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しおりを挟む(私……生きてるんだ)
体の痛みが、皮肉にも、生の実感を与えてくれる。
痛みはあるが、出血も無い。
手、足、お腹……自然と、自分の身体が無事であるかを確認した。
破壊されたバスの車内。
壊れた窓からは、大きな木の葉が、突き刺さっていて、無事である事が奇跡に感じた。
バスは、ガードレールをぶち破り、崖の下あった樹海にダイブしたようだった。
「いってぇ……!このクソ野郎ー!」
「ふじちゃん!大丈夫?」
「すぎちゃんこそ……!」
辺りを見渡せば、自分以外のバスの乗客も、出血している者もいたが、全員が無事だった。
樹海、多い茂った樹木の葉が奇跡的にクッションになったのが良かったのか。
女子高生2人は、手を取り合いながら、お互いの無事を確認し、男は、起き上がると、運転手の方を見ーーーー
「ーーくっそーー!!」
ガンっっ!!!
ーーーイラつきを隠さす、壊れた椅子の破片を蹴りつけた。
頭を出血している男性も、頭を抑えながら運転席覗き、息を飲むと顔を背け、乗客に話しかけた。
「皆さん、ひとまずバスから出ましょう」
男性の声掛けで、不安定でボロボロになったバスの車内から、ゆっくりと出ていく。
「足元に気をつけて」
「……はい」
運転席の前に立ち、優しく声をかけてくれる男性。
男性は、わざと、運転手の様子を、見せないように、立っていた。
でも、フロントガラスに飛び散る、赤い血飛沫。
嫌でも香る、血の匂い。
運転手がどうなったのか、見なくても理解出来る。
(死んだんだ)
現実に起きた、悲惨な状況に、目眩がする。
バスから降り、暗くなりつつある、森の中で思う。
辺り一面の木々。
薄暗い闇。
肌に感じる寒さ。
この森は、地元では知らない人などいない、有名な場所。
「やだ……!<殺される!!>誰か!誰か助けに来てよ!」
女子高生達は泣き叫んだ。
樹海
1度足を踏み入れたが最後、決して出る事が出来ない樹海の森。
広大な広い面積、永遠に続く、同じような景色。登山者が幾度となく足を踏み入れたが、誰も戻って来る事は無い。
地元では有名な話で、そんな森を、地元の人々は(悪魔の森)と呼び、誰も怖がり、森に入ろうとはしない。
そんな森を避け、山沿いに大きな町に続く道路が完成した時、村の人達は歓喜した。
小さな町。
バスも1日に1本しか走らないが、それでも、大切な交通手段として喜ばれた。
そして、その1日1本しか走らないバスが、あかり達が乗っていたバス。
「あんのクソ野郎っ!死ぬならてめぇ1人でさっさと死ねや!」
男が激高するのも無理はない。
あの時、バスの運転手は明らかに自らの意思でアクセルを踏み、ガードレールを破り、崖から、私達を巻き込んで飛び込んだ。
(死のうとしてた……私達を、道連れにしようとしたんだ……)
それがどうしてなのか。なんて、私達には理解出来ない。
本人はもう、死んでしまったんだから。
分かるのはーーー
「たぁ君、やだぁ!怖い!はな、こんな所で死んじゃうの?!やだよぉ!!」
カップルの彼女は泣きながら彼氏に抱きついた。
ーーー悲惨な行方だけ。
ただ、思っていた悲惨な行方は、想像と違う道に進む事となる。
それは、想像していたよりも
もっと悲惨で、残酷で、
恐ろしい物語に進む事になるーーーー
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