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第383話 森の中でアイチュ作り! クリーム状のアイチュを使ったアレといえば――。
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現在クマちゃん達は、アイチュ作りのおてちゅだいをしている。
◇
リンゴの形のランプが置かれた、可愛らしい広場。
森の中にぽっかりとあいた空間で、三角の布を巻いた妖精クマちゃん達が、せっせとお手々を動かしている。
作業は階段付きの切り株の上で行われていた。
まずはカゴに入ったまっしろな木の実を、妙にツヤツヤした切り株の上に『クマちゃ』と取り出す。つぎに、切り株に置かれているクマちゃんキャンディの破片らしきもので、木の実をコツ……、コツ……、と叩く。『クマちゃ……』と。
そうして、時々汗をぬぐうような仕草を――猫が洗顔するように、お手々でお顔をクシクシ――する。
樹の陰に隠れている冒険者達は、切なげな表情で口を押さえた。そんな……と。
(ぜんぜん割れてないんですけど……!)
(そもそも割る気はあるのか……?)
(俺が……、俺が割ってくる……!)
(待て! お前の力でぐしゃ……ってなったら責任とれんのかよ……!)
別の樹に隠れている……というよりほぼ全身が見えているリオ達も、難しい顔をしていた。
「えぇ……。まだ一個も割れてないじゃん……。俺らがやったほうが早くね?」
「うーん。手伝いたいけれど……。穴をあけるだけ、という可能性もあるのかな……」
ウィルの言葉を聞き、リオは考えた。
見るからに効率が悪い謎の作業について。
飴の欠片で叩いただけで『アイス完成!』ということはないだろう。
工程はどうなっているのか。
もどかしい。そして生産能力に問題がありすぎる。
あの妖精達はずっとここで作業を?
『ふわふわクマちゃんアイス、クマウニーちゃん用』が頭を過る。
――否、おそらくこの子達とは無関係だろう。
本日あれを購入した総数は百を超えているはず。一番買ったのは当然頑固野郎である。
この肉球のスピードで間に合うはずがない。それに、クマちゃんが言っていたはずだ。『よろず屋お兄ちゃんからのお取り寄せちゃん』と。
そもそも、これは本当に『アイチュ』と関係のある作業なのか?
何でも疑う男が『アイチュを作っているかもしれない妖精達の肉球力と作っているもの』を疑いはじめる。実は関係ないんじゃないのぉ……と。
しかしそのとき、純粋で心優しいもこもこの声がした。
「クマちゃ……」
『おてちゅだいちゃ……』と。
彼らはふっと優しい笑みを浮かべた。
そうだ。悩む事などない。余計なことをあれこれ考えず、手伝いたいなら手伝えばいい。
自分達ははじめから『頑張っている妖精達の手伝いをしたい』と思っていたのだから。
◇
取り合えず、妖精達の動きを一通り見てみることにした。
覚えてから手伝ったほうがいいだろう、と。
コツコツされていた木の実は、二分ほどでパカ――と開いた。
妖精クマちゃん達は肉球を止め、自分達で拍手をした。
テチテチ! テチテチ! と。
冒険者達も音を立てぬよう高速で拍手をする。
『よくやった……!』と。涙を滲ませながら。
割れた木の実が別のカゴに入れられ、ヨチヨチと運ばれる。
階段を下りる姿がとても危なっかしい。
冒険者達がハラハラし、死神が吹雪を巻き起こす。
『寒いんだけど……』
リオは苦情を飲み込んだ。暑いよりはマシだよね……と。
つぎに、妖精達が用意したのは、変わった模様の大鍋だった。
四角いマス目模様のついたクッキーのような、不思議な素材だ。
割れた木の実の『実』の部分を匙ですくい、つぎつぎと投入してゆく。
『クマちゃ……』と。
そうしている間に、手の空いた妖精達が、クマちゃん型の氷で大鍋を囲う。
冷えたお手々をピピピピピ! と振りながら。
そのあとは、脚立のような足場をヨチヨチと運んできたり、設置したり、鍋に落ちかけたり、死神と冒険者達の心臓が止まりかけたりと、おおよそ予想通りの展開だった。
「なんであれでアイスになるのか全然分かんないんだけど……」
というリオの独り言に同意する者はいなかった。
◇
冒険者達は白い木の実を集めながら感動した。「冷たい……!」と。
しかし甘い匂いなどはしないようだ。
「これは、もしかすると飴で叩くことにも意味があるのかもしれないね」
「つーか赤ちゃんが作った国で細かいこと考えても無駄でしょ。……いや指で割るのはナシだと思うけど」
ウィルは「そうだね」といって、指の力でメキっと割ろうとした木の実を一度はなした。
クライヴは鍋を――離れた場所から――冷やす係、マスターはヨチヨチ達の面倒を見る係、クマちゃんを抱えたルークは鍋をかき混ぜる係だ。
クマちゃんはひんやりクリーム状になってきたアイチュを見ながらハッと閃いた。
これがあれば『おいちいパフェ』がたくちゃん作れるのではないかと。
「クマちゃーん」
『パぺちゃーん』
「クマちゃん良かったねぇ」
新米ママは嬉しそうな我が子の歌声にしみじみと答えた。
パペちゃんってなんだろ……と考えながら。
◇
リンゴの形のランプが置かれた、可愛らしい広場。
森の中にぽっかりとあいた空間で、三角の布を巻いた妖精クマちゃん達が、せっせとお手々を動かしている。
作業は階段付きの切り株の上で行われていた。
まずはカゴに入ったまっしろな木の実を、妙にツヤツヤした切り株の上に『クマちゃ』と取り出す。つぎに、切り株に置かれているクマちゃんキャンディの破片らしきもので、木の実をコツ……、コツ……、と叩く。『クマちゃ……』と。
そうして、時々汗をぬぐうような仕草を――猫が洗顔するように、お手々でお顔をクシクシ――する。
樹の陰に隠れている冒険者達は、切なげな表情で口を押さえた。そんな……と。
(ぜんぜん割れてないんですけど……!)
