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14話 波乱のお茶会④
しおりを挟むアシュレイ殿下が王城で偉そうにしているのは、第一王妃であるレイリン王妃の影響も大きい。ってか、間違いなくそれ。レイリン王妃の生家であるブライアン公爵家は、社交界で大きな影響力を持つ名門貴族の一つ。まぁうちほどじゃないし、最近はその影響力も薄れつつあった。
だからこそブライアン公爵は、失いつつある影響力を取り戻すためにも、ほぼ無理矢理、妹であるレイリン様を王家に嫁がせた。
あの時阻止出来ていれば、こんな面倒事は産まれなかったんでしょうけど、当時宰相だったお父様の力及ばず、結局はレイリン王妃を迎え入れる結果になってしまった。その時のことは、未だに悔いても悔やみきれないと、いつもお父様は嘆いておられましたね。お父様はそれを教訓に、私には多少の汚い事をしてでも、目的達成のためなら構わないと常々教えて下さいました。
「……アシュレイ殿下は、サラ王妃の身分を見下しておられるんですか?」
「当然だろう!例え父様の寵愛を受けていようと関係ない!公爵令嬢だった母様には敵わないからな!」
「では、そこの女も王妃に相応しくありませんね!」
「――は?」
「子爵令嬢ごときの女、王妃に全く相応しくありません!例え王子の寵愛を受けていようと関係ありませんよね!やっぱり家の爵位は大切ですから!アシュレイ殿下の仰る通りです!その女の子供は、身分の低い卑しい子供として、迫害して育てていきましょう。何て言ったって、サラ王妃よりも爵位の低い子爵令嬢の子供ですものね」
まぁ子供は産まれた瞬間に取り上げますが。
「いや、待て――」
「ご安心ください、責任を持って育てて差し上げます」
王族に産まれたことを後悔するくらいには。
「な!何なのよ!私は、アシュレイ殿下と愛し合っているんです!アシュレイ殿下が私以外に女を作らなければいいのでしょう!?ね、アシュレイ殿下、私以外に王妃をお迎えになんてならないですよね?」
「も、勿論だ!俺様は愛するのは、クイナだけだ!」
現状、常識ある貴族令嬢はアシュレイ殿下を避けておられますからね。
お茶会に参加しなくなったのも、自分が相手にご令嬢達に相手にされていないからでしょう?皆様のお目当てはルイ殿下ですものね。自分よりもルイ殿下がチヤホヤされるのが嫌でお茶会に参加しなくなって、外に女を求めて遊ぶようになったんでしょうが。
「アシュレイ殿下に捨てられたからって、ひがんで私達を虐めるのは止めて下さい!それでもこの国の宰相なんですか!?宰相なら、王太子に尽くすのが普通でしょう!?」
「はて?何のことでしょう。仰ってる意味が理解出来ません」
滅びゆく結末しか見えない王太子に誰が仕えるか、ばーか。
「そんなことよりも、貴女はご家族の行く末を案じた方がよろしいのではないですか?先程お伝えしましたよね?ロスナイ子爵家の世襲の爵位継承権を剥奪すると。貴女の所為で、ロスナイ子爵の爵位は失われます。これから先、ロスナイ子爵家がどうなっていくか……とても心配ですね」
爵位剥奪が決まっている貴族と仲良くお付き合いをしていく貴族など、どこにもいない。
これから廃れていく未来しか見えないご実家も見るのは、大変お辛いでしょうね。心中お察しします。ですが、これも自業自得なので、ちゃんと受け止めて下さいね。
喧嘩を売る相手は見極めなくちゃ。
「……っ!」
顔色が真っ青ですね、お可哀想に。頼みの綱のアシュレイ殿下がいかに喚こうが、私が手を抜くことはありませんよ。ロスナイ子爵家はもうお終いです。
「お前……ただで済むと思うなよ!」
「負け犬の遠吠えにしては、ありきたりでつまらないですね」
「誰が負け犬だ!ふざけんじゃねーぞ!」
「言っておきますが、アシュレイ殿下にもきちんと慰謝料を支払って頂きますよ。勿論私財で。その女の分もお支払いするなら結構な金額になると思うので覚悟していて下さいね」
公務もきちんとせず、毎日遊び歩いているアシュレイ殿下に大した金額があるとは思いませんが、相場以上の慰謝料を必ず請求します。それですっからかんになろうが関係ありません。
無実の罪を着せられ、絞首刑にならなかっただけでも感謝して下さい。
「そこの馬鹿二人を部屋に連れ戻して下さい。こんな騒ぎを起こした罰として、一年……一か月は、部屋から出さないで下さい」
「……リンカ、今一年って言いかけたよね」
聞こえました?一年は本心です。本当は未来永劫幽閉したいのですが、レイリン王妃が五月蠅いからな……一か月でもグチグチ文句言ってきそう。
「おい止めろ!俺様を誰だと思ってる!?俺様にこんな真似をしてただで済むと思うなよ!俺様が国王になったら、お前等全員クビにしてやる!」
「やだ!乱暴しないでよ!」
王城の従者や執事に部屋に連れ戻されるアシュレイ殿下とクイナ嬢。遠くからでもグチグチ五月蠅い喚き声が聞こえて、とても耳障りです。
「……兄様が度々ごめんね……リンカ」
「ルイ殿下の所為ではありません。ですが、今回ばかりは本当に殺意が湧きました」
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