20 / 37
20
しおりを挟む「はなさん、stop」
すぐにけいじが立ち上がり、はなを止める。
「ちょっと!またあんた?!いい加減にして!はなとたぁ君の邪魔しないでよ!」
喚き散らすはな。
けいじがゆっくり休めないのは、はなが原因だった。
目を離せばあきとに擦り寄るはな。
なるべくあきとを1人にさせないようにと、濱田と一緒に行動させたりもしててみたが、そうすれば、濱田とはなの壮絶な喧嘩に発展する。
あかりでは役不足。
そうなれば、上手く場を収められるのはけいじだけになる。
「仕事は?」
「だから!何ではながーー」
ここで言う仕事とは、山菜集めや洗濯の事。
「可愛いとか関係無いの。生き残る為には、しなきゃならない」
はなは可愛いんだから、しなくていい。
この常套句も聞き飽きていて、言われる前にけいじは吐き捨て、はなの体を回れ右し、玄関に向ける。
「ちょっと!」
「仕事は絶対。はい、行ってらっしゃい」
半ば強引に、けいじははなを外に追いやると、扉を閉めた。
生き残る事に対してなら、彼女もまだ応じるので、けいじは何度もその言葉を使用する。
「ーー本当に……すみません」
「大丈夫。あきと君は全く悪くないからね」
申し訳無さそうに謝罪するあきとに、けいじは笑顔で手を振った。
「それに、別れをまだ切り出さないで欲しいってお願いしてるのはこっちだからな」
彼女の執着は異様。
「生きて戻った時も、絶対に警察に相談した方が良い」
彼女の執着の域は、最早ストーカーに近い。
この森の間だけで無く、生き残った後もーーー生き残って社会に戻った方が、彼女の執着は酷くなるだろう。
「密閉されたこの空間で別れを切り出してしまえば、何をするか分からない。用心しよう」
「……」
あかりは、以前、ストーカー被害のすえの殺人事件を、ニュースで見たのを思い出した。
「はい」
あきとは神妙な趣でうなづいた。
あかりは何も言わなかったが、迷惑はしている。
けいじがフォローしているが、はなは仕事をしたら負けだとでも思っているのか、あかりに仕事を押し付けようとする事(可愛くないあんたがやるべきとかなんとか)もあった。
彼女のせいで、濱田が怒り、雰囲気が悪くなる。
あきと本人も、決定的な別れの言葉は使用していないものの、拒絶しても拒絶しても効果の無い、はなに、どうすれば良いのか戸惑っているようだった。
(あの人さえいなければ……上手くいくのに……)
そう、思わずにはいられなかった。
「濱田君はまだ魚釣り?」
「はい。濱田さんの場合は、もう趣味ですね」
今晩分は釣れたのだが、濱田はのんびりと魚釣りをするのが好きなようで、まだ残っているらしい。
家を拠点にして数日。
この家の周り、川や井戸のある場所なら、霧が深く無い限り、迷う事は無く戻ってこれる為、1人でも行動する事が出来るようになった。
生活も整いつつあり、移動も無い分、忙しくなく動いていた時間に余裕が出来た。
「ただ、もう戻ってくると思いますよ」
「くそが!!!」
バンっっっ!!!!と、再度大きな扉の開け閉めの音が響く。
「お帰り濱田君」
あきとの予想通り、濱田が苛苛した表情で戻って来たので、けいじが迎えた。
「あー、ああ?てめぇ、また早く起きてきやがったな!」
「あはは。所で、どうかした?」
話を変えるように誘導するけいじ。
濱田の苛苛の理由なんて、全員が聞かなくても理解してる。
「あのくそ女に決まってんだろ!」
(((でしょうね)))
濱田は、はなに対する苛苛を全く隠さない。
「俺が釣りしてるにも関わず、水浴びに来やがって…!あいつ、今日も仕事してねぇだろ!!」
濱田が怒るのも無理は無い。
無理は無いが、何度注意しても、促しても、結局サボってしまう。
そのうち、あきとに近寄らないようになれば良いとシフトチェンジしてしまった。
「くそ女がーー!」
「うん。苛苛は最もだ。いつも我慢してくれてありがとうな、濱田君」
けいじは濱田の背中に触れながら、笑顔でお礼を言った。
そう。
けいじが居なければ、きっともっと酷い事になっている。
けいじが、全員の間を取り成してくれている。
「外は寒いでしょう?どうぞ、暖まって下さい」
あきとがけいじを囲炉裏の傍にと、座布団を用意すると、濱田はぶっきらぼうだが、その場に座った。
「そう言えば、この火を付けたのはあきと君か?」
けいじは囲炉裏の火を指しながら尋ねた。
「はい」
「火を付けるの上手くなったな」
火付け石での火起こしはコツがいて、当初けいじしか火が起こせなかったが、今ではあきともマスターしている。
「嬉しいです」
食べれる山菜やきのこの見分けもほぼマスターしていて、彼の元からの頭の良さが伺えた。
「夕食も僕が用意したので、楽しみにして下さい」
あきとは笑顔で答えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる