47 / 87
第2章 ちとせの政信奪還作戦
第19話 政信の目覚めと説教と… その1
しおりを挟む地面が見え、意識が暗闇に溶け込み。
そのまましばらく時間が経過した後、すっかり寝ていた俺は目を覚まそうとする。
だが、なかなか目を開くことが出来ない。
『君はどうしてそこまでして生きようと思うんだい?』
突如として頭の中に響いた声におどろく俺。
『あんなことがあったのに、今後も苦しい思いをすることぐらい分かってるだろうに。なのに君はまたあの世界に戻ろうというのかい?』
「それでもだ。確かに俺は苦しい思いをしたが、それは他にもたくさんいる。それにまだあいつらが苦しんでる最中だ。一生苦しんで死ぬまで苦しみ続けてるところを見るという崇高な使命は俺にはある」
『そうやって生きる理由をこじつけてるだけじゃないのか?』
「断じてそうじゃない。たとえお前が引き留めようと、俺はまだ生きてやる。ちとせと長生きして、あいつらにざまあみろと言い続けたいんだ!」
『……そこまで言うなら仕方ない、ならば目を開けよ。私は君とはしばらく関わらないことにしよう。皆が待ってる世界にもどりたまえ』
そう言われた俺は、今度こそ目を開く。
が、あまりの眩しさに目が細い状態でとはなったが。
そして、まず目に入ってきたのが無機質な白のタイルとドアップのちとせの顔、そして白衣を着た医師らしき人と武弥に彩希さん。
自分のいる環境やら一緒にいる人達に疑問が次々と生まれ、頭の上にはてなマークをいっぱい掲げながら問いを発する。
「……あれ、ちとせ?どうして俺は寝てるんだ?……それにお医者さん?」
そう発した俺の言葉を聞いたちとせが、顔をくしゃりと歪める。
一方の俺は日付が気になっていた。
「あの、今日は一体いつですか?」
「9月15日ですよ」
その瞬間、俺の意識は一瞬で覚醒し、一息に起き上がろうとして。
突然その目から大粒の涙をこぼしながら抱きついてきたちとせによって再び押し倒された。
「ちとせ、一旦どいてくれないか?俺はすぐにでも行かなきゃいけない。こんなにサボってたらなんて言われるか。迷惑をこれ以上かけるわけには行かないんだ」
「じゃあ行かないで」
「え?今なんて?」
「迷惑かけたくないなら行かないでって言ってるの!いきなり倒れて、そのままずっと目を覚まさなくて、もう二度と目を覚まさないかもって言われて。過労とストレス過多だって言われて、あんな惨状の胃を見せられて。もうあんな思いをするのは嫌!」
「ちとせ……」
「だいたい政信にとって私は何?私のことは信じられるんじゃなかったの?」
「そりゃ信じられるよ、だから隠し事なんて――」
「してたじゃない!自分が疲労とストレスで大変なことになってるのに黙ってたじゃん!」
「は?」
たしかにそこそこ疲労は溜まっていたが、そこまでではなかったはず。
困惑する俺に、医師が話しかけてきた。
「君が井野政信くんだね?」
「はい、そうです」
「君は部活中に倒れて搬送されてきたんだが、その時の状態がかなりひどくてね。病状の説明をしようと思うんだが、いいかい?」
その声音と雰囲気から、かつて無いほどの真剣さを感じた俺は、頷いて同意をした。
まさか自分の状況がとてつもなくヤバかったとは知らずに。
//////////////////////////////////////////////////////////////////////
ようやく政信が目覚めです!
そしてちとせのセリフ的に次回は結構ビッグなイベントが発生しますよ~!
/////////////////////////////////////////////////////////////////////
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~
ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。
僕はどうしていけばいいんだろう。
どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる