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第406話 もこもこからの贈り物を使って幸福を得たリカルド。新築祝いで気絶しかけるクライヴ。
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現在クマちゃんは大好きな彼からの愛情をたっぷり受け取っている。
幸せちゃ……と。
◇
商業ギルド内、医務室。
朝から商業ギルドと冒険者ギルドを二度も往復する羽目になったリカルドは、『愛くるしいもこもこ』から貰ったそれと、途中で購入したそれらを抱えて扉を開いた。
実はここに辿り着くまでにもひと悶着あったのだが、肩にのせていた『健康クマちゃんグッズ』のおかげで彼に味方する者が現れ、なんとか窮地を脱することができた。
――どういうことかというと、キャーキャーと賑やかな女性職員達にやたらと囲まれ、彼の目的地を知った彼女達が、関係者以外立ち入り禁止の扉の中へリカルドを押し込んでくれたのだ。
『美少女クマちゃんのファンに悪い人はいません! あとでそのアイテムをどこで入手したのか教えてくださいね!』と。
『あ! お前ら勝手に部外者を中に入れるとは……』
『でも~リカルド様に似てるしすっごい格好いいし肩にクマちゃんのぬいぐるみのせてるんですよ~』
『本当にギルマスかもしれないじゃないですか! 確かに急に若返りすぎだし別人に見えますけど!』
『親戚だったらギリギリ部外者ではないですよね!』
そのとき背後から聞こえたやりとりで、体調が良くなっただけで自身の外見は相当変わったらしいと気付いたが、鏡を見るのは用が済んでからでいい。
今は風邪を引いた人間達を治療するのが先だ。
消毒薬の匂いが漂う室内では、ぐったりとした人間が四人、簡素なベッドで寝込んでいた。他の人間にうつさぬよう隔離されている、ともいう。
医者は席を外しているようだ。リカルドにとっては都合がいい。
彼は外で買ってきたあれこれで手早く準備を整え、小さ目のグラスに牛乳を注ぐと、心優しい子猫から貰った小瓶を傾け、ピチョン――とオレンジがかった液体を一滴だけ落とした。
その瞬間、小さなグラスがカッ!! と強い光を放った。
真っ白に輝く室内。七色に煌めくグラスから、虹色の光が柱のように立ちのぼっている。
患者達がうう……ま、まぶしい……、先生なにやってんすか……、室内で攻撃魔法はやめてください……とうなされている。
リカルドは若干どころではなく動揺したが、医者と思われていた方が都合がいいため、何とか声を出さずに堪えた。
そうしていくばくもなく虹色の光がおさまると、柔らかな卵色に変化した牛乳が入ったグラスを「飲め、薬だ」と言って風邪で苦しむ彼らに差し出した。
熱で目が潤み、ぼーっとしている彼らは「先生いまの声かっこよすぎじゃないっすか……」「うわ……やばい先生がすごい美形に見える……」「いつものおじいちゃん先生じゃないみたいっすね……」「ギルマスの声が聞こえたような……」と、違和感を感じつつも『もこもこ飲料メーカーの体によいフルーチュ牛乳』を一気に飲んだ。
――――!!
「薬うっま!!」
「薬のくせにクソうめー!! 無駄にまろやか!」
「うわもっとちびちび飲めばよかった……!」
「牛乳?! いや果物?! なんだこの美味さは!」
つい先程までぐったりしていたのは何だったのかというほど突然うるさく騒ぎだした商業ギルド職員達に、リカルドは心底驚いた。
「まさかここまで劇的に効くとは……。元気になりすぎのような気もするが……。しかも心なしかキラキラしているような……。おい、お前達。すまないが風邪が治ったなら魔道具で私のギルドカードを照合してくれないか」
「えっ……どなたですか?」
「すぐに働かせようとするところがめっちゃギルマスに似てますね!」
「確かに……御親戚の方っすか?」
「声と顔のパーツと骨格がリカルド様にそっくりですね……。もしや本当にリカルド様でしょうか?」
悪役顔の美形、リカルドは疲れたようにため息を吐き、腕組みをして彼らを睥睨した。
「ようやく私を認識できる者を見つけたが……やはりギルドカードで調べたほうが確実だろう。私は疑われているせいでここから動けない。誰でもいいから魔道具を持ってきてくれ」
そうしてリカルドは無事、本人であると証明することに成功し、仕事に戻ることができた。体調もよくなり、老けてみられるという密かな悩みも解決し、部下達の重い風邪も治り――。
「あの子猫にはどれだけ感謝しても足りんな……」
そう言って、肩にくたっとのせている『健康クマちゃんグッズ』をなでると、甘えるような音声がきゅお……きゅお……と流れ、すぐにふみぃ……ふみぃ……マッチャージを開始してくれた。
このとき、リカルドは奇跡的に優しい顔をしていたが、残念ながら周りに誰もいなかったため、『商業ギルドマスターは美形だが悪役顔である』という彼のイメージが払拭されることはなかった。
◇
お菓子の国。クマちゃんのお友達の豪邸、になる予定のお家。
購入したばかりのふわふわなソファに座り、今しがた届いたアイスを配る。
三人分ほど足りないが、クライヴが追加で頼んだのですぐにくるはずだ。
生徒会役員達は可愛いアイスから顔を上げ、ウィルからの質問に即座に答えをかえした。
遠慮している場合ではなかったのだ。
「私の可愛いクマちゃんの分身であるこの子に、可愛いお洋服を着せてあげたいです……!」
「分身の妖精ちゃんにも家具が必要っすよね。猫ベッドみたいな感じの」
「美クマ妖精ちゃん専用のブラシセットが欲しいんですが……」
生徒会長は『クマウニーちゃん用の洋服』。副会長は『クマウニーちゃん用の家具』。会計は『クマウニーちゃん用のブラシセット』が欲しいという。
「なるほど……。君たちの考えはよく分かったよ。クマちゃんの分身の妖精、クマウニーちゃんを幸せにしてあげたいということだね」
「まぁみんな同じ道をたどるよね。あ、誰かクマウニーちゃんにアイス食わせてやってくんない?」
というリオの言葉で、生徒会役員達が『誰か』の座を奪い合う。
騒がしい人間を好まぬ魔王様に始末されぬように、席を立とうとした人間の腕を無言で引っ張ったり、身体強化した頬を引っ張ったりしている。まさに足の引っ張り合いである。
「えぇ……」
突然美しくない戦いを始めた馬鹿共に冷めた目を向けると、リオは自分で席を立ち、ソファの側でぷるぷるしているクマウニーちゃんをそっと抱き上げた。
リオの優しさに間接的にふれたクマちゃんは、クマウニーちゃんとまったく同じタイミングでサッと口元を押さえた。やちゃちいちゃ……と。
意外と優しい男リオは、以前我が子から貰った可愛らしいクマちゃん銀貨を取り出し、キン――と親指で弾いた。表なら会長、裏ならその他だ。
「――表。良かったね会長クン」
ニッと笑ったリオは実に魅力的で格好いいお兄さんといった相貌だったが、仲間達は知っている。
動体視力も運動神経も優れている彼らにとって、コイントスの結果など簡単に操作できるのだ。初めから二回目を投げる気がなかったに違いない。一番もこもこへの執着が強そうな男にクマウニーちゃんを抱えさせて黙らせることにしたのだろう。
しかし、選ばれなかった二人の目つきがどろどろしているところを見ると、何度も使える手ではなさそうだ。
どうやら執着心が強いのは会長だけではなかったらしい。
「うーん。僕たちの家のクマウニーちゃんも、リーダーのブラシで綺麗にしてあげようとしたのだけれど、外見的に大きな変化は見られなかったよ。クマウニーちゃんを美しくするには何か特別なことをしなければならないのかもしれないね」
「かもな」
ルークはもこもこの小さな口に少量のアイスを運びながら相槌を打った。
クマちゃんが御馳走を食べた猫ちゃんのようにチャチャッ――と薄くて小さな舌を鳴らす。しあわせちゃ……と。
「じゃあコレとかどうっすかね」
そういって副会長が示したカタログの商品は『宝石クマちゃんキャンディ、海色ドレッチャーちゃん。美容師妖精クマちゃん付き』という、クマちゃんが選んだテーブルとよく似た色味のアイテムだった。
美しい海をそのまま切り取ったような色合い、丸い鏡、その上のクマ耳が素晴らしい商品である。
「とても芸術的だね。それに、美容師妖精クマちゃんという子は初めて見るよ」
ウィルは超高級なそれをためらいなく購入した。
――クマちゃーん――。
――お買い上げちゃーん――。
いつもの愛らしい音声が、三度ほど響いた。
「いや三つもいらないでしょ」
「他のふたつは妖精用のドアだよ。この家にも必要でしょう?」
派手な男はいつものようにテーブルの上に小さなドアを設置してから、殺風景な部屋のほぼ真ん中にドレッチャー、もといドレッサーを置いた。
「これは……実物はため息がでるほど美しいね」
「めっちゃ綺麗だけど普通こういうのって壁際に置くよね」
「どこだっていいだろ」
「……――」
クライヴの目がカッ! と見開かれる。
美しい鏡台の机にお座りしている美容師妖精クマちゃんのお目目。
の、まつ毛、あるいは被毛が、くるんと上向きにカールしていることに気付いてしまったのだ。
あまりの美意識の高さに心臓をひとつきされ、意識がふっと遠のきかけた――ところで、聞き逃せない音声が響く。
――宅配ちゃんですちゃーん――。
彼はふたたびカッ!! と目を開き、幽鬼のようにゆらりとソファから立ち上がった。
「なにその動き怖いんだけど」
かすれ声を背に、クライヴがドアを開ける。
すると、そこにいたのは『クマちゃんアヒルちゃん運送』の配達員妖精ちゃんではなく――。
「お前ら、帰ってきたなら報告に来いといつも言ってるだろうが……」
疲れた顔でため息を吐くマスターだった。
幸せちゃ……と。
◇
商業ギルド内、医務室。
朝から商業ギルドと冒険者ギルドを二度も往復する羽目になったリカルドは、『愛くるしいもこもこ』から貰ったそれと、途中で購入したそれらを抱えて扉を開いた。
実はここに辿り着くまでにもひと悶着あったのだが、肩にのせていた『健康クマちゃんグッズ』のおかげで彼に味方する者が現れ、なんとか窮地を脱することができた。
――どういうことかというと、キャーキャーと賑やかな女性職員達にやたらと囲まれ、彼の目的地を知った彼女達が、関係者以外立ち入り禁止の扉の中へリカルドを押し込んでくれたのだ。
『美少女クマちゃんのファンに悪い人はいません! あとでそのアイテムをどこで入手したのか教えてくださいね!』と。
『あ! お前ら勝手に部外者を中に入れるとは……』
『でも~リカルド様に似てるしすっごい格好いいし肩にクマちゃんのぬいぐるみのせてるんですよ~』
『本当にギルマスかもしれないじゃないですか! 確かに急に若返りすぎだし別人に見えますけど!』
『親戚だったらギリギリ部外者ではないですよね!』
そのとき背後から聞こえたやりとりで、体調が良くなっただけで自身の外見は相当変わったらしいと気付いたが、鏡を見るのは用が済んでからでいい。
今は風邪を引いた人間達を治療するのが先だ。
消毒薬の匂いが漂う室内では、ぐったりとした人間が四人、簡素なベッドで寝込んでいた。他の人間にうつさぬよう隔離されている、ともいう。
医者は席を外しているようだ。リカルドにとっては都合がいい。
彼は外で買ってきたあれこれで手早く準備を整え、小さ目のグラスに牛乳を注ぐと、心優しい子猫から貰った小瓶を傾け、ピチョン――とオレンジがかった液体を一滴だけ落とした。
その瞬間、小さなグラスがカッ!! と強い光を放った。
真っ白に輝く室内。七色に煌めくグラスから、虹色の光が柱のように立ちのぼっている。
患者達がうう……ま、まぶしい……、先生なにやってんすか……、室内で攻撃魔法はやめてください……とうなされている。
リカルドは若干どころではなく動揺したが、医者と思われていた方が都合がいいため、何とか声を出さずに堪えた。
そうしていくばくもなく虹色の光がおさまると、柔らかな卵色に変化した牛乳が入ったグラスを「飲め、薬だ」と言って風邪で苦しむ彼らに差し出した。
熱で目が潤み、ぼーっとしている彼らは「先生いまの声かっこよすぎじゃないっすか……」「うわ……やばい先生がすごい美形に見える……」「いつものおじいちゃん先生じゃないみたいっすね……」「ギルマスの声が聞こえたような……」と、違和感を感じつつも『もこもこ飲料メーカーの体によいフルーチュ牛乳』を一気に飲んだ。
――――!!
「薬うっま!!」
「薬のくせにクソうめー!! 無駄にまろやか!」
「うわもっとちびちび飲めばよかった……!」
「牛乳?! いや果物?! なんだこの美味さは!」
つい先程までぐったりしていたのは何だったのかというほど突然うるさく騒ぎだした商業ギルド職員達に、リカルドは心底驚いた。
「まさかここまで劇的に効くとは……。元気になりすぎのような気もするが……。しかも心なしかキラキラしているような……。おい、お前達。すまないが風邪が治ったなら魔道具で私のギルドカードを照合してくれないか」
「えっ……どなたですか?」
「すぐに働かせようとするところがめっちゃギルマスに似てますね!」
「確かに……御親戚の方っすか?」
「声と顔のパーツと骨格がリカルド様にそっくりですね……。もしや本当にリカルド様でしょうか?」
悪役顔の美形、リカルドは疲れたようにため息を吐き、腕組みをして彼らを睥睨した。
「ようやく私を認識できる者を見つけたが……やはりギルドカードで調べたほうが確実だろう。私は疑われているせいでここから動けない。誰でもいいから魔道具を持ってきてくれ」
そうしてリカルドは無事、本人であると証明することに成功し、仕事に戻ることができた。体調もよくなり、老けてみられるという密かな悩みも解決し、部下達の重い風邪も治り――。
「あの子猫にはどれだけ感謝しても足りんな……」
そう言って、肩にくたっとのせている『健康クマちゃんグッズ』をなでると、甘えるような音声がきゅお……きゅお……と流れ、すぐにふみぃ……ふみぃ……マッチャージを開始してくれた。
このとき、リカルドは奇跡的に優しい顔をしていたが、残念ながら周りに誰もいなかったため、『商業ギルドマスターは美形だが悪役顔である』という彼のイメージが払拭されることはなかった。
◇
お菓子の国。クマちゃんのお友達の豪邸、になる予定のお家。
購入したばかりのふわふわなソファに座り、今しがた届いたアイスを配る。
三人分ほど足りないが、クライヴが追加で頼んだのですぐにくるはずだ。
生徒会役員達は可愛いアイスから顔を上げ、ウィルからの質問に即座に答えをかえした。
遠慮している場合ではなかったのだ。
「私の可愛いクマちゃんの分身であるこの子に、可愛いお洋服を着せてあげたいです……!」
「分身の妖精ちゃんにも家具が必要っすよね。猫ベッドみたいな感じの」
「美クマ妖精ちゃん専用のブラシセットが欲しいんですが……」
生徒会長は『クマウニーちゃん用の洋服』。副会長は『クマウニーちゃん用の家具』。会計は『クマウニーちゃん用のブラシセット』が欲しいという。
「なるほど……。君たちの考えはよく分かったよ。クマちゃんの分身の妖精、クマウニーちゃんを幸せにしてあげたいということだね」
「まぁみんな同じ道をたどるよね。あ、誰かクマウニーちゃんにアイス食わせてやってくんない?」
というリオの言葉で、生徒会役員達が『誰か』の座を奪い合う。
騒がしい人間を好まぬ魔王様に始末されぬように、席を立とうとした人間の腕を無言で引っ張ったり、身体強化した頬を引っ張ったりしている。まさに足の引っ張り合いである。
「えぇ……」
突然美しくない戦いを始めた馬鹿共に冷めた目を向けると、リオは自分で席を立ち、ソファの側でぷるぷるしているクマウニーちゃんをそっと抱き上げた。
リオの優しさに間接的にふれたクマちゃんは、クマウニーちゃんとまったく同じタイミングでサッと口元を押さえた。やちゃちいちゃ……と。
意外と優しい男リオは、以前我が子から貰った可愛らしいクマちゃん銀貨を取り出し、キン――と親指で弾いた。表なら会長、裏ならその他だ。
「――表。良かったね会長クン」
ニッと笑ったリオは実に魅力的で格好いいお兄さんといった相貌だったが、仲間達は知っている。
動体視力も運動神経も優れている彼らにとって、コイントスの結果など簡単に操作できるのだ。初めから二回目を投げる気がなかったに違いない。一番もこもこへの執着が強そうな男にクマウニーちゃんを抱えさせて黙らせることにしたのだろう。
しかし、選ばれなかった二人の目つきがどろどろしているところを見ると、何度も使える手ではなさそうだ。
どうやら執着心が強いのは会長だけではなかったらしい。
「うーん。僕たちの家のクマウニーちゃんも、リーダーのブラシで綺麗にしてあげようとしたのだけれど、外見的に大きな変化は見られなかったよ。クマウニーちゃんを美しくするには何か特別なことをしなければならないのかもしれないね」
「かもな」
ルークはもこもこの小さな口に少量のアイスを運びながら相槌を打った。
クマちゃんが御馳走を食べた猫ちゃんのようにチャチャッ――と薄くて小さな舌を鳴らす。しあわせちゃ……と。
「じゃあコレとかどうっすかね」
そういって副会長が示したカタログの商品は『宝石クマちゃんキャンディ、海色ドレッチャーちゃん。美容師妖精クマちゃん付き』という、クマちゃんが選んだテーブルとよく似た色味のアイテムだった。
美しい海をそのまま切り取ったような色合い、丸い鏡、その上のクマ耳が素晴らしい商品である。
「とても芸術的だね。それに、美容師妖精クマちゃんという子は初めて見るよ」
ウィルは超高級なそれをためらいなく購入した。
――クマちゃーん――。
――お買い上げちゃーん――。
いつもの愛らしい音声が、三度ほど響いた。
「いや三つもいらないでしょ」
「他のふたつは妖精用のドアだよ。この家にも必要でしょう?」
派手な男はいつものようにテーブルの上に小さなドアを設置してから、殺風景な部屋のほぼ真ん中にドレッチャー、もといドレッサーを置いた。
「これは……実物はため息がでるほど美しいね」
「めっちゃ綺麗だけど普通こういうのって壁際に置くよね」
「どこだっていいだろ」
「……――」
クライヴの目がカッ! と見開かれる。
美しい鏡台の机にお座りしている美容師妖精クマちゃんのお目目。
の、まつ毛、あるいは被毛が、くるんと上向きにカールしていることに気付いてしまったのだ。
あまりの美意識の高さに心臓をひとつきされ、意識がふっと遠のきかけた――ところで、聞き逃せない音声が響く。
――宅配ちゃんですちゃーん――。
彼はふたたびカッ!! と目を開き、幽鬼のようにゆらりとソファから立ち上がった。
「なにその動き怖いんだけど」
かすれ声を背に、クライヴがドアを開ける。
すると、そこにいたのは『クマちゃんアヒルちゃん運送』の配達員妖精ちゃんではなく――。
「お前ら、帰ってきたなら報告に来いといつも言ってるだろうが……」
疲れた顔でため息を吐くマスターだった。
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