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第349話 可愛い妖精クマちゃん達と頑張る、可愛いお花畑づくり。
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現在クマちゃんは、格好良く笛をならし、作業の仕上げをしている。
うむ、あと一息である。
◇
彼らは『くっ……!』と心の中で感情を押さえつつ、作業員妖精クマちゃん達の奮闘を見守った。
ポコポコ……! ポコポコ……!
そうしてついに、肉球で叩かれていた樹が、ポン! と可愛い音を立て、小さくなる。
大人達は余計なことを言わず、言いそうな人間に殺気を飛ばしながら、温かい拍手を贈った。
すると、コロリと倒れた可愛い樹をその場に残したまま、妖精クマちゃん達が『クマちゃ……!』と彼らの前に集まってくる。
え、まだ一本目だよね、と言いかけた男の肩に、シャラ――と優し気な手がガッ! と優しさの感じられない強さで置かれ、男は黙った。
可愛い妖精ちゃん達が、つぶらな瞳で彼らを見上げている。
指示待ちだろうか、もう一本やってくれと頼むべきか……。
思案するあいだに、クマちゃんが子猫のような声で、彼らに説明をする。
「クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ……」
『整地ちゃ、お駄賃ちゃ、おやちゅちゃ、一個ちゃ……』
詳しく聞かずともなんとなく理解できた。
「え、もしかして……一本だからおやつ一個あげてってこと?」
金髪の言葉を聞いた仲間達は『おい、まさか本当に一個だけやる気じゃねぇだろうな』という視線を送ったり止めたりしようとした――が、リオの行動のほうが一瞬早かった。
『一個ちゃ……』を額面通りに受け取ってしまった男が、作業員妖精クマちゃん達の前にしゃがみこみ、一枚のクッキーを差し出す。
ヨチヨチ! と彼のまわりに集まってきた妖精ちゃん達が、遠慮がちに肉球をのばした、が、なんと一枚しかない。
大変な事になってしまった。妖精ちゃん達のお目目が、当然のように潤む。
とりあえず真ん中にいた。という理由で、一匹の妖精クマちゃんが代表に決まり、おずおずヨチヨチと前へ出る。
そうしてリオに向かって丁寧に頭を下げ、彼の手から『甘いお駄賃』をそっと受け取ると――次の瞬間、小さなお手々でぱき……、と可愛いクマちゃんクッキーをまっぷたつに割った。
作業員妖精クマちゃん達がそれをさらに細かく割っているあいだに頭を割られそうになった男が、悲し気な顔で謝罪をする。
「マジでごめん」と。
そのため、彼の処分は甘い注意だけとなった。
『もう少し考えてから動け』
◇
多少のごたごたはあったものの『クマちゃんリオちゃんハウチュ』の横、左隣に生えていた樹々は、作業員妖精クマちゃん達のおかげで小さくなり、あらかた倒された。
「クマちゃ、クマちゃ……」
『つぎちゃ、運ぶちゃ……』
赤ちゃんがうむ、と重々しく頷き、ふたたび可愛らしいアヒルさんの笛を構える。
ピヨピヨピヨピヨ……、ピヨピヨピヨピヨ……。
可愛らしい音と共に、彼らの周囲に影ができる。
雲でも流れてきたか? 大人達が空を見上げると、陽をさえぎる原因となった物体、巨大なアヒルさんが、地面を目指しゆっくりと降りてくるところだった。
ふわりと風が吹き、あたりに転がっていた小さな樹々が『クマちゃーん』とアヒルさんに積載される。
――整地ちゃん完了ちゃんですちゃーん――と。
「クマちゃん可愛いねー」
新米ママは余計なことを言わず、素直にもこもこを褒め称えた。
美しく整えられた土地も、仲間達からお駄賃を受け取っている妖精クマちゃんも、可愛らしい仕草で笛を吹く我が子も、すべてが愛おしい。
『ちゃん』が多いことなど、もはや気にならない。
好きなだけ増やせばいいのだ。
◇
クマちゃんクッキーを受け取った作業員妖精クマちゃん達は『クマちゃ……!』と森の中へ戻っていった。
あの幻影達もまた、ピンク髪の男からアイスをもらうのだろう。
そんな感傷的なことを考えながら真面目な表情で、リオはもこもこの話を聞いた。
「クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ……」
『お花畑ちゃ、可愛いちゃ、飾るちゃ、みちゅばちちゃ、くるちゃ……』
お花畑ちゃんを可愛らしく飾ると、みつばちちゃん達が集まってきまちゅ……。
なるほど。彼らは頷き、赤ちゃん的な情報『とにかく可愛いほうがいい』をもとに、作業を進める。
まずは、カタログで商品を購入する。
「うーん。このお花は飴でできているのかな。艶と透明感がとても素晴らしいね」
カタログからふわふわと浮かぶ幻影の花畑は、少し眺めるだけで時を忘れそうになるほど芸術的だ。
美しいものを好む男が感心していると、自身も購入を済ませたリオが「あれ、俺のとちょっと違うかも」と手元のカタログを見せてきた。
「おや、これは……似ているけれど、花の種類が違うようだね。置いてみたらもっとはっきりと分かるかもしれない」
「へー」と言った男が深く考えず、菓子の家の隣に薄紫色のそれを置く。
すると、花畑の設置をお祝いするため、お菓子の帽子を身につけた可愛い妖精クマちゃん達が、森の中から『クマちゃ……!』と集まってきた。
パン! と一発花火があがる。
え、いま花火あがった? みえにく、え、おわり? あ、一発だけなんだ。と誰かが微妙なクレームを混ぜつつ空を見上げているあいだに、妖精クマちゃん達が最初の花畑前に到着する。
そこで、彼らは気付いた。
妖精クマちゃん達が小さな紙切れを持っていることと、そこに『採点ちゃん』の文字が書かれていることに。
うむ、あと一息である。
◇
彼らは『くっ……!』と心の中で感情を押さえつつ、作業員妖精クマちゃん達の奮闘を見守った。
ポコポコ……! ポコポコ……!
そうしてついに、肉球で叩かれていた樹が、ポン! と可愛い音を立て、小さくなる。
大人達は余計なことを言わず、言いそうな人間に殺気を飛ばしながら、温かい拍手を贈った。
すると、コロリと倒れた可愛い樹をその場に残したまま、妖精クマちゃん達が『クマちゃ……!』と彼らの前に集まってくる。
え、まだ一本目だよね、と言いかけた男の肩に、シャラ――と優し気な手がガッ! と優しさの感じられない強さで置かれ、男は黙った。
可愛い妖精ちゃん達が、つぶらな瞳で彼らを見上げている。
指示待ちだろうか、もう一本やってくれと頼むべきか……。
思案するあいだに、クマちゃんが子猫のような声で、彼らに説明をする。
「クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ……」
『整地ちゃ、お駄賃ちゃ、おやちゅちゃ、一個ちゃ……』
詳しく聞かずともなんとなく理解できた。
「え、もしかして……一本だからおやつ一個あげてってこと?」
金髪の言葉を聞いた仲間達は『おい、まさか本当に一個だけやる気じゃねぇだろうな』という視線を送ったり止めたりしようとした――が、リオの行動のほうが一瞬早かった。
『一個ちゃ……』を額面通りに受け取ってしまった男が、作業員妖精クマちゃん達の前にしゃがみこみ、一枚のクッキーを差し出す。
ヨチヨチ! と彼のまわりに集まってきた妖精ちゃん達が、遠慮がちに肉球をのばした、が、なんと一枚しかない。
大変な事になってしまった。妖精ちゃん達のお目目が、当然のように潤む。
とりあえず真ん中にいた。という理由で、一匹の妖精クマちゃんが代表に決まり、おずおずヨチヨチと前へ出る。
そうしてリオに向かって丁寧に頭を下げ、彼の手から『甘いお駄賃』をそっと受け取ると――次の瞬間、小さなお手々でぱき……、と可愛いクマちゃんクッキーをまっぷたつに割った。
作業員妖精クマちゃん達がそれをさらに細かく割っているあいだに頭を割られそうになった男が、悲し気な顔で謝罪をする。
「マジでごめん」と。
そのため、彼の処分は甘い注意だけとなった。
『もう少し考えてから動け』
◇
多少のごたごたはあったものの『クマちゃんリオちゃんハウチュ』の横、左隣に生えていた樹々は、作業員妖精クマちゃん達のおかげで小さくなり、あらかた倒された。
「クマちゃ、クマちゃ……」
『つぎちゃ、運ぶちゃ……』
赤ちゃんがうむ、と重々しく頷き、ふたたび可愛らしいアヒルさんの笛を構える。
ピヨピヨピヨピヨ……、ピヨピヨピヨピヨ……。
可愛らしい音と共に、彼らの周囲に影ができる。
雲でも流れてきたか? 大人達が空を見上げると、陽をさえぎる原因となった物体、巨大なアヒルさんが、地面を目指しゆっくりと降りてくるところだった。
ふわりと風が吹き、あたりに転がっていた小さな樹々が『クマちゃーん』とアヒルさんに積載される。
――整地ちゃん完了ちゃんですちゃーん――と。
「クマちゃん可愛いねー」
新米ママは余計なことを言わず、素直にもこもこを褒め称えた。
美しく整えられた土地も、仲間達からお駄賃を受け取っている妖精クマちゃんも、可愛らしい仕草で笛を吹く我が子も、すべてが愛おしい。
『ちゃん』が多いことなど、もはや気にならない。
好きなだけ増やせばいいのだ。
◇
クマちゃんクッキーを受け取った作業員妖精クマちゃん達は『クマちゃ……!』と森の中へ戻っていった。
あの幻影達もまた、ピンク髪の男からアイスをもらうのだろう。
そんな感傷的なことを考えながら真面目な表情で、リオはもこもこの話を聞いた。
「クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ、クマちゃ……」
『お花畑ちゃ、可愛いちゃ、飾るちゃ、みちゅばちちゃ、くるちゃ……』
お花畑ちゃんを可愛らしく飾ると、みつばちちゃん達が集まってきまちゅ……。
なるほど。彼らは頷き、赤ちゃん的な情報『とにかく可愛いほうがいい』をもとに、作業を進める。
まずは、カタログで商品を購入する。
「うーん。このお花は飴でできているのかな。艶と透明感がとても素晴らしいね」
カタログからふわふわと浮かぶ幻影の花畑は、少し眺めるだけで時を忘れそうになるほど芸術的だ。
美しいものを好む男が感心していると、自身も購入を済ませたリオが「あれ、俺のとちょっと違うかも」と手元のカタログを見せてきた。
「おや、これは……似ているけれど、花の種類が違うようだね。置いてみたらもっとはっきりと分かるかもしれない」
「へー」と言った男が深く考えず、菓子の家の隣に薄紫色のそれを置く。
すると、花畑の設置をお祝いするため、お菓子の帽子を身につけた可愛い妖精クマちゃん達が、森の中から『クマちゃ……!』と集まってきた。
パン! と一発花火があがる。
え、いま花火あがった? みえにく、え、おわり? あ、一発だけなんだ。と誰かが微妙なクレームを混ぜつつ空を見上げているあいだに、妖精クマちゃん達が最初の花畑前に到着する。
そこで、彼らは気付いた。
妖精クマちゃん達が小さな紙切れを持っていることと、そこに『採点ちゃん』の文字が書かれていることに。
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