33 / 40
33話 元気になって良かったです
しおりを挟む「……サセックス様、貴方の爵位は剥奪します。財産も全て没収し、彼女達の治療費に充てます。ご自身や娘の命が惜しいのでしたら、自分からグレゴリー国を去るのが賢明だと思いますよ」
貴方達を恨んでいる相手は、沢山いる。それに、こちらにはルイ殿下毒殺未遂の証拠もある……捏造だけど。これを利用すれば、貴方達なんてすぐに消せるんだから。
「はい! はい! もう何も抵抗しません! ですから助けて下さい!」
完全に降参したのを確認し終えた後、今度はヒュアナ嬢の様子を確認するために、足を進めた。髪を切られ、体を殴られ、火傷で苦しんではいるが、辛うじて息はしているようだった。
「復讐はもう結構ですか?」
「……はい、娘の仇は取りました。本当にありがとうございます、リンカ様」
「サセックス様は国外追放の処置を取りますが、よろしいですか?」
ヒュアナに関していうなら、牢獄にでもぶち込んでもっと酷い目に合わせてやりたい所だが、彼女はその分の酷い火傷や、怪我を負った。財産も全て取り上げられるのだから、治療も受けられず、一生、その傷に苦しめられることになるだろう。
「はい、リンカ様に全てお任せします。本来、私達がこうして復讐なんて出来るはずがなかったところを、リンカ様に手を貸して頂き復讐が出来たこと、心から感謝しています」
「そうですか」
本当は――――このままもっと苦しめて、消してしまうつもりだった――――
その為に証拠を捏造したし、これを利用してレイリン王妃まで陥れようと考えていた、考えていたのに。
「私の気分が変わって良かったですね、サセックス様。おかげで、命拾いしましたよ?」
「ひぃ!」
私が笑顔でそう告げると、サセックス様は表情を真っ青にして、小さく悲鳴を上げた。
***
「リンカ、迷惑かけてごめんね」
「いえ、お元気になられて良かったです。それよりも、まだ病み上がりなのですから、今はゆっくりと体を休めて下さい」
王城に戻るや否や、私はルイ殿下の私室に顔を出した。
部下からの報告通り、ベッドの上にはかろうじているが、起き上がって書類関係に目を通したりと、無茶をされていた。
「大丈夫だよ、ちょっと目を通すだけだから」
「お止め下さい」
問答無用で書類を取り上げ、制止を言い渡すと、ルイ殿下は観念したように微笑んだ。
「リンカには敵わないな」
ついルイ殿下に甘くなってしまっていた自分を反省しているんです。ルイ殿下が無茶をする性格なのは重々承知しているにも関わらず、彼の好きなようにさせてしまっていた。本当は、無理矢理にでも休ませなくてはならなかったんです。
「今後、きちんと休息を取らず、部屋で隠れて勉強などされるのでしたら、監視を置きます」
「うん、今度から絶対休むから止めて欲しいかな」
「そうですか」
スミス様にでも監視を頼もうかと思いましたけど、それなら今の所は大丈夫でしょうか?
「僕が倒れている間、何か変わったことは無かった?」
「いいえ、何もありません」
ちょっと王妃派のサセックス様が私の邪魔をされたので、始末――いえ、ご退場願い出て、快く了承して下さったくらいです。多少、乱暴な真似は働きましたが、因果応報です。命があるだけマシだと思って頂きましょう。
「……」
つくづく思う、私は、いざとなったらどんな汚い手も使う人間なのだと。
あれだけ傷付いたサセックス父娘を見ても、私は何も思わなかった。寧ろ、今まで自分達がしてきたことへの報いを受けるべきで、やり返されても当然だと思っていた。このまま消えても仕方が無い人間だと、思った。
だから、罪を捏造してでも、始末しようと思った――なのに、私はしなかった。
(……どうして、急に駄目なんて思ったんだろう……)
「リンカ? どうかした?」
「いいえ、何もありません。ルイ殿下が元気になって良かったなと、そう思っただけです」
「リ、リンカずるいよ! 急にそんな可愛いこと言うなんて!」
「? 事実ですが」
サセックス様を見逃した理由を考えてはみたが、自分では全く分からなかった。
1,654
お気に入りに追加
3,391
あなたにおすすめの小説
(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?
青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。
エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・
エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・
※異世界、ゆるふわ設定。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。
夢草 蝶
恋愛
子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。
しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。
心がすり減っていくエレインは、ある日思った。
──もう、いいのではないでしょうか。
とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。
夢草 蝶
恋愛
シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。
どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。
すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──
本編とおまけの二話構成の予定です。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる