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~序章~
第21話~七海が死んじゃうよ~
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「どうしましたか?何か思い詰めてる感じですが」
ランチの片付けに来たナターシャに聞かれる
”そろそろアレのタイミングかと思うとね”
「慣れるまでは致し方ないないですね」
”体調はポーションとか使って慣れること出来そうだけど・・・自分の体から出てるって考えれば・・・やっぱグロ”
「慣れるまでお手伝いしますよ」
”でもそれじゃ間に合わない”
「えっ」
”回復が順調なら後数回以内でアレ処理も自立しないと予定通りに進めないからね”
「予定ですか?」
”うんガイアに一度戻り帰って来たら冒険者登録してランク上げとなるとフィールドに長期間出ることも多くなると思うし”
「冒険者をやられるのですか?」
”ポンと救世主ですとか登場しても誰も信用してくれないからね”
「たしかに」
”なら冒険者でランク上げて名前が通るようになってから闇の国にスカウトされたとかで動き出す方がね”
「でも時間がかかりそうですが間に合うのですか」
”まあ戦闘だけなら無敵チートで行けるからランク上げは心配ないけど・・・それ以外はまったくどうなるか”
本当に無敵チート以外の御都合主義がないからねえ心配事は絶えないよ
次回から極力自分で対応する覚悟は決めたけどどうなるか・・・
あっトイレ行きたいな
車椅子に脚部強化で乗ろうと立った瞬間だったよ
”あれ足に力が入る!”
いきなり脚部強化を開放すると転んで痛い目みそうなので少しずつ魔力を抜いて強化力を弱めていく
完全に開放したけど立ってられるよ
試しに歩こうとしたけど膝が崩れて床に座り込んでしまった
けどコレはいけるかもの手ごたえを感じたよ
脚部強化を強めにすると立ち上がる事が出来た
確実に回復してる!
なんか安心感
ってトイレ!忘れてた!やばい!
車椅子を念通で動かして座れる位置に移動して座る
なんとか間に合いました
ベッドに戻り少し回復後の行動を考えているとルシファーが女子会にやってきたよ
「本日はビールとポテトチップスをお持ちしました」
そうポテチが食べたくてレシピも難しくないので伝えたらナタリーが再現してくれたんだ
乾杯をしてポテチをつまむとスナック気分だね
「魔力を弱める訓練方法ですが」
”何か方法あった!?”
「やはり試しながら魔力を絞る練習しかなさそうです」
”やっぱそうかあ”
「文献を漁ったりもしましたが強くする訓練方法は色々あるのですが」
”あえて弱める必要はない”
「ええ拷問とか拘束用の魔装具で魔力を使えなくするのもありますが彩美の魔力ですと抑えきれずに魔装具が壊れるだけだと予想されますしね」
”試してはみたいけど”
「そう言われると思い一つお持ちしました」
金属製の手枷が机の上に置かれる
「これは魔力を使おうとすると吸収して無効化する魔装具です」
”やってみる”
「これが機能するなら応用で発動する魔力を抑制して弱く出来る魔装具が作れる可能性があります」
ルシファーが鍵で手枷を開け私の両手に着けてくれた
があ・・・数秒後にパンと音がして無散してしまったよチリも残ってないし
「魔力を込めるでもなく無意識レベルで発散してる微量魔力が数秒で砕ける通り越して無散とは完全にキャパオーバーですね」
”どれくらいのキャパあったの?”
「私でもキャパオーバーで破壊するには数日は魔力を集中する必要があります」
”やっぱ地道にトレーニングしかないか”
こっちのビールはかなりアルコール度数が高いので数杯でほろ酔い気分で気持ちいいね
”そうそう立つだけだけど部位強化使わなくてさっき出来たよ”
「ちゃんと回復は進んでるみたいですね」
”まだ歩くとかは無理だったけど”
「しばらく停滞してた実感できる回復が出来ただけでもですね」
”何かしら進歩が見えると安心して我慢も出来るよ”
「もうしばらくは喰っては寝てを頑張ってくださいね」
「話は変わりますが冒険者をやるお気持ちは変わりませんか」
”うん”
「闇の国の客将として登場頂いても問題はないと思うのですが」
”それだと箔がないから”
「箔ですか」
”あいつ誰?から私の命令で自在に軍や他国を動かすには不信感が多く信頼を得るのは中々難しいよ”
「私が後見人として保障してもですか」
”いきなり私は勇者登場での御都合主義が発動してくれれば簡単だけど実際は下手をするとルシファーに不満の矛先が向く可能性もあるしね”
「闇の国だけであれば掌握は問題ないと思いますが他国との連携を考慮するとですか」
”闇の国の幹部はルシファーの名で掌握間違いないけど末端まで行くと完全は難しいと思うよ皆出世の夢があるなかで何の実績もない小娘が最高軍事顧問の一人になり自分達の命と魂を賭けた指揮をとるなんてね”
「確かにそうですね私もまだ王宮という籠の中から抜け切れていないですね」
”国家間戦争中とかであれば実績をすぐに見せる事で流れを変えられる可能性は大きいけど・・・そんな私以外に無意味な戦争をすることは絶対に駄目だしね”
・・・・・
”他国にすればもっと不安感が強くて軍事同盟で一緒に行動なんて難しくなると思う”
「それで冒険者ですか?」
”冒険者であれば流れ者でも怪しまれずに始められるしレベルを上げて実績を積んで階級をあげて行けば自然と名は広まる”
「かなり時間を要するかと心配ですが」
”無敵チートがあれば尋常じゃない速度で昇級出来るし昇級が過去にない速度であればあるほど名が広まるのも早くて効果は高いと予測してるよ”
「確かに冒険者ギルドはどの国の王室の影響も受けない独立機関ですからギルドが認定する階級であれば全ての国に対して実力を誇示できますね」
”まあ一番下のレベルから順番にレベ上げしないとだから最低でも一~二年は必用となるけど回り道ではないと確信してるよ”
「その間にダブネスが出現したら・・・」
”死なない程度に痛めつけて準備が終わるまでガイアに戻して再び回復のために寝ててもらう”
「その・・・って・・・普通であれば気が触れたかと考えてしまいますが・・・実際に無敵チートを見てると余裕ですねとしか言えないですね」
”私一人で倒しては駄目だからね英雄や勇者が全てを解決してくれるとなれば人々からすれば楽な世界だけど堕落が蔓延していずれは世界としての意味を持たなくなる”
「国家間で勇者を取り合う無駄な紛争が起き続ける可能性もですか」
”そう・・・そんな事になれば・・・今度は私が存在する意味がなくなるからね”
「わかりました回復しましたら手伝える範囲は手伝わさせてくださいね」
”うんお願い!頼みにしてるよ!”
ルシファーが呼鈴を鳴らす
すぐに狭霧が陶器製のピッチャーを持って来た
「もう少し飲めますよね」
”もちろん”
「ではお付き合いをお願いします」
”よろこんで”
「昨日のクリスマスという良く分からないイベント話の続きをお聞かせ頂けますか」
”まずはクリスマスの意味から・・・・・”
川の字で寝るのも慣れてきたけど真ん中の七海は熟睡できているのかな
朝になる頃には両側から抱き着かれた状態とかで苦しくないか心配になるよ
「暖かくて気持ちいいよ」
と言ってくれるけど苦しくないようにと抱き着かないように気を付けていても七海から抱き着いて来るから意味ないしね
昨晩は朝日出るまで楽しんだので時計を見ると十三時だね
まあ元旦と言っても特にやる事はないのでノンビリで問題はないしね
そっとベッドを抜け出し朝御飯を準備だね
といっても御節は料亭のをお取り寄せを解凍してあるので御雑煮だけの手抜きだけどね
中鍋に水を張って昆布をいれて弱火で温めていくよ
沸騰直前で昆布を引き上げて強火にして沸騰したらこれでもか!って量の鰹節を投入
一煮立ちしたら笊にさらし布を敷いて漉したら出汁は完成
出汁を洗った鍋に戻して薄口醤油と酒で味付けをして塩で味を調えたら汁は完成
一口サイズにカットした鶏胸肉とイチョウ切りにした人参と大根と薄切りの椎茸を入れて一煮立ちしてアクを取って鶏肉に火が入れば準備完了
御雑煮の下準備も終わったのでテラスに出るて紫煙を巡らす
歌舞伎町方向は人もまばらだけど路上で寝てるのが三丁目駅へショートカット路地横のドラッグストア前にいるけど大丈夫かな
花園神社付近はまだまだ人混みが凄くて警察が来て人流整理してるね
さてぇそろそろ起きてくるかな
煙草を消してキッチンへ戻るよ
トースターで丸餅を六個焼くね
出汁は関東風だから王道は四角餅なんだけど丸餅のツルンとした食感が楽しいので今回は丸餅でね
ガチャ
「なんか出汁のいい香りがするよ」
”おはよう”
「おはようございます」
「おはよう」
”もう少しで餅が焼けるからまっててね”
解凍しておいた御節と久保田の一升瓶をテーブルへ
あっ箸と取り皿に・・・気分的に升でいいかなツーしても気にならない服だしねを
テーブルの準備をしてる間に餅が焼けたね
餅は温めて置いた出汁に入れて少しだけ煮るね口当たりがよくなるんだよね
大き目の椀に餅二個と具適量に出汁を張り三つ葉を浮かべたら完成
テーブルに出す前に餅を四個トースターにセットしてね
”お待たせしましたあ”
「「本年もよろしくお願いをいたします」」
七海が升を渡してくれる
「「かんぱーい」」
飲み難いけど正月くらいは気分出さないとね
って美香は器用に上手に飲んでる
七海と目が合うと「負けました」な感じの二人
”あっ脳筋でお酒出しちゃったけど帰宅大丈夫?”
「着物とかあるから帰りはパパが車で迎えに来てくれるから大丈夫!飲むのもOKもらってるしね」
”準備万端だったのね”
美香がお椀の蓋を開ける
「わあ関東風だ!ウチはママが関西出身だから白味噌なんで新鮮だよ」
”餅は関西風に丸餅だけどね”
「丸の方が見た目が可愛いいし私は好きだな」
「わっ出汁が美味しい!」
「顆粒じゃなくてキッチリと取ったんだな」
”味噌汁と違って出汁が味の決めてだからね”
チーン
餅が焼けたタイミングで
「「お替わりお願いしまーす」」
”はーい”
御節をツマミながら久保田を楽しんで新春女子会を楽しんだよ
丁度お酒も無くなる頃に美香のスマホが鳴る
「パパがもうすぐ到着するって」
女子会はお開きにして美香が帰る荷造りをはじめる
しかし三合は確実に飲んでるのにまったく赤くもならず足取りもしっかり
飲むと言っても日本酒を三合も飲んでるとは美香父は思ってないだろうな
今日は花園神社近くは交通整理入ってるので長時間駐車は難しので先にマンション下で待っていると人気の高級ミニバンがやって来た
美香父が降りて来て七海に
「今回も色々ありがとうございました」
「私達も楽しまさせて頂いたので」
その間に美香は荷物を積み込み終えてる
「じゃ!ねーさん彩美ちゃんありがとう!」
「では失礼いたします今後も美香をよろしくお願いいたします」
警察官が駐車の注意に来そうなので手短に切り上げて車が走り出す
部屋に戻ると七海が凄い勢いで抱き着いてくる
濃厚なキスを楽しんでから改めて七海の顔を見ると同じこと考えてる感じね
どちらからともなくベッドルームへ・・・
四日まではベッドでゴロゴロしたりデパートの初売りに行ったりしてノンビリ過ごしたよ
歌舞伎町も二丁目も四日まで休みの店も多いので家で鍋したりも楽しんだね
五日から始業式の前日まではお店に出勤して毎晩浮世を楽しんだよ
始業式からは平日は普通の学生生活で週末の夜は浮世でとの生活に戻ったよ
あっマリッジリングに関しては徳さんの影の力なのか教師陣からは何も言われず事情を知っている女子達と数人の男子から「おめでとう」ってね
他の人に気にしていないみたいでよかったよ
美香は「次はバレンタインイベントデーだ!」って意気込みが凄いけどね
気が付いたら一月も残り数日
美香と駅で別れてマンションに帰ると・・・
マジ・・・何が起きたの・・・鞄を放り出してリビングのソファー前に
「七海!七海!大丈夫!」
七海がうつ伏せに倒れていたんだよ
ゆすったりして意識あるか確認したいけど脳溢血とかだと悪化させちゃうしで少し躊躇
かなり顔が赤いので手をオデコにあてると
”熱っ!”
これはヤバイレベルの高熱だぞ
「あ・・・や・・・み・・・」
蚊の鳴くような声で七海が呼びかけに答えてくれた
”頭痛くない?”
「だ・だ・だいじょ・・・うぶ」
脳溢血は大丈夫そうなんで仰向けにしてソファーのクッションを枕にする
体温計を持って来て測ると・・・やばいぞ四十一度を超えてる・・・あと一度あがったら後遺症でるレベルの重症になっちゃう
(注:人間は体温が四十二度を超えると人体を構成しているタンパク質が熱で凝固して壊死し始めるので死亡する可能性が高い)
慌てて119番して救急車を呼びマキに電話をして事情を話す
マキは病院決まったらすぐに駆け付けてくれることになった
あっ救急車のサイレンが聞こえてきた
ピンポーン
インターホンに出る
「救急隊で何階ですか」
”十二階です”
オートロックを開ける
すぐに玄関に到着してストレッチャーが入って来る
救急隊員が七海の状態を確認するが既に意識はなく高熱で痙攣してる
すぐに七海をストレッチャーに乗せエレベータへ
私は学校鞄と七海の鞄を持って部屋の鍵をして追い掛ける
エレベータの中で七海の手を握る
軽くだけど握り返してくれる
よかった・・・ほんの少しでも意識がある
「七海!もうすぐ病院つくから頑張って!!」
握り返す手にもう少しだけ力が入る
「うん!でも無理しないで!」
握っていた手の力が抜ける
救急車に乗ると救急隊員が初期の診察を始めたので横に居るだけになった
真赤な顔で痙攣してる七海を見てると涙が・・・やばい泣いちゃ駄目・・・嗚咽が聞こえたら頑張ってる七海に・・・
運転席では無線で色々やり取りをしてるのがわかる
「大久保公園前病院が受け入れてくれるそうです」
よかったすぐ近くだからすぐに医者に診てもらえる
サイレンが鳴り救急車が動き出す
マキに電話をして大久保公園前病院と伝える
大久保公園前病院は大久保公園の横にあるかなり大きい病院
歩いても十分程度の距離なので救急車は数分で到着した
七海は病院のストレッチャーに乗せ換えられ緊急処置室に連れていかれる
私は緊急処置室前の長椅子に案内され帰宅した時の状況とか聞かれる
少したつと事務の人が来て入院に必要な手続きを始めたのだけど未成年者保証人になれないとマキを待つことに
関係を聞かれた時に夫ですと言ってしまい状況をややこしくしてしまったよテンパってたなあ
十分後くらいにマキが駆け付けてくれた
「ゴメン店に寄って鍵だけは開けないと駄目だったんで遅くなってしまった」
”お店に居なくて大丈夫?”
「恵子にお願いしてきたから多少の遅刻は大丈夫だよ」
入院に関する手続きで私じゃ駄目な部分をしてくれた
後は救急処置が終わるのを待つしかない
「彩美大丈夫か?」
”うん”
マキが抱きしめてくれる
「大丈夫だ七海は強い子だから」
マキの胸のなかで頷く
三十分くらいで医者が救急緊急処置室から出て来て説明をはじめる
発熱の原因は不明でインフルエンザとかすぐに検査できる病気は全て陰性
血液検査に出したので明日には感染症であれば判明する
解熱剤を投与したが四十度より熱が下がらないの危険な状態は脱してない
帰る前に面会は少し出来るが血液検査の結果が出るまでは感染症の危険があるのでガラス越しになる
検査結果で感染症で無ければ明日からは普通の面会が出来るが時間は十五分
十五分・・・たったそれだけなの・・・
少し待たされると面会準備が出来たとICUの個室まで案内される
入口の横にある窓のブラインドが上がる
”七海・・・”
何本もの管が取り付けられ酸素吸入器が顔の下半分を覆ってる
体の周りには対応処置で氷嚢が何ヶ所かに置かれているのがわかる
鎮静剤を入れてるので表情は穏やかなのが少しだけ・・・本当に少しだけ救いだったよ
少し顔が赤らんでいる以外は普通に寝てるようにしか見えない
”七海・・・七海・・・七海・・・ひっくひっく”
マキがハンカチを出して涙を拭いてくれる
「店では七海は疲れが溜まって倒れたので数日体力回復で入院になり休むで誤魔化しておくから安心して」
”うんお願いします”
数日で回復・・・本当に・・・回復を願うしか出来ない・・・今の私には・・・
「お時間です」
マキはこのまま出勤するからとマンションの前までタクシーまで送ってくれそのまま店に向かった
部屋に入ると二十一時少し前だった
ソファーに座ると駄目だ涙が嗚咽が止まらない・・・
絶対に七海は元気になる・・・って思っても・・・涙が止まらない・・・万が一・・・万が一・・・その時は七海は絶対に望まないだろうけど・・・私は・・・
あれ・・・ここ何処?
石造りの部屋
部屋の中央には大き目のベッドがあり若い女性がクッションを背中に入れ上半身を起こし窓の外を眺めている
部屋の隅に立つ私に気付くと驚く事もなく
「近くにおいで」
暖炉の炎だけの薄暗い部屋ではこの距離では顔は分からない
でも声に聞き覚えがある・・・とっても身近に・・・常に一緒にいる感じのする声・・・誰なんだろう
ベッドサイドまで来ると顔がはっきり見える
”七海!”
薄くほほ笑む
「違うよ私は貴方だよ」
えっ私は貴方なら・・・
”貴方は私”
なんなの・・・でも・・・貴方は私のはずはないよ・・・その豊かな胸・・・女でしょ
「貴方は私なのだから感じられるはず」
この声って私の声だよ
顔がどれだけ似てても声は七海と違うから七海でないとは瞬間的に分かったけど私の声って
「だから私は貴方だから声が同じなんだよ」
心を読まれれる!?
「心を読む必要はないよ私の考えてることを私がわかるのは普通のだから」
これは夢だ・・・間違いない・・・泣き疲れて寝落ちしちゃったんだ
「じゃあ唇を強く噛み締めてみなよ」
そう夢なら痛くない
”痛ぁ!”
我慢出来なく漏れた声と口の中に広がる鉄の味
”げ、現実!?”
「ここは現実でもなく夢でもない」
”なんで私が女体化して私の前に!?”
「本当は色々語りたいけど今の私の魔力では時間が足りない」
”魔力”
「大丈夫だから七海は数日で熱も下がり回復する」
”なんでそう言えるの”
「覚醒に現在のガイアの医療では何も出来ない覚醒が終わって体調が回復するの待つしかないから」
”覚醒って!?”
「貴方には分かるはず私なんだから」
”えっ”
「そろそろ限界だね・・・戻りなさい私・・・居いるべき場所へ・・・七海の帰る場所へ」
意識が闇に落ちて行く
”はっ!”
ソファーで泣き疲れて寝落ちしていたのかな
”痛ぁ!”
唇がザックリ切れてる
血は止まってるけど口の中は少し鉄の味が残ってる
あれは夢じゃなかったの!?
寝惚けて噛んだとしてもコノ傷から考えたら跳ね起きてるよね
訳が分からない
・・・「大丈夫だから」
妙に心に響く
なんだろうこの安心感
駄目だ頭の中がグチャグチャだ・・・
晩御飯食べてお風呂入って寝て寝坊しないで起きて学校に遅刻しないよう・・・
意思と体の反応が一致しない
キッチンに行きジャックとグラスを用意するとグラスにナミナミ注ぎ一気に飲む
グラスとジャックを持ってソファーへ
グラスに注ぎ直して一気に飲む
違うこんな事をしてる場合じゃないんだ
気分を切り替えようとテラスに出て紫煙を巡らせる
あっ着替えるのも忘れて制服のまま
これじゃ本当に不良偽少女だ・・・
テラスで立ってるのもきつくなり灰皿をソファーのサイドテーブルに持込んで砕けるように座りながら紫煙を巡らす
時計を見ると一時半・・・いつもなら七海が帰って来て一緒に晩御飯を食べてる時間
駄目・・・涙が・・・グラスを一息に飲み干す
息つぐ間もなく紫煙を巡らし合間にジャックを煽る
七海はこんなことを絶対に望んでないのはわかるよ
でも・・・無理・・・七海が居ない夜なんて・・・
ピーンポーン
何?
ピーンポーン
もう少し寝かせてよ
ピーンポーン
だから煩い!
ピンポーン
あっインターホンが鳴ってる
慌ててインターホンに出る
「はやく開けて!」
美香!?
オートロックの開錠ボタンを押す
なんで美香!?
そして私は・・・色々思い出してきた
ピロリンピロリン
玄関のドアを開ける
部屋に押し込むように入って来る美香
リビングの惨状を見て呆れる美香
床に転がる数本のジャックの瓶
サイドテーブルで山のような吸い殻が積みあがった灰皿
美香が唇を噛み締め涙目で私を瞳を強く見つめる
パン!
部屋に乾いた音が響くと同時に頬に強い痛みを感じる
「こ・こ・こんなことを七海さんが望んでると思ってるの・・・・」
・・・・・
急に美香が涙目で薄い笑顔になる
「気持ちは分からなくもないよ・・・ほれ制服脱げ!」
無理やり制服を脱がせさせられる
「ああやっぱし皺だらけだよ」
あの上半身はシャツがあるからいいけど下は男が女性下着付けた変態状態なんですが
「アイロンはどこ!」
”ウオークインに入って右の棚に”
「ほらシャワーを浴びて気合入れて酒抜いて来い!」
とバスルームに叩き込まれる
バスルームの時計を確認すると六時半少し前
美香がどうしてここに?
家から来たなら始発でないと
激熱シャワーと冷水を交互に浴びて酒精を追い出し少しずつ素面に戻ってきた
髪を洗い体を洗って流したら・・・ヤバイ着替え持ってきてない
「ここに制服と替えの下着置いておくから」
美香の声が洗面室から響く
髪を乾かし用意されていた皺一つなくアイロン掛けされた制服を着てリビングに行く
部屋は綺麗に片付けて換気もされて煙草の臭いは消えていた
リビングで仁王立ちの美香
「まったく昨日の夜にマキさんから連絡もらって何回電話しても出ないし・・・」
あっ病院でマナーモードにしたままだった
「超絶気になって始発で着て見ればあの惨状だし」
”ひっくひっくゴメン・・・ゴメン・・・七海が・・・七海が・・・”
美香が私の頭を胸に押し付け抱きしめる
「わかる・・・気持ちはわかる・・・でも・・・単位落として高校卒業出来なかったら・・・退院した・・・七海さんが・・・どんな気持ちになるか考えて」
・・・・・
「まあ間に合ったから良しとしよう」
私の嗚咽が止まったタイミングで手を離す美香
”ごめん制服濡らしちゃった”
「後で御褒美と吸っておくよ」
”はい!?”
「やっと笑ってくれたね」
「まだどこも開いてるお店がなかったから」
コンビニのサンドイッチとパックのカフェオレを出してくれた
「とりあえず胃に入れて落ち着け!」
”ありがとう”
晩飯抜いた体に染みる
卵サンドとツナサンドにレタスハムサンド・・・完璧に私の大好きなコンビニのサンドイッチでトップスリー
私が美香の好みを覚えようとしてたように美香も私の好みを気にしていくれていたんだね
やっぱし食欲に負けて一気食い
酒で焼けてた胃が落ち着く
「ほら食べ終わったらメイクしないと遅刻するよ」
寝室から私のメイクポーチを持って来てるよ
鏡の向こうで両肘をテーブルにつけて手の平で両頬を支えて見つめる美香
”あの何か緊張するんですが”
「彩美ちゃんの顔を見ていたいんだからいいの」
毎度の力技ですね
メイクが終わると八時少し前
「ほら遅刻するから出発するよ!」
”えっもう少し余裕あるよ”
「いいから」
マンションを出て明治通りを渡りゴールデン街方向へ
”学校の方向と違うよ”
「いいの」
なんだか訳が分からないよ
でも私の手を掴み引っ張る美香の手の温もりが心地よい
今は美香に身を任せてもいいかな・・・
「私は貴方・・・貴方は私・・・」
突然頭に思い浮かぶが・・・今は思い出したくない・・・美香の温もりに身を任せていたいよ・・・
ランチの片付けに来たナターシャに聞かれる
”そろそろアレのタイミングかと思うとね”
「慣れるまでは致し方ないないですね」
”体調はポーションとか使って慣れること出来そうだけど・・・自分の体から出てるって考えれば・・・やっぱグロ”
「慣れるまでお手伝いしますよ」
”でもそれじゃ間に合わない”
「えっ」
”回復が順調なら後数回以内でアレ処理も自立しないと予定通りに進めないからね”
「予定ですか?」
”うんガイアに一度戻り帰って来たら冒険者登録してランク上げとなるとフィールドに長期間出ることも多くなると思うし”
「冒険者をやられるのですか?」
”ポンと救世主ですとか登場しても誰も信用してくれないからね”
「たしかに」
”なら冒険者でランク上げて名前が通るようになってから闇の国にスカウトされたとかで動き出す方がね”
「でも時間がかかりそうですが間に合うのですか」
”まあ戦闘だけなら無敵チートで行けるからランク上げは心配ないけど・・・それ以外はまったくどうなるか”
本当に無敵チート以外の御都合主義がないからねえ心配事は絶えないよ
次回から極力自分で対応する覚悟は決めたけどどうなるか・・・
あっトイレ行きたいな
車椅子に脚部強化で乗ろうと立った瞬間だったよ
”あれ足に力が入る!”
いきなり脚部強化を開放すると転んで痛い目みそうなので少しずつ魔力を抜いて強化力を弱めていく
完全に開放したけど立ってられるよ
試しに歩こうとしたけど膝が崩れて床に座り込んでしまった
けどコレはいけるかもの手ごたえを感じたよ
脚部強化を強めにすると立ち上がる事が出来た
確実に回復してる!
なんか安心感
ってトイレ!忘れてた!やばい!
車椅子を念通で動かして座れる位置に移動して座る
なんとか間に合いました
ベッドに戻り少し回復後の行動を考えているとルシファーが女子会にやってきたよ
「本日はビールとポテトチップスをお持ちしました」
そうポテチが食べたくてレシピも難しくないので伝えたらナタリーが再現してくれたんだ
乾杯をしてポテチをつまむとスナック気分だね
「魔力を弱める訓練方法ですが」
”何か方法あった!?”
「やはり試しながら魔力を絞る練習しかなさそうです」
”やっぱそうかあ”
「文献を漁ったりもしましたが強くする訓練方法は色々あるのですが」
”あえて弱める必要はない”
「ええ拷問とか拘束用の魔装具で魔力を使えなくするのもありますが彩美の魔力ですと抑えきれずに魔装具が壊れるだけだと予想されますしね」
”試してはみたいけど”
「そう言われると思い一つお持ちしました」
金属製の手枷が机の上に置かれる
「これは魔力を使おうとすると吸収して無効化する魔装具です」
”やってみる”
「これが機能するなら応用で発動する魔力を抑制して弱く出来る魔装具が作れる可能性があります」
ルシファーが鍵で手枷を開け私の両手に着けてくれた
があ・・・数秒後にパンと音がして無散してしまったよチリも残ってないし
「魔力を込めるでもなく無意識レベルで発散してる微量魔力が数秒で砕ける通り越して無散とは完全にキャパオーバーですね」
”どれくらいのキャパあったの?”
「私でもキャパオーバーで破壊するには数日は魔力を集中する必要があります」
”やっぱ地道にトレーニングしかないか”
こっちのビールはかなりアルコール度数が高いので数杯でほろ酔い気分で気持ちいいね
”そうそう立つだけだけど部位強化使わなくてさっき出来たよ”
「ちゃんと回復は進んでるみたいですね」
”まだ歩くとかは無理だったけど”
「しばらく停滞してた実感できる回復が出来ただけでもですね」
”何かしら進歩が見えると安心して我慢も出来るよ”
「もうしばらくは喰っては寝てを頑張ってくださいね」
「話は変わりますが冒険者をやるお気持ちは変わりませんか」
”うん”
「闇の国の客将として登場頂いても問題はないと思うのですが」
”それだと箔がないから”
「箔ですか」
”あいつ誰?から私の命令で自在に軍や他国を動かすには不信感が多く信頼を得るのは中々難しいよ”
「私が後見人として保障してもですか」
”いきなり私は勇者登場での御都合主義が発動してくれれば簡単だけど実際は下手をするとルシファーに不満の矛先が向く可能性もあるしね”
「闇の国だけであれば掌握は問題ないと思いますが他国との連携を考慮するとですか」
”闇の国の幹部はルシファーの名で掌握間違いないけど末端まで行くと完全は難しいと思うよ皆出世の夢があるなかで何の実績もない小娘が最高軍事顧問の一人になり自分達の命と魂を賭けた指揮をとるなんてね”
「確かにそうですね私もまだ王宮という籠の中から抜け切れていないですね」
”国家間戦争中とかであれば実績をすぐに見せる事で流れを変えられる可能性は大きいけど・・・そんな私以外に無意味な戦争をすることは絶対に駄目だしね”
・・・・・
”他国にすればもっと不安感が強くて軍事同盟で一緒に行動なんて難しくなると思う”
「それで冒険者ですか?」
”冒険者であれば流れ者でも怪しまれずに始められるしレベルを上げて実績を積んで階級をあげて行けば自然と名は広まる”
「かなり時間を要するかと心配ですが」
”無敵チートがあれば尋常じゃない速度で昇級出来るし昇級が過去にない速度であればあるほど名が広まるのも早くて効果は高いと予測してるよ”
「確かに冒険者ギルドはどの国の王室の影響も受けない独立機関ですからギルドが認定する階級であれば全ての国に対して実力を誇示できますね」
”まあ一番下のレベルから順番にレベ上げしないとだから最低でも一~二年は必用となるけど回り道ではないと確信してるよ”
「その間にダブネスが出現したら・・・」
”死なない程度に痛めつけて準備が終わるまでガイアに戻して再び回復のために寝ててもらう”
「その・・・って・・・普通であれば気が触れたかと考えてしまいますが・・・実際に無敵チートを見てると余裕ですねとしか言えないですね」
”私一人で倒しては駄目だからね英雄や勇者が全てを解決してくれるとなれば人々からすれば楽な世界だけど堕落が蔓延していずれは世界としての意味を持たなくなる”
「国家間で勇者を取り合う無駄な紛争が起き続ける可能性もですか」
”そう・・・そんな事になれば・・・今度は私が存在する意味がなくなるからね”
「わかりました回復しましたら手伝える範囲は手伝わさせてくださいね」
”うんお願い!頼みにしてるよ!”
ルシファーが呼鈴を鳴らす
すぐに狭霧が陶器製のピッチャーを持って来た
「もう少し飲めますよね」
”もちろん”
「ではお付き合いをお願いします」
”よろこんで”
「昨日のクリスマスという良く分からないイベント話の続きをお聞かせ頂けますか」
”まずはクリスマスの意味から・・・・・”
川の字で寝るのも慣れてきたけど真ん中の七海は熟睡できているのかな
朝になる頃には両側から抱き着かれた状態とかで苦しくないか心配になるよ
「暖かくて気持ちいいよ」
と言ってくれるけど苦しくないようにと抱き着かないように気を付けていても七海から抱き着いて来るから意味ないしね
昨晩は朝日出るまで楽しんだので時計を見ると十三時だね
まあ元旦と言っても特にやる事はないのでノンビリで問題はないしね
そっとベッドを抜け出し朝御飯を準備だね
といっても御節は料亭のをお取り寄せを解凍してあるので御雑煮だけの手抜きだけどね
中鍋に水を張って昆布をいれて弱火で温めていくよ
沸騰直前で昆布を引き上げて強火にして沸騰したらこれでもか!って量の鰹節を投入
一煮立ちしたら笊にさらし布を敷いて漉したら出汁は完成
出汁を洗った鍋に戻して薄口醤油と酒で味付けをして塩で味を調えたら汁は完成
一口サイズにカットした鶏胸肉とイチョウ切りにした人参と大根と薄切りの椎茸を入れて一煮立ちしてアクを取って鶏肉に火が入れば準備完了
御雑煮の下準備も終わったのでテラスに出るて紫煙を巡らす
歌舞伎町方向は人もまばらだけど路上で寝てるのが三丁目駅へショートカット路地横のドラッグストア前にいるけど大丈夫かな
花園神社付近はまだまだ人混みが凄くて警察が来て人流整理してるね
さてぇそろそろ起きてくるかな
煙草を消してキッチンへ戻るよ
トースターで丸餅を六個焼くね
出汁は関東風だから王道は四角餅なんだけど丸餅のツルンとした食感が楽しいので今回は丸餅でね
ガチャ
「なんか出汁のいい香りがするよ」
”おはよう”
「おはようございます」
「おはよう」
”もう少しで餅が焼けるからまっててね”
解凍しておいた御節と久保田の一升瓶をテーブルへ
あっ箸と取り皿に・・・気分的に升でいいかなツーしても気にならない服だしねを
テーブルの準備をしてる間に餅が焼けたね
餅は温めて置いた出汁に入れて少しだけ煮るね口当たりがよくなるんだよね
大き目の椀に餅二個と具適量に出汁を張り三つ葉を浮かべたら完成
テーブルに出す前に餅を四個トースターにセットしてね
”お待たせしましたあ”
「「本年もよろしくお願いをいたします」」
七海が升を渡してくれる
「「かんぱーい」」
飲み難いけど正月くらいは気分出さないとね
って美香は器用に上手に飲んでる
七海と目が合うと「負けました」な感じの二人
”あっ脳筋でお酒出しちゃったけど帰宅大丈夫?”
「着物とかあるから帰りはパパが車で迎えに来てくれるから大丈夫!飲むのもOKもらってるしね」
”準備万端だったのね”
美香がお椀の蓋を開ける
「わあ関東風だ!ウチはママが関西出身だから白味噌なんで新鮮だよ」
”餅は関西風に丸餅だけどね”
「丸の方が見た目が可愛いいし私は好きだな」
「わっ出汁が美味しい!」
「顆粒じゃなくてキッチリと取ったんだな」
”味噌汁と違って出汁が味の決めてだからね”
チーン
餅が焼けたタイミングで
「「お替わりお願いしまーす」」
”はーい”
御節をツマミながら久保田を楽しんで新春女子会を楽しんだよ
丁度お酒も無くなる頃に美香のスマホが鳴る
「パパがもうすぐ到着するって」
女子会はお開きにして美香が帰る荷造りをはじめる
しかし三合は確実に飲んでるのにまったく赤くもならず足取りもしっかり
飲むと言っても日本酒を三合も飲んでるとは美香父は思ってないだろうな
今日は花園神社近くは交通整理入ってるので長時間駐車は難しので先にマンション下で待っていると人気の高級ミニバンがやって来た
美香父が降りて来て七海に
「今回も色々ありがとうございました」
「私達も楽しまさせて頂いたので」
その間に美香は荷物を積み込み終えてる
「じゃ!ねーさん彩美ちゃんありがとう!」
「では失礼いたします今後も美香をよろしくお願いいたします」
警察官が駐車の注意に来そうなので手短に切り上げて車が走り出す
部屋に戻ると七海が凄い勢いで抱き着いてくる
濃厚なキスを楽しんでから改めて七海の顔を見ると同じこと考えてる感じね
どちらからともなくベッドルームへ・・・
四日まではベッドでゴロゴロしたりデパートの初売りに行ったりしてノンビリ過ごしたよ
歌舞伎町も二丁目も四日まで休みの店も多いので家で鍋したりも楽しんだね
五日から始業式の前日まではお店に出勤して毎晩浮世を楽しんだよ
始業式からは平日は普通の学生生活で週末の夜は浮世でとの生活に戻ったよ
あっマリッジリングに関しては徳さんの影の力なのか教師陣からは何も言われず事情を知っている女子達と数人の男子から「おめでとう」ってね
他の人に気にしていないみたいでよかったよ
美香は「次はバレンタインイベントデーだ!」って意気込みが凄いけどね
気が付いたら一月も残り数日
美香と駅で別れてマンションに帰ると・・・
マジ・・・何が起きたの・・・鞄を放り出してリビングのソファー前に
「七海!七海!大丈夫!」
七海がうつ伏せに倒れていたんだよ
ゆすったりして意識あるか確認したいけど脳溢血とかだと悪化させちゃうしで少し躊躇
かなり顔が赤いので手をオデコにあてると
”熱っ!”
これはヤバイレベルの高熱だぞ
「あ・・・や・・・み・・・」
蚊の鳴くような声で七海が呼びかけに答えてくれた
”頭痛くない?”
「だ・だ・だいじょ・・・うぶ」
脳溢血は大丈夫そうなんで仰向けにしてソファーのクッションを枕にする
体温計を持って来て測ると・・・やばいぞ四十一度を超えてる・・・あと一度あがったら後遺症でるレベルの重症になっちゃう
(注:人間は体温が四十二度を超えると人体を構成しているタンパク質が熱で凝固して壊死し始めるので死亡する可能性が高い)
慌てて119番して救急車を呼びマキに電話をして事情を話す
マキは病院決まったらすぐに駆け付けてくれることになった
あっ救急車のサイレンが聞こえてきた
ピンポーン
インターホンに出る
「救急隊で何階ですか」
”十二階です”
オートロックを開ける
すぐに玄関に到着してストレッチャーが入って来る
救急隊員が七海の状態を確認するが既に意識はなく高熱で痙攣してる
すぐに七海をストレッチャーに乗せエレベータへ
私は学校鞄と七海の鞄を持って部屋の鍵をして追い掛ける
エレベータの中で七海の手を握る
軽くだけど握り返してくれる
よかった・・・ほんの少しでも意識がある
「七海!もうすぐ病院つくから頑張って!!」
握り返す手にもう少しだけ力が入る
「うん!でも無理しないで!」
握っていた手の力が抜ける
救急車に乗ると救急隊員が初期の診察を始めたので横に居るだけになった
真赤な顔で痙攣してる七海を見てると涙が・・・やばい泣いちゃ駄目・・・嗚咽が聞こえたら頑張ってる七海に・・・
運転席では無線で色々やり取りをしてるのがわかる
「大久保公園前病院が受け入れてくれるそうです」
よかったすぐ近くだからすぐに医者に診てもらえる
サイレンが鳴り救急車が動き出す
マキに電話をして大久保公園前病院と伝える
大久保公園前病院は大久保公園の横にあるかなり大きい病院
歩いても十分程度の距離なので救急車は数分で到着した
七海は病院のストレッチャーに乗せ換えられ緊急処置室に連れていかれる
私は緊急処置室前の長椅子に案内され帰宅した時の状況とか聞かれる
少したつと事務の人が来て入院に必要な手続きを始めたのだけど未成年者保証人になれないとマキを待つことに
関係を聞かれた時に夫ですと言ってしまい状況をややこしくしてしまったよテンパってたなあ
十分後くらいにマキが駆け付けてくれた
「ゴメン店に寄って鍵だけは開けないと駄目だったんで遅くなってしまった」
”お店に居なくて大丈夫?”
「恵子にお願いしてきたから多少の遅刻は大丈夫だよ」
入院に関する手続きで私じゃ駄目な部分をしてくれた
後は救急処置が終わるのを待つしかない
「彩美大丈夫か?」
”うん”
マキが抱きしめてくれる
「大丈夫だ七海は強い子だから」
マキの胸のなかで頷く
三十分くらいで医者が救急緊急処置室から出て来て説明をはじめる
発熱の原因は不明でインフルエンザとかすぐに検査できる病気は全て陰性
血液検査に出したので明日には感染症であれば判明する
解熱剤を投与したが四十度より熱が下がらないの危険な状態は脱してない
帰る前に面会は少し出来るが血液検査の結果が出るまでは感染症の危険があるのでガラス越しになる
検査結果で感染症で無ければ明日からは普通の面会が出来るが時間は十五分
十五分・・・たったそれだけなの・・・
少し待たされると面会準備が出来たとICUの個室まで案内される
入口の横にある窓のブラインドが上がる
”七海・・・”
何本もの管が取り付けられ酸素吸入器が顔の下半分を覆ってる
体の周りには対応処置で氷嚢が何ヶ所かに置かれているのがわかる
鎮静剤を入れてるので表情は穏やかなのが少しだけ・・・本当に少しだけ救いだったよ
少し顔が赤らんでいる以外は普通に寝てるようにしか見えない
”七海・・・七海・・・七海・・・ひっくひっく”
マキがハンカチを出して涙を拭いてくれる
「店では七海は疲れが溜まって倒れたので数日体力回復で入院になり休むで誤魔化しておくから安心して」
”うんお願いします”
数日で回復・・・本当に・・・回復を願うしか出来ない・・・今の私には・・・
「お時間です」
マキはこのまま出勤するからとマンションの前までタクシーまで送ってくれそのまま店に向かった
部屋に入ると二十一時少し前だった
ソファーに座ると駄目だ涙が嗚咽が止まらない・・・
絶対に七海は元気になる・・・って思っても・・・涙が止まらない・・・万が一・・・万が一・・・その時は七海は絶対に望まないだろうけど・・・私は・・・
あれ・・・ここ何処?
石造りの部屋
部屋の中央には大き目のベッドがあり若い女性がクッションを背中に入れ上半身を起こし窓の外を眺めている
部屋の隅に立つ私に気付くと驚く事もなく
「近くにおいで」
暖炉の炎だけの薄暗い部屋ではこの距離では顔は分からない
でも声に聞き覚えがある・・・とっても身近に・・・常に一緒にいる感じのする声・・・誰なんだろう
ベッドサイドまで来ると顔がはっきり見える
”七海!”
薄くほほ笑む
「違うよ私は貴方だよ」
えっ私は貴方なら・・・
”貴方は私”
なんなの・・・でも・・・貴方は私のはずはないよ・・・その豊かな胸・・・女でしょ
「貴方は私なのだから感じられるはず」
この声って私の声だよ
顔がどれだけ似てても声は七海と違うから七海でないとは瞬間的に分かったけど私の声って
「だから私は貴方だから声が同じなんだよ」
心を読まれれる!?
「心を読む必要はないよ私の考えてることを私がわかるのは普通のだから」
これは夢だ・・・間違いない・・・泣き疲れて寝落ちしちゃったんだ
「じゃあ唇を強く噛み締めてみなよ」
そう夢なら痛くない
”痛ぁ!”