(そもそも割る気はあるのか……?)
(俺が……、俺が割ってくる……!)
(待て! お前の力でぐしゃ……ってなったら責任とれんのかよ……!)
別の樹に隠れている……というよりほぼ全身が見えているリオ達も、難しい顔をしていた。
「えぇ……。まだ一個も割れてないじゃん……。俺らがやったほうが早くね?」
「うーん。手伝いたいけれど……。穴をあけるだけ、という可能性もあるのかな……」
ウィルの言葉を聞き、リオは考えた。
見るからに効率が悪い謎の作業について。
飴の欠片で叩いただけで『アイス完成!』ということはないだろう。
工程はどうなっているのか。
もどかしい。そして生産能力に問題がありすぎる。
あの妖精達はずっとここで作業を?
『ふわふわクマちゃんアイス、クマウニーちゃん用』が頭を過る。
――否、おそらくこの子達とは無関係だろう。
本日あれを購入した総数は百を超えているはず。一番買ったのは当然頑固野郎である。
この肉球のスピードで間に合うはずがない。それに、クマちゃんが言っていたはずだ。『よろず屋お兄ちゃんからのお取り寄せちゃん』と。
そもそも、これは本当に『アイチュ』と関係のある作業なのか?
何でも疑う男が『アイチュを作っているかもしれない妖精達の肉球力と作っているもの』を疑いはじめる。実は関係ないんじゃないのぉ……と。
しかしそのとき、純粋で心優しいもこもこの声がした。
「クマちゃ……」
『おてちゅだいちゃ……』と。
彼らはふっと優しい笑みを浮かべた。
そうだ。悩む事などない。余計なことをあれこれ考えず、手伝いたいなら手伝えばいい。
自分達ははじめから『頑張っている妖精達の手伝いをしたい』と思っていたのだから。
◇
取り合えず、妖精達の動きを一通り見てみることにした。
覚えてから手伝ったほうがいいだろう、と。
コツコツされていた木の実は、二分ほどでパカ――と開いた。
妖精クマちゃん達は肉球を止め、自分達で拍手をした。
テチテチ! テチテチ! と。
冒険者達も音を立てぬよう高速で拍手をする。
『よくやった……!』と。涙を滲ませながら。
割れた木の実が別のカゴに入れられ、ヨチヨチと運ばれる。
階段を下りる姿がとても危なっかしい。
冒険者達がハラハラし、死神が吹雪を巻き起こす。
『寒いんだけど……』
リオは苦情を飲み込んだ。暑いよりはマシだよね……と。
つぎに、妖精達が用意したのは、変わった模様の大鍋だった。
四角いマス目模様のついたクッキーのような、不思議な素材だ。
割れた木の実の『実』の部分を匙ですくい、つぎつぎと投入してゆく。
『クマちゃ……』と。
そうしている間に、手の空いた妖精達が、クマちゃん型の氷で大鍋を囲う。
冷えたお手々をピピピピピ! と振りながら。
そのあとは、脚立のような足場をヨチヨチと運んできたり、設置したり、鍋に落ちかけたり、死神と冒険者達の心臓が止まりかけたりと、おおよそ予想通りの展開だった。
「なんであれでアイスになるのか全然分かんないんだけど……」
というリオの独り言に同意する者はいなかった。
◇
冒険者達は白い木の実を集めながら感動した。「冷たい……!」と。
しかし甘い匂いなどはしないようだ。
「これは、もしかすると飴で叩くことにも意味があるのかもしれないね」
「つーか赤ちゃんが作った国で細かいこと考えても無駄でしょ。……いや指で割るのはナシだと思うけど」
ウィルは「そうだね」といって、指の力でメキっと割ろうとした木の実を一度はなした。
クライヴは鍋を――離れた場所から――冷やす係、マスターはヨチヨチ達の面倒を見る係、クマちゃんを抱えたルークは鍋をかき混ぜる係だ。
クマちゃんはひんやりクリーム状になってきたアイチュを見ながらハッと閃いた。
これがあれば『おいちいパフェ』がたくちゃん作れるのではないかと。
「クマちゃーん」
『パぺちゃーん』
「クマちゃん良かったねぇ」
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