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第3章 修学旅行で何も起こらないなんて誰が決めた? 前半:〇〇が黙っているわけがない

第23話 最終戦 その7

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 ちとせが額を抑えたとき、真の恐怖が放たれる。



 妄言のように聞こえるが、わりと事実に近い。

 案の定、ちとせが額を抑えてため息をつき、再び顔を上げたとき。

 その目は極限まで細められており、全身から凄まじい量の殺気が放たれていた。

 その目から出る殺意の目線に射抜かれ固まる千春達。



「あのさぁ、金輪際近づくなっていったあとに私なんて言った?」

「自己中は黙ってろ、でしょ?」

「それも言ったね。……じゃあ質問を変えようか。なんで政信が倒れたと思う?」

「あんたのせいでしょ?」



 大嘘である。

 あのときの原因は過労とストレス過多が最たる理由。

 こいつらとやりあったころだから、当然やらなくてはならないことが増えるとともに、ストレスの量が半端じゃなかった。

 つまり原因は100%こいつらである。



 そしてそれを知っているちとせは、ただでさえものすごいキレているというのに、そこにそんな発言を投下したものだから。

 いわゆる火に油を注ぐ事態になってしまった。

 当然ちとせはガチギレ。



「政信が倒れたのは過労とストレス過多が原因だった。特に大きな割合を占めていたのがストレス過多。あんたみたいなクズの相手をしなくちゃいけないばっかりに、政信はたくさんのストレスに晒された。あんたがいなけりゃこんなことにはならなかった!全部あんたのせいよ!あんたがいなければ、死ぬかもしれないなんていう状態にはならなかったの!人の命を奪う寸前だったんだよ!もっと危機感を持てよカス!死ぬギリギリまで痛めつけてやろうか!?」



 いままでのおとなしいキャラはどこへ行ったのか。

 次々と吐き出されていく暴言と、嗚咽混じりの怒鳴り声。

 俺が死にそうになっていた間の苦しみを思い出しているのだろう。

 その顔はどこか悲しそうだった。



 しかしその表情は一瞬で消し飛び。

 俺も初めて見るほどの怒りで染め上げられていた。

 俺ですらビビってしまうほどの怒り。



 さすがの千春たちも、何も言えない様子で固まっていた。



「黙っていないでなんとか言えよ。それとも本当に死に際まで苦しみたいか!?」

「やれるもんならやってみなさいよ。どうせできっこないんだから」

「ならやってやるわ!」



 何を勘違いしたのか、ちとせを煽る千春。

 そしてついに堪忍袋の緒が切れたちとせが一瞬で手を首に伸ばし、締め上げ始める。

 俺は慌ててちとせの手をほどき。



「政信、止めないで。もう我慢できない!」

「気持ちはわかるけど、やりすぎだ。俺はちとせに犯罪者にだけはなってほしくない」



 俺の必死な願いが届いたのか、手を緩めるちとせ。



 一方開放された千春はこれみよがしに荒い息を吐き、露骨なやられたアピール。



 露骨に安心し、目をニヤつかせる千春を見た瞬間、俺の中で何かが爆発する音がした。
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