我慢出来なく漏れた声と口の中に広がる鉄の味
”げ、現実!?”
「ここは現実でもなく夢でもない」
”なんで私が女体化して私の前に!?”
「本当は色々語りたいけど今の私の魔力では時間が足りない」
”魔力”
「大丈夫だから七海は数日で熱も下がり回復する」
”なんでそう言えるの”
「覚醒に現在のガイアの医療では何も出来ない覚醒が終わって体調が回復するの待つしかないから」
”覚醒って!?”
「貴方には分かるはず私なんだから」
”えっ”
「そろそろ限界だね・・・戻りなさい私・・・居いるべき場所へ・・・七海の帰る場所へ」
意識が闇に落ちて行く
”はっ!”
ソファーで泣き疲れて寝落ちしていたのかな
”痛ぁ!”
唇がザックリ切れてる
血は止まってるけど口の中は少し鉄の味が残ってる
あれは夢じゃなかったの!?
寝惚けて噛んだとしてもコノ傷から考えたら跳ね起きてるよね
訳が分からない
・・・「大丈夫だから」
妙に心に響く
なんだろうこの安心感
駄目だ頭の中がグチャグチャだ・・・
晩御飯食べてお風呂入って寝て寝坊しないで起きて学校に遅刻しないよう・・・
意思と体の反応が一致しない
キッチンに行きジャックとグラスを用意するとグラスにナミナミ注ぎ一気に飲む
グラスとジャックを持ってソファーへ
グラスに注ぎ直して一気に飲む
違うこんな事をしてる場合じゃないんだ
気分を切り替えようとテラスに出て紫煙を巡らせる
あっ着替えるのも忘れて制服のまま
これじゃ本当に不良偽少女だ・・・
テラスで立ってるのもきつくなり灰皿をソファーのサイドテーブルに持込んで砕けるように座りながら紫煙を巡らす
時計を見ると一時半・・・いつもなら七海が帰って来て一緒に晩御飯を食べてる時間
駄目・・・涙が・・・グラスを一息に飲み干す
息つぐ間もなく紫煙を巡らし合間にジャックを煽る
七海はこんなことを絶対に望んでないのはわかるよ
でも・・・無理・・・七海が居ない夜なんて・・・
ピーンポーン
何?
ピーンポーン
もう少し寝かせてよ
ピーンポーン
だから煩い!
ピンポーン
あっインターホンが鳴ってる
慌ててインターホンに出る
「はやく開けて!」
美香!?
オートロックの開錠ボタンを押す
なんで美香!?
そして私は・・・色々思い出してきた
ピロリンピロリン
玄関のドアを開ける
部屋に押し込むように入って来る美香
リビングの惨状を見て呆れる美香
床に転がる数本のジャックの瓶
サイドテーブルで山のような吸い殻が積みあがった灰皿
美香が唇を噛み締め涙目で私を瞳を強く見つめる
パン!
部屋に乾いた音が響くと同時に頬に強い痛みを感じる
「こ・こ・こんなことを七海さんが望んでると思ってるの・・・・」
・・・・・
急に美香が涙目で薄い笑顔になる
「気持ちは分からなくもないよ・・・ほれ制服脱げ!」
無理やり制服を脱がせさせられる
「ああやっぱし皺だらけだよ」
あの上半身はシャツがあるからいいけど下は男が女性下着付けた変態状態なんですが
「アイロンはどこ!」
”ウオークインに入って右の棚に”
「ほらシャワーを浴びて気合入れて酒抜いて来い!」
とバスルームに叩き込まれる
バスルームの時計を確認すると六時半少し前
美香がどうしてここに?
家から来たなら始発でないと
激熱シャワーと冷水を交互に浴びて酒精を追い出し少しずつ素面に戻ってきた
髪を洗い体を洗って流したら・・・ヤバイ着替え持ってきてない
「ここに制服と替えの下着置いておくから」
美香の声が洗面室から響く
髪を乾かし用意されていた皺一つなくアイロン掛けされた制服を着てリビングに行く
部屋は綺麗に片付けて換気もされて煙草の臭いは消えていた
リビングで仁王立ちの美香
「まったく昨日の夜にマキさんから連絡もらって何回電話しても出ないし・・・」
あっ病院でマナーモードにしたままだった
「超絶気になって始発で着て見ればあの惨状だし」
”ひっくひっくゴメン・・・ゴメン・・・七海が・・・七海が・・・”
美香が私の頭を胸に押し付け抱きしめる
「わかる・・・気持ちはわかる・・・でも・・・単位落として高校卒業出来なかったら・・・退院した・・・七海さんが・・・どんな気持ちになるか考えて」
・・・・・
「まあ間に合ったから良しとしよう」
私の嗚咽が止まったタイミングで手を離す美香
”ごめん制服濡らしちゃった”
「後で御褒美と吸っておくよ」
”はい!?”
「やっと笑ってくれたね」
「まだどこも開いてるお店がなかったから」
コンビニのサンドイッチとパックのカフェオレを出してくれた
「とりあえず胃に入れて落ち着け!」
”ありがとう”
晩飯抜いた体に染みる
卵サンドとツナサンドにレタスハムサンド・・・完璧に私の大好きなコンビニのサンドイッチでトップスリー
私が美香の好みを覚えようとしてたように美香も私の好みを気にしていくれていたんだね
やっぱし食欲に負けて一気食い
酒で焼けてた胃が落ち着く
「ほら食べ終わったらメイクしないと遅刻するよ」
寝室から私のメイクポーチを持って来てるよ
鏡の向こうで両肘をテーブルにつけて手の平で両頬を支えて見つめる美香
”あの何か緊張するんですが”
「彩美ちゃんの顔を見ていたいんだからいいの」
毎度の力技ですね
メイクが終わると八時少し前
「ほら遅刻するから出発するよ!」
”えっもう少し余裕あるよ”
「いいから」
マンションを出て明治通りを渡りゴールデン街方向へ
”学校の方向と違うよ”
「いいの」
なんだか訳が分からないよ
でも私の手を掴み引っ張る美香の手の温もりが心地よい
今は美香に身を任せてもいいかな・・・
「私は貴方・・・貴方は私・・・」
突然頭に思い浮かぶが・・・今は思い出したくない・・・美香の温もりに身を任せていたいよ・・・
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