悪魔の家

光子

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 誇らしげに答えるはな。
 あきとは、ボランティア活動でこの場所に来たと言っていたが、はなは、彼氏であるあきとと離れたくなくて、一緒に着いて来たのだ。
「くっそ迷惑ーー」
「本当にあきと君が好きなんだね!」
 濱田はまだ文句を言おうとしたが、その言葉を、けいじの大きめの声がかき消した。
「勿論♡たぁ君ははなの物だもの♡はなには、たぁ君こそ、相応しいの♡他の女には、絶対に渡さない」
 何の収穫も無かったはなだが、足が痛いとゆう事は、少しは歩いていたのだろう。
 だが、それは探索をする為ではなく、ただ、あきとの傍にくっついて歩いていただけ。
 彼女にとって、生きるための山菜や木の葉を集めるよりも、あきとの傍にいて、あきとの気を引く事が優先されるのだろう。
 当のあきとを見ると、まだ熱心に山菜や木の枝、木の実等を集めていた。
「ところで、何でたぁ君なんだい?」
 彼の名前は面堂 あきと。
 はなの呼ぶ、たぁ君とは何も結びつかない。
「……ふふ」
 はなは少し含みのある笑いをした後、すぐに答えた。
「ダーリンだから♡」
「ん?」
 意味が分からず、聞き直す。
「ダーリンだから、だぁ君、そこから、たぁ君になったの」
「ーーー成程!」
「無理すんなよおっさん。意味わかんねぇよ、この女」
 濱田は呆れながらそう言い捨てた。

「集めました!」
「僕もです」
 そこに、残りの杉とあきとも合流した。
「随分いっぱい集めてくれたんだね」
 けいじは、感心して声を上げた。
 二人の手元には沢山の山菜や、きのこもある。
「あきとさんが凄くて、色々きのこが生えてそうな場所とか教えてくれて!」
「いえいえ。田村さんに教えて頂いた通りの場所を探しただけです」
 杉とあきとは、はなが離れた後にコミニュケーションをとっていたようで、2人で笑顔で会話を交わした。
「す、すぎちゃん、こっち来て」
 いっけん、初見の2人が緊張が解れ、仲良く話せたのはとても良い事に見えるが、先程までのはなの会話を聞いていた藤は、慌てて杉を自分の元に呼び寄せた。
 はなの、あきとに対する愛が、とても重く、怖いと思ったからだ。
 案の定、はなは険しい表情で杉を睨みつけていた。

「ーーたぁ君、はな寂しかったぁ」
「あ、ごめんね。でも、はな足痛いって言ってたし、休んで貰ってた方が良いかと思って」
 猫なで声であきとに擦り寄るはな。
 そんなはなの頭を、あきとは優しく撫でた。
「まじでめんどくせぇ女だな」
 濱田は嫌悪感を隠そうともしなかった。
「え?え?何?私何かしちゃった?」
 1人、意味の分からない杉はあたふたしながら、友達の藤に、事の次第を尋ねた。


「あんまりこの場所から離れない方が良いんだろうけどーー」
 用意した軽い食事を食べながら、けいじは口を開いた。
「水の確保はしないとまずいから、出来たら川とか、湧き水とか、そういった場所まで移動したいな」
 今は、けいじが持参したペットボトルの水しか手元に無い。
 上の様子は分からないが、今の所、助けにくる様子は無く、何日、ここで、生活しなければならないのかも不透明。
「川があれば確かに安心ですね」
 けいじの提案に、あきともすぐに賛同した。
 あきとが賛同すれば、はなも異論はなく、女子高生達は、けいじの意見に反論する気がそもそも無い。残すは1人。
 全員が、濱田の方を見た。
「ーーんだよ」
「いいかな?」
「こんなとこにずっといてもしゃーねぇだろ」
  ぶっきらぼうな言い方だが、彼も賛同し、女子高生達は言い争うにならなかった事にホッと胸を撫で下ろした。
「じゃあゆっくりと移動しよう。無理しないで、日が暮れかけたら、その場で昨日みたいに野宿って事で!」
 そこからは、全員がそれぞれの荷物を持ち、余った木や木の実を持って、慎重に歩き出した。
 けいじが先頭。
 その後ろを濱田が歩き、あきとは自然と、はなと最後尾を担当した。
 けいじとあきとに挟まれるように、女子高生達が歩く。
「はぁはぁ」
「…大丈夫?」
 あかりは生理痛と言っていた藤に、声をかけた。
 藤の顔色は相変わらず悪い。
「ん?大丈夫!私運動部だから、体力はあるんだ」
 藤はニッコリと笑って答えた。
「あかりちゃんこそ大丈夫?体調悪かったよね?」
 今度は逆に、藤があかりの体調を気にかけた。
「大丈夫。私も、体力には自信あるからーーそれより」
 あかりは自分達よりも遅れて歩く杉に目を向けた。
「すぎちゃん!大丈夫?」
「う、うん。駄目だね、私、体力無くて」
 藤は慌てて杉の元に駆け寄った。
「すぎちゃん文化部だもんね」
「へへ」
 ぬかるんで歩きにくい土、無造作に生える草木。
 凸凹な道に、急な上りや下り。
 体力を削るには充分か道のりだった。
「おい!もーちょっと早く歩けねぇのか!」
「「!」」
 濱田の怒鳴り声に、藤と杉は2人して体をビクッ!と震わせた。
「もー無理ー!はな限界!歩けないー!」
 ただ、濱田の怒りの矛先は杉では無く、その後ろのはなだった。
 彼女のピンヒールは、この山道で歩くには致命傷だ。足を止め、その場にしゃがみこんでいる。
「はな、僕の背中に乗る?」
「え、いーの?ありがとぉあきと♡」
 優しいあきとの言葉に、はなは甘え、すぐにあきとの背中におんぶした。



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