱き締めた腕で七海の背中を優しく撫でる
「あっ・・・」
七海の体に緊張感が走る
細く小さい囁きが聞こえる
「今日は私だね」
そうだね
出来るだけ優しく触れるだけで少し痙攣して壊れそうだよ
七海を御姫様抱っこして東屋の湯舟まで行く
私が歩く振動だけでも何回も体が硬く突っ張る七海だよ

いつもと逆で私が七海を洗い場の椅子に座らせ掛湯をして湯舟へ
「初めてだよ腰に来た朝なんて」
”じゃあ祝い酒だね”
呼鈴を鳴らし来たナターシャに白酒をお願いする
まあナターシャは驚きもせずに「流石に今日はゆっくりですね」とかさ
白酒を口に含み七海へ口付けをして流し込む
ゴクンって動く喉仏の動きが気持ちいいよ

「やっぱし聞かないんだね」
”今以上何が必要!”
「はははは天然と見せてるけど・・・これも彩美の決意なのかな」
鈴を転がしたようで気持ちい笑い声だよね
”深い意味は無いよ七海が望んだら全て答えたいから”
「ありがとう」
”というか答えはもらってるよ初めての夜に「初めて何も考えずに身を任せられた」ってね”
「それで納得してくれたんだ」
”男の時は何をすればいいか本能でわかったよ女になり七海に何をすれば悦んでもらえるか正直わからなかった”
「女としての手解きを終え私が身を任してみたくなった」
”でもそれだけじゃ無いのもわかるけど何かはわからないど何か七海の中で気持ちの整理がついたのかなって”

「そこまでわかるか流石だね」
”先生が最高に素晴らしいのでね”
「ずーっと復讐を果たすことしか考えず果たした後は虚しさだけ残り本当に正しかったかが心に引っかかっていた」
”ジルを見て何かを感じたのね”
「ええ娘の復讐のために相打ち覚悟で自分の存在すら無くなる事も厭わない姿を見てね」
酒を一口飲み一息いれる七海
「私は彩海の無念を晴らすために復讐をしたと思っていたけど本当はあの時に彩海を守れなかった自分への恨みを晴らしたかっただけって気が付かさせてくれた」
”ジルは娘を守れなかった自分自身を恨み続けていた”
「そう復讐は手向けでなく自分のためだったって気が付いたら虚しかった理由がわからなくなってさ」
”復讐が終わっても亡くなった者は帰ってこないが虚しさの始まり”
「そう復讐は誰のためでも無く自分の為だったなら何て満ち足りた結果だったんだとね」

”復讐は自己満足なんだよ復讐で無くした何かを取り戻すことは出来ないが次へすすむ力にはなる”
「彩美は他の誰かの為でなく自分の将来を切り開く為に復讐を果たしたから言える言葉だね」
”ジルは後悔したま刻を過ごし無念を残したままの死でなく後悔を晴らし充足した死を選んだ”
七海が私の顎に手を掛け持ち上げ私の瞳を覗く
「まったくメネシスの百日で何をこの瞳は見て来たんだろうね吸い込まれそうだよ」
七海の唇が私の唇に重なり舌が唇を割り入って来る気持ちよい感覚
快楽の渦巻き白くなる思考の縁で・・・
メネシスが私を強くしたんじゃない七海に再び逢いたい七海を守れる存在になりたい七海と永遠の刻を過ごしたい全て七海がくれた力なんだよ
そして今・・・七海と・・・

どれくらい飛んでいたんだろう目を開くと湯舟の縁に座った七海の膝に座る様に抱えられていた
「逆上せてもで少し涼んでいたよ寒くないかい」
寒く無いよ七海の温もりがあるから
酒が満たされたグラスを七海が渡してくれる
一口飲みまだ少し浮世にいる意識を完全に現生に戻すよ
”七海の復讐を聞きたい”
「彩美が望むならだが珍しいな」
”まだ完全に開放されない心を開きたい”
私の我儘だよ理解はしてるけど心では納得出来てない七海を開放したい私の欲求に七海の魂を苦しめることになるかもだけど

「高校を卒業して大学へ進学でなく彩海の復讐を果たす最短の道として水の世界を選んだ」
七海が考えていた復讐は簡単な方法ではなかった
一番簡単な復讐はDV男を殺してしまえば終わる
でもそれでは七海の為に尽力してくれた徳さんの行為を無にするだけでなくDV男に死と言う安息を与えてしまう
何より彩海が自分の復讐で姉が人を殺したとなれば敵を果たしてくれたと喜ぶでなく手を汚したことを悲しむはず

DV男を死より辛い生き地獄へ突き落す方法を高校生活中に色々考えた
だけど高校生が出来ることなんてネットで情報を調べる程度しか出来なかった
DV男の名は田代実で犯行時は二十四歳
既に刑期を終え出所していること
人の命は皆が思ってるより軽い
殺人初犯であれば十年程度の刑期で済んでしまう
田代は満期まで服役したが模範囚になれれば七年程度で仮出所して壁の外に出れる
酔っぱらいが付き合っていた女の子供を蹴り殺した
七海にしてみれば唯一人の代えが効かない最愛の妹を殺された大事件だけど世間からしてみればワイドショーで数分程度報道される日常の一部
田代がSNSで馬鹿自慢でもしていれば多くの情報を手に入れることも出来たかもしれないけどネットをいくら探しても復讐に繋がる情報は集まらない
個人情報の扱いが厳密になり既に刑期を終え世間的には贖罪を済ました人をネタに扱えば逆に訴えられる可能性が高い最近では済んだ事件として逮捕時の新聞記事程度の情報しか集まらないことに七海は焦りを感じた

迂闊に情報を集めてる事を相手に悟られれば対策をされ復讐が難しく成ることは敏い七海はわかっていた
復讐の為に必要な情報を手に入れるには金と人脈が必要と考え選んだのが水の世界
すぐに頭角を現しトップ常連になった七海は十分な資金と人脈を作るのに多くの時間は必用なかった
復讐に関して唯一の味方で協力を惜しまないマキの助けもあり二十五歳の時に復讐の初手として自分の店を出し人気店にする努力をした
何んで初手が店と思うかもしれないけど雇われキャストと人気店のオーナーでは裏の世界との繋がりが天と地の差なんだ
新宿でそれなりの店をやってれば自然と裏世界とも接することになり人には話せないような人脈も出来て行く
七海は日々増えて行く人脈の中で慎重に厳選に厳選を重ね一人の人物と接触することを決めた

接触した男は情報屋と呼ばれる裏稼業を営む中の一人
情報屋は金次第で普通では手に入れられない情報を調べてくれる
噂話を小遣い程度の金額で売る者もいれば身の危険を顧みず犯罪組織に身を投じて情報を集め手柄が欲しい警察関係者や対立組織に多額で売る者もいる
気を付けなければいけないのは逆に情報を売る者の存在
依頼者より調査料を受け取り調査対象者に調査を依頼している存在を伝え二重の謝礼を受け取る不届き者もいる
七海は豊富に出来た人脈の中で近藤(第30話~閑話休題:新宿の掟~に登場)を選んだ
一年以上の時を使い近藤が信頼に足る人と判断して信頼出来る情報屋の紹介を願った
近藤も同じ時間を使い七海が信頼に足る人と判断してたから裏の世界に繋がる危険を考えた上でされた頼みを聞くことにした

近藤の紹介となれば裏切りは許されない
裏切れば近藤の顔そして近藤の後ろにいる組へ泥を塗る事になる
不思議に感じるかもしれないが裏の世界ほど信頼で成り立っているので近藤の紹介に対した裏切りは身を亡ぼすことになる
紹介された情報屋は信頼の対価として多額の報酬を要求してきたが蛇の道は蛇で七海の欲しい情報以上の成果を出してくれた
手に入れた情報は
・田代実は中堅建設会社の田代建設二代目
・彩海を殺した時は創業者で息子を溺愛する父の支援で放蕩の限りを尽くしていた
・殺人をした息子を世間体から絶縁した父だが出所後は資金支援を再開していた
・父は息子の殺人に関する情報をネットに流した者を開示要求で特定し片っ端から潰し情報を削除させることで事件を闇の中に沈め出所後の息子を迎える準備をしていた
・田代実は出所後に母方の姓へ変え名も変名し顔も整形することで人間ロンダリングをしていた
・田代実の新たな名前は藤方豊で新たな顔の写真も提供された
・過去との接触を避ける為に寝城を大坂に移し引き続き父の支援で田代建設子会社の代表になり社交界でもそれなりの地位名誉を得て放蕩の限りを今も尽くしている
ここまで周到に身辺を隠されていては表の世界で相手にバレず調べる事は無理だよ
そこまで息子を溺愛するのかわからないけど父の支援で殺人半グレから世間体的にはそれなりの経営者として社会復帰をしていたとかさ

七海は追加で多額の報酬を支払い田代建設の内情と復讐に繋がる糸口の調査を依頼した
・田代建設は田代実の父が創業し数人の建設会社から二十年で国内中堅の千人もの従業員を抱える会社まで成長させたワンマン企業
・ここまでの急成長にはかなり腹黒いことや脱法をやって来たが創業時から右腕で副社長をやっている弁護士資格を持つ男が全て表沙汰にならないように処理をしてきた
・政治献金や賄賂を巧みに使い入札最低金額を入手して入札を獲得したり随意契約を結ぶことで多額の公共工事を行い会社を急成長させた
・何人か社内で不正を暴き公正な企業として再建する声を上げた者もいるが全員謎の自殺をしている
・同様に不正を暴いて特ダネを狙い取材していた記者は轢き逃げされ死亡している
・謎の自殺し残された遺族や不正を追いかけていた記者の遺族が警察やマスコミに訴え出たが先に多額の賄賂や大手広告主となる事で捜査や世間へ口を封じた
ここまで悪事の百貨店とは七海も予想をしていなかった
情報屋は社長や副社長に自殺した人と記者の詳細な報告書に不正の証拠も色々と入手してくれた

七海は情報屋から手に入れて情報と報告書を見て復讐の方法を考えてる日々をしばらく過ごした
鍵と成るのは副社長と決め作戦を構築していく
手段は考えるとして副社長を篭絡して過去の悪行が間もなく世間に公表される嗅ぐわせをし保身から過去の悪行を全て社長に押し付け失脚させ自分が社長に納まる
社長は巻き込まれた政治家等からの報復で全てを失うだろう謎の死に襲われる可能性すらある
社長が失脚すれば田代実も失脚は間違いない
湯水のように使っていた金も絶たれ田代実は困窮するだろう
困窮したところに元副社長の裏切りを伝えれば短絡的な性格から副社長へ絶対に報復をする
復讐は全てを失い自棄になったアイツならやる事は決まってる
金にも困ってる状態だろうから報復と同時に金も奪うだろうから強盗殺人となれば過去に人を殺している事も考えると死刑の可能性もある
単に殺人で十年位で出て来ても父の支援もなく金の力で抱えていた取り巻きからも相手にされない惨めな生活になるだろう

ザックリとラフは出来上がってきた
鍵と成るのは副社長の篭絡と悪行を世間に公表する人物
世間に公表する候補は最適な人物がいた轢き逃げされた記者の妻もジャーナリストで夫の不審死を今も追い掛けて真相を探している
だけどベテランのジャーナリスでも表世界で殺人も厭わない可能性がある相手では簡単に行動は起こせないでいる
七海は情報を手に入れる為に世田谷で小さな一軒家が買える位の金額を支払った
雇われ時代は月に一千万円を稼ぐのが普通だった時期もある新宿でもトップレベルだから出せた金額
例え蔦があったとしても一介のジャーナリストが払える金額ではない
それだけに得られた情報は詳細で公表されれば隠蔽は不可能なレベルになっている
記者の妻に情報を密かに渡せばアクションなしで世間への公表が可能になるので相手の妨害を防げる
副社長の篭絡はかなりの女好きみたいなので七海は自分の美と魅力を信じて行動を決めた

流石にお風呂でずーっとは逆上せてしまうので場所は部屋のソファーに移してるよ
「ちょっと長話になってしまってるね」
話の途中だけど息抜きでテラスへ出て一服
酒も飲み切ってしまったので追加をお願いして届いたよ
ソファーに戻り酒で喉を潤したら七海が続きを話し出す
「篭絡作戦はここからが大変だったんだ」
”七海の誘惑力でも簡単に行かない難物だったの?”
「違う違うその前だよ完全篭絡には体を武器として使う事は絶対に必要になるのは覚悟してたけど二十後半で処女だったら男はドン引きしてどうなるか」
”あっ!身持ちが硬くて守ってる人も居るとは思うけどこのパターンだと何で俺と?にはなる可能性あるね”
「だからと言って行きずりで誰かと適当に寝てロストして経験を積むなんて絶対に嫌だったしね」
”なんか想像が付いて来たけど・・・辛すぎる”

「辛いと言うか滑稽だったよ道具を使って自分の初めてを自分で奪う姿は」
”復讐の為にそこまで”
「思っていたよりかなり痛くて大量の血が出たのは驚いたよ」
あれ私はそこまででは無かったけど
「後で調べたら三十近くなるとホルモンバランスの関係で膜が硬くなったりする事もあるみたいで納得したけどね」
それから一人で毎晩体が慣れるまで道具を相手にしアダルト動画を見続けてベッドでのテクニックを勉強したとか七海の性癖をしってると地獄の日々だよね
体が慣れ心の覚悟も決まり計画を実行に移したらビックリするくらいスムーズに進んで計画者の七海自身が驚くことになった

高級会員制のバーで飲んでいた副社長に近づき好意を見せると驚くくらい簡単に喰らいついて来た
副社長は七海の虜になり週一~二回は人目に付かない高級レストランの個室で食事をし高級ホテルで夜を共にする
「余計な詮索が入ると面倒だったから店の客にバレると商売に障るのでって人目に付かない逢瀬をお願いしたらイチコロで毎回隠密デートを頑張ってくれたよ」
まあ七海と逢う為だったら頑張るよね
半年以上を逢瀬を重ね副社長の信用を得るまで耐え続けた七海だった
「一度も感じた事はなかったよ嫌悪感を押し殺し感じてる振りに無意味に出す喘ぎ声とか本当に何をしてるんだろうと虚しくなったね」
この頃になると酔った勢いで色々な所業を自慢げに話す時も出て来た
人はさ大きい秘密を抱える程に誰かへ話したくなるんだよ

機は熟したと計画を次の段階にすすめる
情報屋から得た情報を整理して情報と同時に渡された賄賂や買収の証拠を記者の妻に匿名で届く手はずを整える
ここでも近藤にネットの専門家を紹介してもらい多額の報酬を必要としたが絶対に足が付かない方法で準備した情報を記者の妻に届けた
国内の報道関係では握りつぶされる可能性も大きいので数多出来た人脈の中から海外の配信社で信用の出来る記者への連絡先も添えて
記者には記事が届いた時点で七海に連絡が入る約束がしてある

半月後に記者より原稿の写しが届き最終段階へ計画をすすめる
副社長を呼び出し偶然に配信前の原稿を入手したのでと見せる
ここで何処で手に入れたとかの詮索が入るかと警戒をしていたが原稿の内容は過去の悪行を逃げようの無い証拠付きで暴かれておりシグネチャーに書かれた配信社は海外の超大手で今までの様に対策が出来ない事に動揺して入手経路とかを聞く余裕もなかったみたいだね
配信予定日も翌日になっており見苦しいくらい動揺をする副社長
「破滅だ破滅だ」
「まだ打てる手はありますよ」
「どうすれば」
記事が配信される前に記事を内部告発として世間に公表して全てを社長の責任にする
「どうせ弁護士の資格を持ってるだけあって自分が関与した証拠は徹底的に残してないんでしょ」
「あたりまえだ!直接自分の手を汚してまで強欲社長に尽くすほどの義理はないからな」

調査とか提案や買収の計画だけをし実行は全て社長に行わせ決して自分の手を汚さずにお零れの甘い蜜を吸う小物
半年の逢瀬で身に沁みるほどわかっていた七海
副社長の頭はフル回転で保身と危機をチャンスに変える計画を練っていた
七海にしてみれば答えとして何を導き出すかは半年の付き合いでわかっている
(そうか全て社長の独断にして追い出せば会社の膿を出した功労者として次期社長の座を手に入れらる)
考えが纏まりニヤリとする副社長
「社長夫人になる気はあるかな」
完全に七海の手の平で踊る副社長だった

そこからの副社長の行動は早かった
配信予定の記事を持ち七海の紹介する報道関係者に接触する
記事の配信が翌日なので全ての動きが早い
当然接触した報道関係者には根回し済の七海だよ
記事が配信されてしまっては特ダネの価値がなくなるので副社長は夜のニュース番組に出演して自分は被害者の立場で赤裸々に内部告発をした
「理由不明の自殺が続き不審に思い内々で調査を行った結果がこの様な事になり非常に残念です」
とかシレって言うのをテレビで見ていた七海は気が狂ったかと思われるレベルで笑ってしまったってさ

副社長とは内部告発の裏に女の影とか騒がれては面倒な事になるのでしばらく逢瀬を我慢を願った
「全て片付いて社長夫人に慣れる日を楽しみにしてますよ」
と濃厚なキスで副社長には一時の別れを演じた七海
信じた副社長は全て片付くであろう半年後の再会を信じて別れを惜しんだ
「もう二度と逢うことな無いけどね」
別れ去る副社長の背中に呟く七海だった

配信社も予定を変え生放送中に記事を配信し放送では出し切れなかった証拠もあった事で副社長の内部告発は完璧な物になった
賄賂や買収先の政治家や団体名に金額や日付まで入ったリスト
見返りに受注した案件の関係者名まで含まれるリスト
自殺に見せかけ殺された者が多分殺されるだろうと予感して残していたメモは副社長が始末を頼まれ渡されていたが保身のために保存していたのを調査で発見した体で公表をする
藤方豊が社長の実子であり記者の轢き逃げを実行していた証拠を副社長が持っていたのは予定外で驚きだったってさ
不正を暴こうとした記者を轢き逃げに見せ殺した時に奪った書き掛けの記事もメモ同様に副社長手元にあり公表された
多くの証拠と副社長の内部告発で社長は言い逃れが出来ない状態になり押し寄せる報道陣から逃げるため自宅に引き籠る
副社長は関わっていれば身を亡ぼす内部告発を自らするはずが無いという状態を上手く作りだし嵐の外へ

告発の翌日は政界も大荒れになった
リストに名前のあった現役政治家は記者達に追い回され見苦しい言い訳を繰り返す
早々に辞任して逃げに走る者や秘書が勝手にやったと逃げる者
社長に関しては事情聴取に刑事が任意同行の迎えに行くと胸を包丁で一突きにされた嫁が床に転がる横で首を吊り自死していた
スマートフォンには番号非通知の着信が昨晩の生放送中から何十件もあったことがゴシップ週刊誌で記事になり社長は詰め腹を切らされたと憶測を呼んだ
社長に自死をさせる圧力を誰がかけたかの推測は連日ワイドショーでネタとして扱わ続けしばらく世を賑やかにしていた

藤方豊こと田代実は自分が轢き逃げ犯と全国放送でバラされた瞬間に逃亡し身を何処かに隠した
殺人をバラされた田代実のアクションは七海の予想を超えた速度で事態を進展させた
社長の自殺で田代建設としては事件に幕を引き現時点で進行中の工事で買収等があった案件処理等の課題は残っているが世間には共犯者でなく勇気を持って内部告発をし多くの闇を暴いた世間のヒーローになり社長の座も間違いなく手に入る事になった副社長は高揚した気分と七海に逢えない寂しさから連日高級クラブで飲み歩いていた

その一方で手持ちの僅かな現金のみで逃亡をしていた田代実は本来は一番の共犯者が世間で持て囃されているのが許せなかった
彼なりの正義は七海の予想通りだったよ
逃亡資金も尽きかけ仲間と思って頼った先は金のない田代実など相手もせず更に精神を追い込んでいった
計画的に轢き逃げ殺人をして書き掛けの記事を奪った強盗殺人で捕まれば無期か死刑は間違いない情状酌量の余地など絶対に無いのもわかっている
自棄になった田代実の行動は簡単だった「どうせ無期か死刑なら」と裏切り者に復讐をするだけ
田代実が副社長の居場所を特定するのは簡単だったお気に入りの高級クラブ前で待つだけで済む
上機嫌で店から出て来てタクシーに乗ろうとする副社長の胸を一刺しにする田代実
その場からは走り逃げたが数時間後には警察に逮捕された

「店を出してからここまで約二年そして更に二年後に彩美と出会う少し前に田代実の裁判が終わり死刑が確定し私の復讐は完了したよ」
”ごめん辛い話をいっぱい・・・”
「逆だよ聞いてくれたありがとう何かスッキリしたよ」
”七海は復讐だったけど世間的には正体不明の世直し人なんだよね”
「はははは立場が変わって物事をみると面白いな」
何回聞いても気持ちよい鈴を転がしたような笑い声だね
「そうか私の復讐も世の役に立ったのであれば独り善がりの虚しい事では無かったと思えるよ」
七海が唇を重ねて来て又も快楽で意識を飛ばされたよ

ぐ~
自分のお腹が鳴く音で気が付くと七海の胸に顔を埋めて抱きしめられていた
「やっぱし逸材だよ私の重しだった事を一言で解決しちゃうなんて」
”もう逸材攻撃は恥ずかしいから”
「時間も気が付けば昼でお腹もすいたし食事とギルド周りに行くかい」
”うん!なんか時間的にジルがギルドかギルド酒場に居る気がするよ”
「じゃあまずはギルドからだな」

と風呂上がりから下着姿のままだったので外着のワンピースにコルセットをしてギルドメダルを右胸に固定して出発準備完了!
黒泉館を出て寄り添う七海とギルドを目指すよ
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